パソコン初心者の妻にMacBookをプレゼントした。
このエッセイについて
僕の妻はもともと接客業で働いていたのですが、色々あって事務職希望で転職活動をすることになりました。しかしながら事務職は未経験ということで、好みに合うところを探そうとするとなかなか選考に通らず、苦戦しているようでした。
そこで、僕の会社で一旦経験を積んで、そこから転職するのはどうか?という提案をしてみました。
今年の春に創業してまだ半年しか経っていないたった2人会社ですが、そこそこ仕事も増えてきて、各種バックオフィスの業務を誰かにお願いしたいなと思っていたタイミングだったのです。
妻は学生のときにレポート書くのにパソコンを使って以来全く触れる機会がなかったくらいのパソコンの初心者です。そのため、彼女自身はITを生業とする当社の事務職が務まるのか、という心配をしていたのですが、双方にメリットがあることを説明し、納得して当社で働いてもらうことになりました。
さしあたってパソコンが必要になったため、僕がもともと使っていた2020年モデルのMacBookAirを使ってもらうことにしました。
このエッセイでは、PC初心者の妻に MacBookを渡して、事務職としての第一歩を踏み出してもらうための準備をどのように実施したのか、という経験談を、ハード面とソフト面の両方の側面からできるだけ詳細に書いてみたいと思います。
未経験からPCを使った仕事を始めてみたい!という方がいたら、実際にどのようなツールを使って、どのようにセットアップして、どのような作業をやっているのかというイメージを付けるのに役立てていただけるかもしれません。
目標を立てる
PCを使用する事務職といっても仕事内容は多岐に渡ります。まずは仕事内容についてのイメージを持ってもらうことと、PCを使った業務の基本的なところを見に付けてもらうことが最優先でした。そのため、まずはこれができるようになろう!という目標を立てました。
Google Driveを使ったフォルダ・ファイルの整理ができる。
大量のドキュメントをネットワークで共有し、かつ整理整頓するということは、普段からそういう業務にどっぷり浸かっていない人にとっては相当ハードルが高いです。どのファイルをどこに置くべきなのか、どういうフォルダ構成にするときれいになるのか、といった共有フォルダを使う上での基礎を、Google Driveを使って覚えてもらうことにしました。
Slackを使った高速なコミュニケーションに慣れる。
当社のコミュニケーション基盤はSlackですが、これも使ったことがない人にとっては非常にハードルが高い場合があります。
Slackに慣れていない人にとって、メールのほうが心理的安全性を感じる傾向があるようです。メールであればじっくりと文章を推敲して、自分のタイミングで返信ができます。一方でSlackは、まず自分がオンラインなのかどうか、そしてキーボードを叩いているかどうかがリアルタイムに相手にわかります。そしてスレッドを小分けにして、簡潔かつ高速なレスポンスが求められます。これはある程度練習を積まないとできるようにならないし、相手を待たせてしまうんじゃないか?というストレスを感じてしまいます。
まずは身内しかいない当社にて、このコミュニケーション方式に慣れてもらうことにしました。
請求書・領収書の処理ができるようになる。
会計ソフトfreeeを使用して、日々上がってくる領収書の仕分けや、請求書を処理して入金予約、といった経理の基礎的なところを覚えてもらうことにしました。
やることリストを作る
作業環境を整えるためのやることリストを作りました。
1. Google Workspaceが使えるようにする。
当社はIT基盤に Google Workspaceを使っており、メールはGmail、ファイル共有はGoogle Driveとなります。新しく作った会社用のメールアドレスでサインインして、これらのサービスを使えるようにセットアップしてもらいます。
2. Apple ID の取得する。
パスワードマネージャーを使ったり、AppStoreで有料アプリを買うためには AppleIDが必須です。1.で発行した Gmailを使って、会社用のAppleIDを作成してもらいます。
3. Slack を導入する。
当社のコミュニケーション基盤はSlackです。Slackアカウントを作って当社のワークスペースに参加し、基本的な使い方を覚えてもらいます。
4. Microsoft365 (旧Office365) を導入する。
公共機関の書類はエクセルやワードで作られていることがほとんどで、Appleの Keynote, Numbersでは対応できないことのほうが多いです。そのため、基本的に Microsoft365は必須となります。
5. 細かい設定
IME設定やトラックパッド設定など、やっておかないと作業効率がガクッと落ちてしまう細かな設定がいくつかあります。これらを伝えて設定してもらいます。
事前準備
筆者自身が行った事前準備です。備忘のため残しておきます。
Google Workspace
Google Adminにログインして、「ユーザーの追加」から新規ユーザーを追加します。会社用の新しいメールアドレスを設定し、妻が現在使っているメールアドレスを指定して招待メールを送ります。
次に、ライセンスを割り当てておきます。「お支払い」タブの「サブスクリプションを管理」を開きます。すでに会社で契約しているサブスクリプションプランを選択して、「さらに購入」でライセンスを1つ追加します。そして「ライセンスを割り当て」から、新しく追加した妻のアカウントにライセンスを割り当てます。
これで、妻が招待メールに従って設定を進めてくれれば、晴れて Google Workspaceのサービスを使えるようになります。
Microsoft 365
Microsoft 365でも新しいアカウントの作成とライセンスの割当をやる必要がありますが、個人的にはGoogleよりもちょっと複雑でした。まずはhttps://myaccount.microsoft.com/ を開き、組織の Microsoftアカウントでログインします。
ログインできたら、画面左上のお弁当メニューをクリックし、表示されるドロワー上部の「Microsoft 365」をクリックします。すると別タブが開きます。
次に、画面左下の「管理」をクリックします。するとまた別タブが開きます。(Microsoftアカウントの管理サイトは基本的に別タブが開くようになっているみたいで、油断するとブラウザのタブがMicrosoftで埋め尽くされます。注意してください。)
次に、左側ドロワーから、「ユーザー」→「アクティブなユーザー」を開きます。「ユーザーの追加」をクリックし、妻のアカウント情報を入力していきます。このとき製品ライセンスの割当を求められるので、適切なライセンスを選択して割り当てます。
以下の画像では2つのライセンスの選択肢がありますが、実務上での違いは以下です。
Microsoft 365 Apps for Business
ワード、パワポ、エクセルのみを使いたい場合はこちらを選択。
Microsoft 365 で最も安価なライセンス。
Microsoft 365 Business Standard
上記のアプリに加え、Teamsを使いたい場合にはこちらを選択。
(メールを除いた)コミュニケーションが社内に限られる場合には不要。一方で、客先と共同プロジェクトの際にTeamsのワークスペースでコミュニケーションを取る必要がある場合などにはこちらを選択。
妻の場合はワード、パワポ、エクセルのみで十分と判断し、 Apps for Businessのライセンスを割り当てました。(もちろん後から変更可能です。)
ライセンスを割り当てたら、アカウントが初期パスワードとともに発行されます。これを伝えて、設定を進めてもらえれば完了です。
最初はやや手間取りましたが、ここまでできれば準備は万全!…のはず。いざ実際にPCを渡して、作業環境を整えてもらいます。
導入時のつまづき
事前準備をすませ、ついに妻にMacbookを渡しました。パソコン自体が超久しぶり & 初めてのMacbookということで、多くのつまづきポイントがありまいした。
キーボード・IMEに苦戦
Macbookを立ち上げてキーボードで文字を打ったときに、Windowsとの操作性の違いに苦戦したようでした。そこでGoogle 日本語入力をインストールし、できるだけ違和感のない入力ができるようにしてもらいました。
インストーラーを起動した直後はIMEの設定画面にGoogle日本語入力が現れないので、一度再起動します。そして設定から、「キーボード」→「入力ソース」をクリックし、以下の画面を開きます。画面下の + - ボタンで必要なもののみに設定します。ABCとひらがな(Google)のみで十分でしょう。
また、キーボードのリピート(キーを長押しして同じ文字を入力し続ける操作)が遅いため、キーのリピート速度を最速に設定しています。
トラックパッドに苦戦
かなり昔のパソコンしか経験のなかった妻にとっては、Macbookのトラックパッドがかなり違和感のあるものだったようです。まずクリックボタンがなく、パッド自体を押し込むことでクリックするという操作が慣れないものでした。また、デフォルトではパッドをタップしてクリックの操作がOFFになっているため、これをONにして、これまで使っていたタッチパッドと同様の操作ができるようにしました。
ダウンロードとインストール
Slackやパワポなどのデスクトップアプリをインストールする際に、「ダウンロード」と「インストール」の違いに苦戦しました。
iPhoneであれば AppStoreでアプリを選択し、示される通りにボタンをタップしていけばアプリが使えるようになります。
しかし、Macのデスクトップアプリは Webブラウザでインストーラをダウンロードしてインストールするパターンや、dmgファイルをダウンロードして展開し、Applicationsフォルダに移動させる、といった複数パターンが存在します。
ブラウザで「ダウンロード」という記載がされていたら、Finderの「ダウンロードフォルダ」にファイルが落とされ、それをダブルクリックで実行する必要がある、ということを伝えて、次に進んでもらいました。
パスワードの管理
パスワードを使い回さずパスワードマネージャーを使うことを覚えて貰う必要がありました。
Macにデフォルトで搭載されているパスワードマネージャーと、Chromeが提供するGoogleパスワードマネージャーの2つで管理することにしました。
Google Workspaceのアカウントや、iPhoneアプリなどでも使いうるサービスのアカウントはMacのパスワードマネージャーに記憶させ、その他のWebサービスのアカウントはGoogleパスワードマネージャーに記憶させておきます。
これにより、パスワードを覚えるが必要なくなり、あらゆるサイトで複雑かつ異なるパスワードを設定できるため、セキュリティが高まるという説明をして、導入してもらいました。指紋認証ですぐにパスワードを入力できるという機能を気に入ってもらえたので、すぐに慣れて使ってくれそうです。
スタートラインに立って
やることリストで示したすべてのツールのセットアップを完了し、晴れて事務作業を始めるスタートラインに立ってもらうことができました。
冒頭でも書きましたが、事務作業においてはまずはファイル・フォルダの整理や、コミュニケーションツールを滞りなく使いこなすことが何よりも最優先だと思います。こういったスキルは職場では前提条件として見られがちですが、未経験者やパソコンの初心者にとっては何が正しいやり方なのかすらもわからないため、勉強のしようがないという問題があります。結果的に効率が上がらずストレスだけがたまっていき、パソコン自体を嫌いになってしまうというパターンも容易に起こり得るため、未経験者・初学者には正しいとされる道筋を示して、現実的な目標を設定してもらい、現場に入ってゆっくりと慣れていってもらう他ないでしょう。
とりあえず妻には必要最低限のセットアップをしてもらい、今後のやってほしい仕事を伝えてパソコンを預けました。その後はデスクトップの壁紙を自分好みのアニメーションにカスタマイズしたり、パスワードの整理を始めたりと自分から手を動かし始めていました。
楽しくパソコン作業ができるように、今後も応援していきたいと思います。
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