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PEOPLE 1 2023〜2024 TOUR 第5回本公演 "LOVE2" @KT Zepp Yokohama 2023.11.17 ライブレポ

はじめに

 PEOPLE 1が第5回・第6回のツアーとして全国を同時に回った2023年の秋冬。本稿は第5回本公演 "LOVE2"(読み:ラヴラヴ)の初日のライブレポである。なお、来年にはアリーナ特別公演として、1/13(土)に"続・LOVE2"、1/14(日)に"さよなら、ぼくらのパーティーゲーム"がともにぴあアリーナMMにて行われることが決定している。

本編&アンコール

1 愛について

 SEなしでPEOPLE 1の首謀者・Deuさんが正装で登場。ピンスポットが当たる中、アコースティックギターの弾き語りでこのツアー名にぴったりの曲からライブを始める。PEOPLE 1の中でも穏やかな曲調の楽曲だが、ライブでDeuさんの渋い低音で弾き語られると独特の迫力がある。サビのファルセットが満員のKT Zepp Yokohamaに響き渡り、彼が「LOVE2」とツアー名を告げると……

2 さよならミュージック

 「LOVE2」という言葉が挟まれるSEに載せて正装のItoさん、Takeuchiさんにサポートの2人も登場。1曲目と共に1st EPの「大衆音楽」に収録されている2曲が続き、これは果たして最新のライブツアーなんだろうかと思ってしまうほど懐かしいラインナップが並んだ。1曲目は静かに聴き入っていた会場の大衆たちが、曲名に反してライブの始まりを全身で祝福するかの如く声をあげる。


3 GOLD

 曲名通りの金色の照明に包まれ、アニメ「王様ランキング」の主題歌が奏でられる。前ツアーでは終盤に披露されていただけに盛り上がりもバッチリ。前に本人達も「ケレン味3部作の続きとなる曲」と言っていたように、PEOPLE 1の新しいアンセムにもうなりつつある。前ツアーはリリース直後だったが、今回はツアーの主役の曲ではないながらもフロアのテンションからすでにこの曲が人気を獲得していることが窺える。


4 新訳 東京

 曲名が告げられ始まったのは、またしても1st EP「大衆音楽」収録曲ながら、原曲とは異なる、前ツアーと同じアレンジの「東京」。ピアノサウンドが目立つEDMっぽいアレンジだが、ギターの音の爽やかさも際立っており、また新しい「東京」の表情を見せてくれる。他アーティストとのコラボによる曲の再解釈「Re:シリーズにしてもそうだが、この自分達の楽曲のリアレンジ力はピポワンの大きな武器だ。青い照明にミラーボールが映え、ラストサビでは大合唱が起きる。


5 紫陽花

 続けて4曲が披露されたのちにMCコーナーが挟まれ「初日からZepp Yokohamaという嫌な思い出が思い出が蘇る場所です」とDeuが笑う。それはリハ中の彼の怪我により2度目の公演延期を余儀なくされたという(私も直面した)事故のことだが、性懲りも無く「ドキドキする」のMVでドラムセットに突っ込んでしまったことを話すのも彼らしい。曲に入り、イントロがサポメン2人のギターとピアノで始まる。リムショットとベースが入っていき、徐々に盛り上がっていく「紫陽花」はまさにこの公演名にピッタリの鳥肌が立つようなラヴソングだ。


6 BUTTER COOKIES

 恒例の黄色い照明に包まれ始まったのは、黄色いジャケ写のEP「GANG AGE」の1曲目である「BUTTER COOKIES」。バックのサポートメンバー2人が観客のクラップとスナップを煽るが、このような複雑な曲のリズムも取れるあたり、普段から展開が読めず幅の広い曲調の楽曲を聴き込んでいるPEOPLE 1のリスナーのリズム感の良さが感じ取れる。


7 夏は巡る

 ライヴ恒例の(といってもそもそもこの曲が前ツアーからしかやってないが)長いイントロに導かれ、Deuさんのヒューマンビートボックスの原曲のイントロに繋がる。「GOLD」のカップリングでありながら、表題曲と同じくらいの人気を誇るB面曲だ。サビではフロアからシンガロングが起こるが、その光景も含めて、曲の終わった後に「もっかいやってー!」の声が客から上がるのも共感できるほど楽しかった。


8 Outro (Because I Love You)

 久々にやる曲を、とDeuさんが言い、ハートマークのジャケ写のEP「Something Sweet, Something Excellent」のラストソングが始まる。アルバムのイメージや曲名からして今回のツアー名と合っているのでもしかしたら聴けるかも、と思っていたがまさか本当にやってくれるとは。2番からは原曲と異なりバンドが入ってシューゲイザーっぽい感じのアレンジだった。


9 怪獣

 ハンドマイクで後半戦の開始が宣告される。イントロが始まると同時にクラップが巻き起こり、雄叫びの部分で観客が一体になる光景は何度見てもいい。ここから始まるまさにケレン味マシマシのアッパーチューンのゾーンはPEOPLE 1のライブの「楽しい」を凝縮したセットリストだった。以前のツアーも含め、ライブではもともと並べて披露されることが多いという前例も込みで。


10 銃の部品

 Takeuchiさんのドラムによる4カウント(アウフタクト3カウント)でItoさんがアルペジオと共に歌い出す。イントロ部分で大衆達が指をジャケ写の「銃の部品」ポーズにして掲げるのも見慣れたもの。Deuさんのハスキーな声との掛け合いが特徴的なこの曲は「東京モード学園」のCMのタイアップとして書き下ろされており、今を生きる若者に刺さる歌詞になっている。間髪入れずにまたドラムによる4カウントが入り……


11 DOGLAND

 「止まぬ雨のような 明けぬ夜のような うるさいファンファーレで街を襲え」のライブではお馴染みの歌い出しからまたしてもキラーチューンが畳み掛けられる。TVアニメ「チェンソーマン」のエンディングテーマとしてPEOPLE 1の名前を一層世に広めた彼らの代表曲だが、こういった大型タイアップでもタイアップ先の世界観を歌詞に上手く落とし込みつつ、しかしライブではしっかり毎回ギターが目立ったり、盛り上がる演奏をできるのがすごい。個人的には2サビでの「見開きのような」のライブでのドラムのアレンジが好き。


12 ハートブレイク・ダンスミュージック(新曲)

 ここでまさかの新曲!ツアーの時点では音源としてもリリースされておらず、もちろん初披露のこの楽曲は、既にリリースが発表されていた2ndアルバム「星巡り、君に金星」に収録予定の新曲であり、曲名通り踊れるナンバーであった。みんな聴くのは初めてのはずなのに「ハートブレイク・ダンスミュージック!」とすぐにサビで大合唱が起こるほど客の心をガッツリ掴む。一見もう一つのツアー「ぼくらのパーティーゲーム」向けの曲にも思えるが、曲名に「ハートブレイク=失恋」が含められていたり、歌詞などもよくよく聴くとやはり「LOVE2」向けの曲とも思えるから不思議だ。


13 僕の心

 「愛というのは現実的だと思う。」というDeuさんのMCの後に始まったのはライブでは毎回やるこの曲。「歌ってほしい」と彼が言うと、サビではフロアから大合唱が巻き起こる。「わかるわけがない」という現実を、それでも愛らしく歌うピポワンらしさや、「わかるわけがない」というフレーズをライブに来ているみんなで歌ってわかりあうという最高の矛盾を感じながら、私もまたこの曲をみんなと一緒に大声で歌わざるをえなかった。


14 ラヴ・ソング

 ここでHajime Taguchiとベントラーカオルのサポートメンバー2人を紹介。2人のピアノの掛け合いのイントロから、ジャズっぽいアレンジで始まった「ラヴ・ソング」。曲名的には今回のツアーでのセトリ入りは間違いないと多くの人が思っていたと思うが、間奏ではベースとピアノのソロが挟まれ、アウトロのドラムはシャッフルビートになるなど、期待を裏切らず予想を上回るパフォーマンスを見せてくれるピポワンには毎度脱帽する。


15 アイワナビーフリー

 「僕の心」を大合唱し、「ラヴ・ソング」で超絶ハッピー空間を演出してからのおどろおどろしい感じで始まった「アイワナビーフリー」。この曲調の振り幅よ。さっきまでの一体感はどこへやら、みんな思い思いに跳ねたり踊ったりし始める。ただの愛に包まれた時間で終わらせない、来た人全員を楽しませるというPEOPLE 1の気概を感じるようなセットリストの流れだった。


16 フロップニク

 さらにピポワン随一のダンスナンバーが続く。イントロで起こるクラップがこの曲を「待ってました!」と言わんばかりに待ち構えていたかのようだ。新訳ではない方のこの曲は久々に聴いたがめっちゃ踊れた。そしてこの2曲の流れで、各々が好きに踊ったり跳ねたりすることにより、かえって一体感が生まれるという、ここでもまた新たな美しい矛盾に気づいた。とはいえもちろんこの思考は後付けであり、ライブの最中は何も考えずに楽しませてくれるのがピポワンのライブなのだけれども。


17 常夜燈

 最初にPEOPLE 1の名を世に知らしめた、「僕の心」と並び彼らのキャリアの中でも一、二を争うくらい優しい曲である「常夜燈」。一時は観客がクラップをしたり、スマホのライトを点けて掲げたりしていた時もあったが、今回は手をゆっくり左右に振ることでこの曲を受け入れていた。しかし拍の裏表が入れ替わったり、スナップのタイミングが難しいだけに、ライブでこの曲をしっかりミスなく演奏できる彼らの凄さがわかる。2サビ前にマイクの前でスナップするTakeuchiさんがかっこよかった。


18 魔法の歌(スリーピース)

 この曲もライブでほぼ毎回披露される曲だが、今回はサポートメンバー2人がはけてスリーピースでのアレンジとなった。聞き慣れた曲でもこういった形で変化を入れてくれるのが嬉しいし、音数が少ないからこそ落ちサビでの「生き辛いよな こんな世の中は 色んなことがわかってからはもっと涙がこぼれそうだ」というメッセージがより胸を打つ。ラストサビではまたしても大合唱が起こり、本編の最後に相応しい大団円だった。


EN. エッジワース・カイパーベルト

 ツアー恒例のTakeuchiさんによるグッズ紹介コーナーのあと、今回のアンコールに選ばれたのはタオル回しが恒例の動きとなるこちらのダンスナンバー。DeuさんとItoさんの異なるボーカリストの魅力がライブで十二分に引き出される。「好きなものが多いほどこの世はずっと楽しい」ことをいつでも実感させてくれるのがこの曲であり、PEOPLE 1のワンマンライブだ。


おわりに

 ピポワンは常に革新的なライブを観せてくれる。それは今回「LOVE2」と「ぼくらのパーティーゲーム」という毛色の異なる2つのツアーを同時並行で回ったことにしてもそうだし、そもそもがツインボーカルの1人がベース・ギター・シンセサイザーなどを担当しつつ、2人ともハンドボーカルになる曲もあるなどそのパフォーマンスの自由さが物語っている。そうしてその自由さを支えているのは、またしても曲によりギター・ベース・シンセサイザーなどの楽器を使い分けるHajime Taguchiとベントラーカオルという2人のサポートメンバーで、今回のツアーではその2人をフィーチャーするような場面も多く、改めてライブではこの5人でピポワンなんだと実感した。

 ライブでのMCの軽妙な掛け合いからは、また今回のツアーのキャパシティからはとても結成5年以内のバンドとは思えない。だがライブのたびにサポートメンバー2人も巻き込んで新たなアレンジを魅せてくれる斬新さからは確かに若さ、フレッシュさを感じる。にも関わらず歌っているメッセージは世代を超えて響く普遍的なものであるから、そのギャップに我々は虜になっていくのである。やはり瞼の裏に焼きついている光景としては「僕の心」での大合唱。「わかりあえるわけがない」という現実を、それでも愛を持って共有できるピポワンのライブは信頼できるし、次はどんな光景を見せてくれるのだろうとドキドキせざるをえない。


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