12月19日 影は可能性
12月19日
乃木坂46の有観客コンサート再開の幕開けとして「アンダーライブ2020」が開催、その2日目を目撃するべくはるばる日本武道館までやってきた。ここに来るまで、迷いが全くないわけではなかった。俺は大阪在住で、東京へ行くことにリスクもあるし、周りにも良く思わない人もいると思う。でもそこを考慮してでも、行きたいライブだと思った。乃木坂46が観たかった。対策は万全のつもり、一旦このことは忘れて楽しむことにした。
今回のアンダーライブは12月18日から12月20日の三日間にわたって日本武道館にて開催される。俺は今まで乃木坂のライブには色々行ってきたけど、アンダーライブは初めて。表題曲の選抜に選ばれなかったメンバーのみで構成されるライブ。乃木坂をよく知らない人にとってはショボいと感じてしまうかもしれないけど、メディア露出の比較的少ないアンダーメンバーに焦点を当てた機会はファンにとっては待望だと思う。俺もそんなファンの1人で、今回のアンダーにはずっと応援しているメンバーがいる。もちろん全員応援してるんだけど、特に応援してるメンバーが樋口日奈。かのキムタク殿とのドラマ共演が話題になり、ご存知の方も多いと思う。ライブパフォーマンスもトップレベルだと思っていて、彼女をメインで観れる日をみすみす逃す訳にはいかない。他にもテレビ番組出演で大忙しの山崎怜奈、アンダーセンターを何度も経験済みの寺田蘭世、挙げたらキリがない。全員応援しています。
そんな感じで、今日のライブをかなり楽しみにしていた。開催の発表から、ライブ当日までかなり短いスパンで話が進んでいったため、あまり実感がない。チケットが当選して、飛行機を取って、宿を確保して、かなり目まぐるしく日が経ち、気がつけばライブ当日という感じ。
17時過ぎごろ武道館に到着、日が落ちライトアップされた武道館がより神聖なものに見えてしまう。俺はもともとバンド系の音楽が好きでよくライブもいく。俺が中学生の頃、武道館といえばロックバンドの登竜門的なイメージがあって(今でもちょっとはある)、アイドルがそんな武道館でライブをやるなんてもってのほかだと思っていた。そんな自分が今日、乃木坂46を観るために武道館にいる。当時の俺はびっくりすると思う。
俺はバンドであろうとアイドルであろうと、音楽ジャンルに特に線引きは必要なくて、生のパフォーマンスからもらえるパワーは両者共通のものであり、それにかける思いに差はないと思っている。それに気づかせてくれたのは間違いなく乃木坂46だ。頑張る姿は美しく、素晴らしい。今日はそれを目撃しにきた。
18:00開演、の前に毎度お馴染みの影ナレ。担当は二期生から鈴木絢音と伊藤純奈。2人の尊い絡みを聞きながら、ライブへの期待が高まる。ちなみに今回は"来場者へ新しい楽しみ方の提案"として、2本のスティックバルーンが導入された。バレーボールの試合を想像するとわかりやすいかもしれない、あのバンバン叩いて応援するアレである。
アイドルのライブではやはりコールが重要視され、それによってメンバーと観客が一体になると言う感覚がやっぱりある。それの代わりとして今回導入されたスティックバルーン。色々考えてくれてるんだなと感動した。以前のようなライブができるまで待つのではなく、今できる最大限の楽しみ方を提供してくれた乃木坂には感謝しかない。
そんな風に感動していると会場が暗転。満を辞して"Overture"からライブが始まった。いつもならここで最大級の歓声が上がるのだが、今回ばかりは違う。スティックバルーンで各々が再会を祝福する。この辺で、サイリウムとスティックバルーンの両方持ちの実現が難しいことに気づく。こればかりはどうしようもない。笑 無理やり両手で持ちました。 (ちなみに俺は1日目のセットリストを全く調べず、予備知識ゼロでライブに臨んだ。)
待望の1曲目は「13日の金曜日」。センターは本公演の座長の阪口珠美が務める。アンダーメンバー総勢14人がステージで踊っている姿を観て、早いけどもう感動してしまった。色々あったけど、乃木坂を観れてよかったなともう思ってしまった。ちなみに座席は二階席ということもあって一眼でステージを見ることのできる最高の席だった。(そりゃやっぱりアリーナ席への憧れはあるけど)
2曲目は「春のメロディー」で、センターは鈴木絢音。鈴木は当初クールなイメージがあったけど、最近はめっきり違う。番組でも可愛らしい一面を見せるし、何より笑顔が増えた。長い冬が明け、春の訪れを告げるようなパフォーマンスを見せてくれた。
続いて「滑走路」。この曲、乃木坂の中でもトップクラスに好きな曲で、何よりイントロが神がかっている。「トキトキメキメキ」と肩を並べるぐらいにイントロが良くて、聴いた瞬間脳汁が止まらない。センターの寺田蘭世は「乃木坂のことは好きですか?」と煽る。こちらは新しい楽しみ方、スティックバルーンで応戦。これがなかなか楽しい。楽しい、と思えてる時点で乃木坂の勝ちである。
4曲目は我が推し樋口日奈がセンターを務める「シークレットグラフィティー」。これこそ、コールと合わせて真価を発揮する楽曲と言っても過言ではない。モニターには音ゲーのような画面が表示され、それに合わせてスティックバルーンを叩くことで会場が一体となった。二階席から推しを見つけるのはさぞかし難しいかと思っていたが、最近ショートカットにしたため、想像以上に見つけやすかった。ありがとう。
続けて「あの日 僕は咄嗟に嘘をついた」。アンダー曲の中でもかなり人気の高い曲で、二年前ぐらいのファン投票では13位という人気っぷりである。センターは和田まあや。少し前までは年下というか妹のようなイメージがあったが、3期生や4期生の加入を経て、先輩としての堂々とした姿が見られた。
6曲目は山崎怜奈センターの「自由の彼方」。山崎は最近ますます忙しくしているメンバーで、外仕事の量はトップクラスだと思う。そんな彼女は「自分がアイドルに向いてない」と言うことがあるけど、今日のパフォーマンスを観てそうは思えなかった。スタイルの良さを活かしたしなやかなダンス、カメラを抜かれた瞬間のあざとい笑顔。立派なアイドルだ。
阪口センターの「初恋の人を今でも」に続いて「涙がまだ悲しみだった頃」が披露された。センターは向井葉月。向井のキラキラとした笑顔からは、加入当初のか弱い様子など微塵も感じられず、とても頼もしかった。MCではファンの頃から好きだったこの曲をやれて本当に嬉しい、と語っていた。
9曲目は渡辺みり愛センターの「風船は生きている」。これもまた名曲で、ラップ調の歌割りやサビ前のブレイク、かっこいいギターソロなど、アンダー曲にはもったいないぐらいのレベル。センターの渡辺は楽曲にも劣らない完璧なパフォーマンスを魅せる。
前半戦ラストは寺田センターの「その女」。「滑走路」の時とは打って変わって、クールな表情でパフォーマンスする。このギャップが寺田の魅力だと思う。楽曲に合わせて表情をガラッと変え、センターとして、時にセンターを支えるポジションで最高のパフォーマンスを見せてくれる。また、ステージ上空からのカメラを利用した、赤と白の手袋による手遊びのような振り付けの完成度も凄まじく、メンバーのアンダーライブに対する熱量がじわじわと伝わってきた。
ここまで10曲、MCなしで突っ走ってきたが、そこで思ったのが1、2期生の安定感が半端じゃないと言うことである。もちろん、踏んできた場数の違いはあるかも知れないけど、今回の座長を務める阪口や、初センターの向井を二、三列目から支える姿は立派だった。それは樋口や純奈をはじめとするお姉さんっぽいメンバーだけでなく、北野日奈子や寺田、渡辺らにも顕著に表れていた。
MCを挟んで、「乃木坂46 恋のメロディー」コーナー。吉田綾乃クリスティー、佐藤楓、中村麗乃らがそれぞれ演技を披露し、「誰よりそばにいたい」「別れ際、もっと好きになる」「扇風機」の、三曲を披露した。
これについて樋口と三人が話すMCでは、樋口監督の熱のこもった演技指導に3人も笑顔で応えていた。吉田らの無茶振りにもしっかりと応える役者樋口には、舞台やドラマなどで培った自信が見られたように感じたし、アンダーメンバーの
和気藹々とした雰囲気が感じ取ることのできるワンシーンだった。
阪口、北野、鈴木の対談ムービーから始まるのは「アンダー」。北野はこの楽曲について、「その時の想いをぶつけて表現する」と言っていて、この日のパフォーマンスも力強いものだった。阪口と北野のダブルセンターで披露された。歌詞もかなりシリアスにアンダーメンバーのことについて書かれていて、当初はかなりきつい曲だなと思っていたけど、その分アンダーメンバーでのパフォーマンスを観るとより一層意味を増して、メンバーの熱い想いが伝わってくるようだった。
続けて阪口センターの「ここにいる理由」。序盤の静かな雰囲気から一転、サビで最高に盛り上がる楽曲。落ちサビ前での大歓声はライブ名物と言っても過言ではない。
純奈センターの「嫉妬の権利」では、純奈の大人びた、妖艶なパフォーマンスで会場を魅力する。楽曲の持つカッコいい雰囲気や照明などもあいまって、より一層純奈がカッコよく映っていた。
17曲目に披露された、鈴木センターの「自惚れビーチ」ではスティックバルーンを利用したコールアンドレスポンスで会場が一体となる。普段は大人しい鈴木が、こんなにも可愛らしい曲で楽しそうに踊っている姿を観ると、普段とのギャップにやられてしまう。煽りも様になっていたし、それに呼応するかのように楽しむメンバーの様子も良かった。
2期生は不遇と言われることが多いし、実際俺もそう思っている部分もある。なかなか選抜メンバーに選ばれず、ライブでの出番は少なかったり、つまるところアンダー常連になってしまっているメンバーもいる。しかし、それに挫けずにここまで真摯に頑張ってきたメンバーの姿を今日は見ることができた。それが真っ当に評価こそされていないが、その姿をファンは必ず観ているし、知っている。だからこそ今日のようにメンバーが心の底から楽しんでいる姿を観て俺は安心した。二期生は今回のアンダーライブを間違いなく支えていて、二期生なしには成り立たなかったと思う。次のシングルの選抜メンバーに選ばれたり、大きな仕事に抜擢されたりしたら嬉しいことこの上ない。
阪口センターの「生まれたままで」に続いて、北野センターの「君は僕と会わない方がよかったのかな」は本当に感涙ものだった。
20曲目は「ブランコ」。センターは寺田。この日寺田がセンターを務めるのは三度目、そしてそのどれもが異なる雰囲気を持つ楽曲で、それぞれに合わせた寺田の表情なパフォーマンスは圧巻だった。その中でも特に「ブランコ」は寺田のうちに秘める熱い想いが表れていて、唯一無二の空気感を作り出していた。「ブランコ」のセンターは寺田にしか務まらない。
和田センターの「不等号」を終え、会場が静寂な包まれる。奥から一人のメンバーが出てきて、カメラのピントがあったと同時に「日常」がスタート。センター北野の表情も相まって会場内はどよめいた。メンバーの鬼気迫るパフォーマンス、それを牽引する北野、それに呼応する観客。この日1番の盛り上がりだったと思う。昨年の全ツや、今年2月のバスラでも圧倒的な盛り上がりを見せた「日常」はこの日も最新モードで健在だった。
阪口のMCを挟んで、本編ラストを飾るのが阪口センターの最新曲「口ほどにもないKISS」。これまでにない、かわいさ全振りのアイドルらしい楽曲で、多幸感に包まれてフィナーレを迎える。この日、何度も阪口のセンターを観てきたが、回数を重ねるごとに安定感が増しているように思った。個人的な印象として、阪口はあまり前に出てくるタイプではないような印象を持っていた。しかし、最近では乃木坂工事中でもなかなかにパンチのある発言をしたり、バラエティ面でも乃木坂に欠かせない存在になりつつある。そんな彼女がセンターを務めるまでに大きくなった。阪口をはじめ、アンダーメンバーのこれからの期待が高まる素晴らしいライブだった。
アンコールは「ガールズルール」「制服のマネキン」と乃木坂の代表曲2曲を連発。有観客のライブでは久しぶりの披露ということで会場内も盛り上がった。
最後のMCでは、阪口が「どのポジションにいても全力でやるから、それがセンターになったとしてもやることは変わらない」という話をしていたと樋口が涙ながらに話す。阪口のスタンスはとても素晴らしいと思ったし、これこそ乃木坂だと思った。まだまだこれからの阪口珠美だが、彼女のスタンスは新生乃木坂46に必ず良い風を吹かすだろうし、その一歩目となる今回のアンダーライブを観ることができて本当に良かった。 最後に「乃木坂の詩」が披露され、一面が紫に染まった武道館を観てその想いがより強くなった。
選抜メンバーあってのアンダーかもしれない。でもそれはつまりアンダーあっての選抜でもあるということ。アンダーの存在に改めて気づいた今日、また彼女たちに心が奪われた。