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耐震か免震かそれとも制震か

外観目視だけでもじっくり見ればいろんなことが伺えるもんで、楽しい&悩ましい。ざっくり調査をしてみたけど、ここから先は解体工事を進めながら考えるとする。
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屋根が抜け家の中に苔が自生するMooshaus。廃墟化し始めてる上にそもそもの構造的な問題も多々。

でも、ホントに問題かどうかは分からない。現代の考え方では「これは良くない」と勝手に問題視してるだけで、数十年数百年後には「これが最もよろしい」と言われている可能性だってある。

昭和33年(1958)に新築着工したMooshaus。建築基準法ができて10年足らず。ずっと伝統工法で家を建てて来た職人さん達が在来工法に移行する気持ちはどうだったのか?

工法名は後から分類する為に付けられた気がする。実際にはそんなにスッキリと分かれるものではなく、探り探り移行してきたのではと想像する。

Mooshausは全くもってその狭間の時代に建てられた建築物。外壁ラインには布基礎と土台を設置し、内部では石場建てのように柱勝ちになってる。
布基礎風に見えるコンクリートは底盤があるのか、鉄筋が入っているのか、今のところ不明。建築基準法上で鉄筋のことを謳い始めたのは新耐震(1981)頃で、明確な寸法基準の法整備は阪神淡路後の2000年。地震被害ごとの不具合が検証され改正されてきたのは、永い木造建築の歴史の中で言うとほんの最近のこと。

通り土間界隈はコンクリートを石場建ての石のように扱ってる部分がある。お寺の礎石のようなテーパーを取ってるように見えるところもあってなんか可愛い。
コンクリートを使うのがかっこよかったのかな?いずれにしてもジャンカだらけの強度の弱そうなコンクリート。

わずかな隙間から床下を覗くと、内部は間仕切りラインにも大引ラインにも天然の束石(何箇所かは赤レンガも見える)が使われてて土台も根絡みもない。
暗くて見えないけど、田の字間仕切りの中央柱もおそらく石場建て風に柱勝ちで、集中荷重的にピンスポットで地盤に立ってるんではないかと予想できる。沈んでないかな?そこ。

今確認できる限りでは布基礎の南北に一箇所ずつ小さな換気口があって、東西にはない。通り土間には布基礎がないけど、一応室内空間だし、なんやかんやものがあって、風通しが良いとは言えない。

家の裏には石垣と擁壁が迫り、増築による水回りもあるし、落ち葉もふんだんに積もってたから、さぞ床下は湿気でえらいことになってるのでは?と思ってる。けど、フラッシュをたいて写る写真では乾いてそうな感じもする。気のせい?

そして私のもっぱら気になっていることは、この建物をどの方向で補強するべきか。
完全な伝統工法なら免震の方向で。
完全な在来工法なら耐震の方向で。
ではミックスバージョンの場合は?
50年後の人に教えてもらいたい。

気持ち的には制震的方向にしたいけど、差鴨居も根絡みもない。
かといって接合部に金物は使われてなくて、貫&土壁&木組み。
そもそも布基礎に土台は緊結されているのか?
されてたとしても基礎に鉄筋が入ってない場合は抜ける?又は基礎がつぶれる?
当時はHD金物なんてないけど、柱脚に引き抜きがかかるほどの体力を壁は持っていないから、逆にこれまで潰れずに済んだのかも。でも劣化も進んでる基礎が今後も大丈夫とは言い切れない。
かといって、石垣際に建ってる外壁の足元を掘り返して増し打ち基礎を作るのも怖い。
連続繊維シート補強工法も検討してみたいけど、補強に使う「樹脂」という素材に抵抗感がある。
悩まし過ぎる。

しかし、実際にこれまでこの建物を支えてきたのは現存する軸組と土壁。
まずは劣化状況をしっかり観察して、その要因を探ってみる。
どんな工夫をしたら少なくとも当初の強さになるか、再び傷みにくいかを考えてみる。

いずれにしてもこれまで66年間の風雨や災害にも耐えてきた。伊勢湾台風にも、阪神淡路材震災にも。そのポテンシャルを信じて、この家の本当の寿命の日(っていつかな?)まで持つように、この家らしく可能な修繕をしてみたいと思う。



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