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スバル・アウトバック 400km試乗記

Introduction

1992年に森高千里がリリースした曲、「私がオバさんになっても」という曲がありまして。歌詞の内容を大雑把に要約すると「女性として年齢を重ねても愛されたい、魅力的な女性でありたい」という歌なのですが、リリースから30年以上が経った今でも森高千里はファンに支えられているし、江口洋介と別れていないし、この曲の歌詞が色褪せているなどとは全く思わず、「あの頃”オバさん”と言っていた側の人間がオバさんになった今でも素敵な存在だよね」っていう趣旨のpostを見かけて、随分といい事を言うファンが居るもんだなぁ…と感心したのがつい数週間前。

今回、田舎に帰省するにあたってレンタカーを車種おまかせで借りたら出てきたのがスバル・レガシィアウトバック(BT5)。ご存じの方も多いでしょうが、そのルーツが「私がオバさんになっても」が世に出た2年後の1994年に発売されたスバル・レガシィグランドワゴンで、奇しくも今年で30周年を迎えます。販売台数だけで言えば全盛期から程遠く、あの頃の盛り上がりは見る影もないのですが、果たしてクルマそのものの魅力まで色褪せてしまったのでしょうか?今回は約400km走らせた所感をお送りします。

街中・高速道路・郊外を走るルート。シチュエーションとしては十分でしょう。

Section1:札幌市街

レンタカーの営業所で鍵を受け取り、駐車場を出て石狩街道を走らせて最初に思った事、「で、でかい・・・」。あまりにも横幅が広く、コンビニの駐車場にスペース通りに停めることが難しい場面もありました。ただしながら、車体側面・前面・背面にカメラが配備されており非常に気を遣うような状況でも(物理的制約が許せば)どうにかすることが可能。

やっぱデカい。

Cピラー横のウィンドウは以前と比べると遥かに小さくなったものの、斜め後ろから接近する車両はセンサーが警告してくれる上、その他のウィンドウから見える視界は十分満足できるレベルでした。高速道路のICに向かうべく札幌ドームの横から羊ヶ丘通に入ると、先の方で交通事故が起きていたらしくエラい渋滞に。「そういえば、先代モデル(BS9)にはAVHボタンがシフトノブ付近にあったよな」と思い出しシフトノブを見ると、サイドモニター起動ボタンと電動パーキングブレーキ以外一切何も無いではありませんか。「ああ、いつぞやレヴォーグ(VN5)が出たときにAVHがナビのディスプレイ上から複雑な手順で呼び出さないといけなくて不評買ってたっけ」と記憶の片隅から解決策を思い出し、とても大きいディスプレイに目をやるとちゃんと「AVH」と書かれたアイコンが鎮座しているではありませんか。不評すぎてちゃんと改善されたんですね、良かった。ちなみに、改良前に販売されたモデルでもアップデート対応できるケースもあるとの事。こういうアップデートは積極的に進めてほしい。

🏠️アイコンの左側2つ目がAVHボタン

Section2:高速道路

道央自動車道・北広島ICからひとまず苫小牧東ICへ。EyeSightのACCを設定し、ステアリングに手を添えながらぐうたらしていたのですが、ステアリングアシストの介入が非常に自然になってました。BS9では概ね右寄りだったり、コーナーに進入する直前になって強いアシストが入っていたのですが、それがほぼ皆無に。また、耳に入ってくるノイズもAピラー前後の風切音のみで、エンジン・ミッションといったフロアからのノイズは全然感じませんでした。BPどころ多分BS9よりも静か。とても感動した。

苫小牧東ICから分岐を進み、日高道へ。この道は路面の凹凸が酷く、覚悟して走っていた・・・のですが、身体に伝わってくるのは「あ、今段差踏んだかもしれん」と思う程度の僅かな振動だけ。BS9では深いストロークでショックを吸収した後、ユサっとボディが揺れていた挙動を示していたのと大違い。追い越し車線での追い越しもパワーは十分。S#・S・Iと3つあるパワーモードのうち、Iモードで巡航していたせいかアクセルを開いたその瞬間こそCVTが回転数を上げる挙動を感じるものの、その時間は極僅かで、車はスルリと速度を上げてくれるのでした。一方で、道央道で優等生だったステアリングアシストは日高道では不良と化し、右端のガードレールに吸い寄せられるような挙動をずっと示していました。日高厚賀ICを降りるまでのひと時、その点を除けば非常に快適な時間でした。

Section3:一般道(郊外)

国道235号線に入り、登坂車線と幾つかのカーブを含む道へ。先程の追越車線と違って、登坂車線ではエンジンの課題を感じることに。状況としては、登坂車線(つまり坂)に差し掛かったタイミングでアクセル開度を開いてもエンジンのNA領域で加速を始めるので全然トルクが乗らず、CVTがエンジン回転数を上げ、過給が始まった後にトルクが湧いてきます。2.5L NAエンジンのBS9でこの道を走らせた時にトルク不足を感じることは無かったので、この挙動の原因はNA領域のトルク不足(≒排気量の少なさ)に起因するもの。解決策は排気量を上げるほかありません。

実際、自分がワゴンの2.0GTからアウトバック2.5XTに箱替えを決意した理由こそがまさにこの道・この状況で、2Lエンジンで坂に入りアクセル開度を大きくすると、5ATのキックダウンが非常に不愉快なタイミングで入り、急加速をしたものですが、2.5XTではそもそもNA領域でのトルクが多い分キックダウンが入らず、入ったとしても2Lターボ車ほど急激にトルクが湧かないので穏やかに巡航できるのでした。やはり排気量は正義。

一方で、曲がりくねった道を進んでも相変わらずロールは控えめで、ちょっと飛ばしても大丈夫。そして国道235号線は海沿いの道故に強い風が吹くこともあるのですが、ガラス越しに風になびく旗を見なければ、風が吹いていることなど分からなかったでしょう。

内装

本当は結構細かく文章を書いていたのですが、一度書いた下書きが蒸発したのでこの章は簡潔に書きます。

室内灯が全LED化しました。今更かよと思いつつもやっぱり嬉しい。また、ドアポケットにもLED照明が追加されており、夜間の使い勝手がとても良くなってる。一方で、シフトノブ前方の収納スペースが足りない。XV(GT)ではちゃんと造ってあるのだからどうにかしてほしかった。あと、ナビパネルとシフトパネルがピアノブラックなのにウィンドウスイッチパネルは艶消しブラックである点に違和感が。意図的につや消しにしてるのか、インプレッサと共用するためにつや消しなのかは分かりかねるものの、ここは選べるようにしてほしい。

こう見ると、「どうにかならんかったのか?」と思いませんか。

車中泊勢へ。荷室スペースは成人が1人(頑張れば2人)寝ることのできるスペースは健在で、ここも相変わらず身長170cm以上の人は工夫が必要。身体を90度起き上げようとすると天井に頭をぶつける点も変わらず。トノカバー収納スペースは今回もちゃんとフロア下にあります。要するにラゲッジの使い勝手は一切変わってません。でも、それがいい。

まとめ

30年の間に随分とずんぐりむっくりとなったものの、アウトバックが好きなユーザーに愛され、色褪せるどころか現代装備でより一層魅力的になっている事をこれでもかと言う程理解できた400kmでした。不満をいつくか列挙したものの、そんなものは些細な問題でしかなく、乗ればしっかりとGrand Touring Specialityを感じることができます。

しかしその分価格は先代から随分と上昇し、自分がアウトバックを新車で買える頃にはきっと頭が白髪だらけになる頃なんだろうな、と思ったが束の間。悲しいかな、森高千里と違ってアウトバックは末永く愛される、というわけにはいかないようです。


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