金曜ロードショーでの至上のホラー
自分の記憶にある限りテレビで見た最も怖い、ホラーと感じたものは何かと問われたら、2001年3月23日の金曜ロードショーと答える。
別にホラーとかスプラッター映画をやっていたわけではない。やっていたのは『ベイブ』だ。アニマトロニクスを使った牧場の仔豚が牧羊犬ならぬ牧羊豚になる話。『マッドマックス』シリーズのジョージ・ミラー製作・脚本とは言え、バイオレンス要素もないほのぼのファミリー向け映画だし、当時自分も「仔豚はかわいいな~」とか思いながら観ていたはず。
問題は映画が終わった後だ。特報でスタジオジブリ最新作の『千と千尋の神隠し』の本予告、(恐らく)初報が流れた。しかも内容がトンネルを抜けて不思議の街に迷い込んでしまって両親が飯食って豚になるシーンまでしか公開されず、話の全容もわからないやつだ。
その特報の動画は公式的にネットには上がっていないみたいだが、Wikipediaを見る限り3~5月まではこの予告が使われて、それ以降はカオナシとかが登場するバージョンが使われたらしい。
そりゃ怖いよ。『千と千尋』もファミリー向けとは言え、『ベイブ』見せた後になんでそんな酷いことするの、と子供ながら思った。作中の千尋と同じ顔してビビッて絶句していたと思う。
普通にホラー映画観るよりも怖い。だってホラーは恐怖を感じる前提で観るから心構えが出来ている。そんなものなしに仔豚が食べられちゃうかも、とほのぼのストーリーやった後になんの前触れもなく異界に引きずり込まれて両親が不気味な半人半豚に変わるのを見せつけられたので完全に虚を突かれて頭が追い付かなかった。多分タイミング的に偶然そういう構成になってしまったんだろうけど、それにしたって日テレのプロデューサーが狙ってやったんじゃないかと思うくらい出来過ぎている。そして狙ってやったのだとしたら悪意がある。ホラーとしては出来ているが広報としてはそれでいいのか?
これだけ私の心に残っている映像なのに、当時の金曜ロードショーの視聴率考えたら相当数の人が目にしたはずなのに、この一連の流れがあったことを言及しているのは多分Twitterとかだと私しかいない。今そんなような構成の放送をやったらSNSでバズり兼炎上してもおかしくない。
そうなってくると自分の記憶はどこまで正確なのかと思う部分がある。20年以上前だし。でもアーカイブでは確かに2001年3月23日に『ベイブ』は放送されているし、Wikipediaでは『千と千尋』の本予告は3月から始まっている。状況証拠はある。とりあえず自分の記憶にはあることを記しておく。少なくとも都市伝説で言われる『千と千尋』や『ラピュタ』の眉唾な幻のエンディングより確かだ。
あれを超える虚構のホラーに今後会えるだろうか。