5分でわかるかもしれない西洋美術Ⅴ

西洋美術に興味はあるけど長い文章は読みたくない人向け。

モザイク

 モザイクは絵画の技法の1つです。歴史を遡ると紀元前2600年頃のシュメールの古代都市、ウルから出土した「ウルのスタンダード」が現存する世界最古のモザイク画です。スタンダード(standard)とは旗、特に軍旗のことを指します。ラピスラズリや石灰岩、貝殻などを使ってウルの王が敵を倒す場面などが描かれています。ローマ帝国においては第五代皇帝のネロが作った大宮殿、「ドムス・アウレア」が有名です。
 そしてキリスト教が広く知れ渡った300年代には、キリスト教徒が建設した教会堂に、モザイクを使った装飾が引き継がれていきました。これは東ローマ帝国の時代に大成し、首都であるコンスタンティノープルをはじめとした各都市で教会堂の壁や床、天井を彩っています。

ウルのスタンダード(大英博物館蔵)
歩兵を連れたウルの王が敵兵を打ち倒して進軍する様を描いている、「戦争の場面」。

フレスコ

 フレスコも絵画技法の1つです。壁に漆喰を塗り、それが生乾きのうちに水や石灰水で溶いた顔料を使って絵を描きます。生乾き、つまり新鮮(フレスコ)というわけです。フレスコの綴りはFresco。Freshと語源は同じです。
 漆喰には水酸化カルシウム(Ca(OH)2)が含まれています。壁に塗られた水酸化カルシウムは水分(H2O)が蒸発する過程で二酸化炭素(CO2)を吸収し、CaCO3、つまり炭酸カルシウムになります。式で書くと、
Ca(OH)2 +CO2 → CaCO3 +H2Oです。炭酸カルシウムは水に溶けないので、フレスコ画は保存に適した技法です。逆に言えば、描き直すには漆喰をすべて削り落とす必要があるわけですが。
 著名なフレスコ画は1500年頃の「アテナイの学堂」や「最後の審判」です。ビザンティン文化では、イコンの回で述べたように写実的な表現は許されていませんでしたので、緻密な表現が可能とは言え、描けるものに限度がありました。そういった制約から解き放たれたのがルネサンス期であり、フレスコ画が最も良く描かれた時代となります。

モザイクやフレスコがどういったものか、簡単に理解できれば問題ないです。次はゲルマン人がルーツの初期中世美術です。何かあればTwitterまで。

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