東海地方化石巡り 2

豊橋駅から電車に揺られること約25分。
私が降りたのは愛知県の蒲郡駅である。この周辺にある竹島水族館と、生命の海科学館を楽しむのが本日の予定だ。
先ずは開館時間に合わせて竹島水族館へ向かう。約10〜13分ほど海岸沿いを歩き、入館料を支払い中に入ると、いきなりカブトガニが出迎えてくれる。数匹壁にへばり付いており、中々のインパクトがあった。子供達からすればちょっと怖いかもしれない。
こんな水族館は関東には一つもなかった。ここは面白いぞ!と既に勝った気でいた私だが、竹島水族館は面白いだけでなくエキセントリックな水族館だったのである🤣
何というかその、魚に対する愛情が一周回ってぶっ飛んでると言うべきか😅
詳しくは皆さん自身でインターネットで調べて欲しい。
そして出来れば直接行って見て欲しい。

色々と凄い水族館だった・・・


竹島水族館で濃厚な時間を過ごし、次はいよいよ今回の主役である生命の海科学館へ向かう事にした。
朝から天気にも恵まれ、のんびり海を眺めながら15分ほど歩くとすぐに着いた。

蒲郡市生命の海科学館

博物館としては中規模程度の大きさの建物だが、この科学館の主役は恐竜では無い。
一部展示されている魚竜でも首長竜でも、古代魚でも無い。
ここの主役は古生代の海洋生物、それもカンブリア紀や先カンブリア史を生きた奇妙な生物たちなのだ!
それらをコレでもかと眺めることができる、古生代ファンからすればまさに夢のような場所なのである☺️
そんな博物館は日本において、ここ以外には存在しないと言っても過言ではないだろう。

新種のインカクジラ
インカクジラ概要

入館すると、新しく発見されたインカクジラとタラソメドンの巨大模型が目に入った。
インカクジラについては写真の説明で足りると思うので、私からは首長竜のタラソメドンを紹介しようと思う。

タラソメドン

タラソメドンは見ての通り、首の長いタイプの首長竜だ。「海の支配者」という名を持つ彼もまた、白亜紀を生きたエラスモサウルス科の一種である。
エラスモサウルスとの細部の違いは素人の私には分からなかったが、生態は殆ど同じだったようだ。成体が大体10〜14m程度、やや冷たい海を好む、頭足類や魚類だけでなく翼竜も捕食する、胃石が見つかっている(バラストの役割では?という説もある)、そしてやはり首の頸椎が多い事は共通である。
ところで古生物を学び始めた人にありがちだが、彼のようなエラスモサウルスの近縁種は、度々プレシオサウルスと混合されやすい。
しかし実は両者は生きた時代も大きさも全く違うのである。それはこの表を見れば一目瞭然であろう。

表にすると一目瞭然!

階段を登ると、いよいよ入場だ。
実は生命の海科学館の展示室は2Fにある。ここでチケットを見せて中に入る事ができる。
入館料は大人500円、子供200円だ。
まずは冥王代から先カンブリア史に至るまでの地球史を学びつつ、そこからエディアカラ動物群、バージェス動物群、古代魚と魚竜のコーナーへと繋がる流れになっているようだ。

冥王代の頃の地球

私はエディアカラ動物群、バージェス動物群にそこまで詳しくは無かったので、これは面白いものを見れるのでは!?とウキウキであったw
すると早速、海藻のような化石を見つけた。
チャルニオディスクスである。

まるで一枚の巨大な葉に見える

正式な発音をカルニオディスクスというこの生物は、知らない人から見れば何だ海藻の化石か😌と思われるかもしれない。
しかしこれは動物である。主にコラーゲンで構成された体の構造が、一枚の葉に見えるだけの話だ。葉状体、茎部、付着根という三部位で構成されており、全長約1mにもなる「軟体生物のようなもの」なのだ。主に浮遊してくる漂流物を捕食していたらしいが、自ら浮遊して海に漂っていたのでは?という仮説もある。
そもそもエディアカラ動物群は殻や骨格というものを持たない。要はイソギンチャクみたいなものか?と思う人もいるかもしれないが、むしろウミエラに近いと考える学者もいる。
だが真相は謎である。
約6億年前の海の中にいたこの生物達は一体何なのか?
それはこれから判明していくのだろう。

次はカンブリア紀の展示コーナーを紹介しよう。バージェス動物群からは一体何が展示されているのだろう?☺️
能天気な事を考えていたカンブリア紀に無学な私は、ここで衝撃的な事実を知る事となる😨
この科学館に展示されているのは、なんとバージェス動物群だけではなかったのだ!
では何がいたのか?
バージェス動物群よりも1000万年も古いとされる、中国・雲南省の澄江動物群(ジュンジャン動物群)の化石もあったのだ!
その代表的存在が、このハイコウイクチスといえるだろう。日本ではここでしか見る事が出来ない、とても貴重な存在である。

ハイコウイクチス
ハイコウイクチス概要

ハイコウイクチスは約5億3000万年前に現れた、地球最古の魚類の一種とされている。
何か釈然としない文章だな、と思った人は鋭い。最古の存在なのに「一種」と「されている」とはどういう事か?
まずは「一種」の部分から説明しよう。

ミクロンミンギア

ハイコウイクチスはミクロンミンギア科の「一種」であり、ミクロンミンギアは5億2400万年前の地層から発見されている。とはいえ両者は特徴がかなり似通っており、ハイコウイクチス=ミクロンミンギアという認識をされる事も多い。
ミクロンミンギアもまた、最古の魚類として有名な生物だ。その中の「一種」という前提になるので、このような書き方となるのである。

次に最古の魚類と「されている」という部分について説明する。
こちらはとてもややこしい話になる😅
ハイコウイクチスは脊索(脊椎の原型のようなもの)を持つ事と、顎を持たない事が最大の特徴である事から「無顎類」というグループの一つに区分されている。それに対して顎を持つ魚類は「顎口類」とされる。
現代のヤツメウナギやヌタウナギは、実は無顎類の生き残りなのである。
※彼らは今は円口類と分類されている

顔は怖いが、実はビタミンAが豊富な食材

さて、では本題に入ろう。
無顎類は厳密に言うと、実は魚類とは見なされていないのである。

魚類じゃない?どういう事だ?

こう聞くと皆さんは大体こうなると思う。
しかし冷静に考えてみて欲しい。ではこのハイコウイクチスやヤツメウナギを、軟骨魚類と硬骨魚類のどちらに分ければ良いのか?
確かに彼らは軟骨を持つ。だがもしも明確な論拠を出せと言われたら、もうお手上げである🤷‍♂️
そしてこう言われると「無顎類って何だかいい加減な分類だなぁ。魚類じゃないのに何で魚類扱いしているんだ?🤔」と考えてしまうのが自然ではないだろうか?
その通りである。
顎を持たない脊椎動物らしいものをとりあえず纏めた物が無顎類という単語の正体なのだ。
分かりやすい図がインターネットにあったので掲載しよう。

そもそも「○○類」という単語は、いくつかの生物のグループを纏めて呼びやすくした便利な言葉に過ぎない。分類学では本来、生物のグループには種、属、科、目、網、門、界といった単位を当てるのが正しいのだ。そこに更に上、下、亜などを加えて細かくクラス分けしていくのである。よって我々が一般的に考えている魚類を、正しくざっくり仕分けるとこうなる。
本来は下の顎口上網こそが狭義における正しい魚類であり、無顎口上網は魚類とは言えない。狭義における魚類は硬骨魚網と軟骨魚網で構成されており、無顎類は原始的で顎を持たない魚のような生き物という事になる。
ではハイコウイクチスは最古の魚類では無いのか?ところが話はそうはいかない。
根本的に「魚類」という単語自体が、非常にいい加減で曖昧なものだからである。
分かりやすい図があったので掲載しよう。

魚類とは何ぞや?

実は魚類は祖先がそれぞれバラバラで、複雑な進化を遂げている事が判明している。しかも新種も割と見つかるので、他の生物に比べて前提がひっくり返りやすい。
そんな魚たちをどう纏めれば良いのだ?という話になってしまう。そこで類という便利な単語が出てくるのだ。あの適当さはこういう時に本当に便利である。
よって魚類とは広義において、脊椎動物のうち四肢を持たないものとされている。一般的にはこちらの認識の方が強いだろう。何しろシンプルで分かりやすい。
だからハイコウイクチスも広義における最古の魚類の仲間、という説明が成立する。
我々の真の先祖も今の円口類も、顎を持たないが何となく魚っぽいので便宜上無顎類とされ、かつ魚類扱いされているだけなのだ。
生物の進化系統に謎が多い現状では、このように説明せざるを得ないのである。
このややこしい問題が決着を迎えるには、より決定的な生物化石の発掘、顎の会得に関する遺伝子変化の研究がより必要だろう。
途方もない時間がかかるかもしれないが、その時こそ結論が判明する筈である。

話が長くなったし皆さんも疲れてきたと思うので、最後に古代魚を一つ紹介しよう。
棘のある小さなサメ、ファルカタスだ。

ファルカトゥスとも

デボン紀から石炭紀の頃までを生きた古代魚である。棘があるから棘魚類だ!と思う人もいるかもしれないが、彼は立派なサメである。サメの中でも20〜30cmとかなり小柄で、頭の上に棘がついているのが最大の特徴だ。
これは交尾の際に片方が咥える事で、お互いが離れ離れにならないようにしていたとされている。実際そういった化石も見つかっているとのことだ。

予想外の収穫を得て上機嫌で科学館を出た私は、そのまま豊橋駅へ向かい帰りの新幹線に乗った。
家に帰るまで次の旅先を考えていたのだが、もうここからは北か西にひたすら遠征をするしかない事に私は気付いた。関東も東海も、ほぼ制覇しつつあったからである。
時間は努力すれば作れるが、問題は費用である。この先ずっと新幹線や飛行機を使ってばかりで本当に良いのか?
もっと他にやり方があるのではないか?
己の旅の知識に限界を感じていた私は、交通系Youtuber達から知識を学ぶ事を決意する。
彼らは低コストで効率的、かつ楽しい旅行ができる達人揃いなのだ。
彼らの知識は早速私を助ける事になるのだが、それはまた次回の話。
今回はここまで!😊

※今回は内容も難しめで拙い文章でしたが、読んで頂きありがとうございました🙇‍♂️





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