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今週読んだ海外記事と雑感(2020.5.16)

今週もNewsPicksでピックしたニュースとコメントを転記してまとめておきます。
有料部分はニュースへの雑感です。

▼私のNewsPicksアカウント

「チャプター11」の申請は必ずしもブランドの終わりではない

Neiman MarcusやJ.Crewがチャプター11を申請したことが日本でも話題になっていますが、チャプター11は日本でいう再建型の倒産であり、基本的にはそのブランドの名前を冠したまま再生を目指すための法律です。過去にはMacy'sもチャプター11を申請して資産を整理し、復活を遂げた経緯は知らなかったので勉強になりました。
これまでのしがらみや個々の契約の関係で閉店できなかったり契約破棄にできなかったものをすべて強制力をもってリストラクチャーすることで再建を目指す形式ということですね。
もちろんこの方法をもってしても業績回復できず会社として清算するしかないケースもありますが、上記の2社に関しては過去に申請した企業と比較すると売上の減少がゆるやかなので復活の可能性は十分にあるというのがFortuneの見立てのようです。
日本でも少なくとも店舗数の削減や契約見直し、雇用調整といったリストラが今後増えていくと考えられるため、二社が何を残して何を清算したかに注目しておきたいと思います。

美容ブランドがテキストメッセージをマーケティングに取り入れ始めた理由

外出自粛によってタッチアップができず販売方法を見直さなければならなくなったビューティーブランドたちが、こぞってSMSの活用を見直しはじめているとのこと。日本の場合はLINE@の活用に注力し、コンテンツ戦略を見直すような感覚でしょうか。
特に面白かったのは、自社商品のページに飛ばすコンテンツよりもSpotifyで作ったオリジナルプレイリストなど商品とは直接関係のないリンクの方が20%もクリック率が高かったという話。
もちろんクリック率が高ければなんでもいいわけではありませんが、自社商品以外のコンテンツをときどきいれていくことが結果的にSMSの開封率やエンゲージメントを高めていくのかもしれないと思います。

フィンランド郵便が進化型宅配ロッカーを実験開始

フィンランドの郵便局「Posti」が、ECで買った商品を受け取るだけでなく試着もできる店舗をテストローンチ。「Box by Posti」と呼ばれるこの店舗は、従来型の宅配ロッカー機能を拡張し、新しい商品との出会いも期待できるとのこと。もはやこれこそが新しい時代の店舗のかたちとも言えるかもしれません。
日本では昨年ドンキホーテがユニックスという宅配ロッカー機能に無料のラウンジスペースがついたスペースを作っていましたが、1年ちょっとで終了となってしまったのを見ると単に受け取る場所があればいいわけではなく、あえてそこで受け取りたい理由も必要なのだろうか、という気もしつつ。
「Box by Posti」は店舗数さえ増やせれば今後レンタルサービスの流通を大きく変える可能性を秘めており、店舗の役割そのものが変わっていくのではないかと思います。

コロナはセレブ文化をどう変化させたか

コロナ禍によってセレブリティのSNS発信がどう変わったか?についての考察記事。ここ数年でInstagramの投稿がニュースになる機会も増え、結婚や妊娠・出産などの報告も第一報は本人のInstagramというケースも一般的になりました。現在は外出できない分、芸能ニュースもSNSでの発信を追うしかないという意味では、よくも悪くもちょっとした言動が注目の的になりやすく、小さな失言が普段以上に波紋を呼ぶ可能性を頭にいれておく必要があるように思います。
また経済的に苦しい人が多い今、セレブリティの視点から発信することで反感をうんでしまうリスクがある一方で、私たちと変わらない生活を見てもワクワクしないというジレンマもあり、芸能人のプロデュースやマネジメントも「SNS上でどう見せるか」にシフトしていくのだろうなと思います。

中国の景気回復は予想よりもスローペースとなる見込み

世界に先駆けて経済活動を再開させた中国ですが、ロックダウン解除後も消費者物価指数(CPI)、生産者物価指数(PPI)ともに4月の数値が3月より悪化しており、予想されていたよりも景気回復に時間がかかっているもよう。さらに中国の貿易売上の38%を占めるファッション系の工場は欧州のブランドが軒並み打撃を受けていることから回復まで時間がかかるともみれています。
中国の先行事例を見る限り、日本も無事6月に緊急事態宣言が解除されたとしても中国以上に景気回復に時間がかかる可能性が高く、小売業界は現在の苦境を「乗り越える」ことだけを考えていると危険なのではないかと考えさせられます。

「ドライブスルーピックアップ」は店舗再開の要となるか?

アメリカでは以前から「オンラインで買って店舗で受け取る」形式が広まりつつありましたが、ロックダウンの影響でドライブスルーのように店舗の近くで受け取る「curbside pickup」が急増。b8taも一部店舗で対応をはじめると発表しています。なおcurbside pickupの増加件数は昨年対比で208%。これまではスーパーやホームセンターなどの一部大企業が取り入れ始めた程度でしたが、店内での接客が難しいこともあって様々な業態で取り入れられはじめているようです。
一方で、商品をピックアップして運ぶコストや慣れない顧客のサポートなど課題も多いようです。
日本の場合はアメリカほど車社会ではないのでcurbside pickupに対応する必要はないと思いますが、事前にオーダーした商品を店舗で受け取る仕組みはショッピングモールや百貨店でも実装されていくべきだと思います。そのためにもオンラインとオフラインの在庫を結びつける必要があり、このコストが大きいためにこれまで話が進まなかった経緯がありますが、現在の状況下ではやらざるをえないはずなので、少しずつ活用も広がっていくのかなと思います。

パーパス・ドリブンな企業ほど経済危機に強い理由

コロナ禍において思想ドリブンなブランドが伸びる理由について考察した記事。以前の金融危機の際には、B corpを取得した企業はそうではない企業に比べて63%多く生き残ったという調査も興味深い。私利私欲ではなく「公益」に根差した目的を持つことが結果的に企業の強さを作るということなのかもしれません。
アメリカのD2Cは特に明確な理想や哲学を持ってものづくりをしているところが多いですが、明確なビジョンがあることでこうした危機に際してもそれぞれがすぐに決断することができ、時代にフィットさせる商品やキャンペーンを生み出せる点は大きなポイントだと思います。
変化に柔軟であるためには変わらない強い目的や思想を持ち、メンバーの一人一人が自分で動くことで早く正しい判断をすることが重要なのかもしれません。

Shopifyが目指すショッピングの未来とは

Shopifyが既存アプリをリニューアルしてリリースしたレコメンデーションアプリ「Shop」に関する考察。Shopifyで販売されている商品の中から購買履歴に応じておすすめする機能は便利に思えるものの、実はこの機能で成功しているところはまだなく、Amazonすらも苦戦しているという指摘は納得。
おすすめよりも、各ショップが出してるディスカウントコードをまとめてお知らせしたり、お店で商品やバーコードを読み取ったらShopify上で販売されているかが分かる機能が欲しいという提案もユニークです。今後はECプラットフォームもオムニチャネルへの対応が求められていきそうです。

コロナ禍は物流業界をどう変革させるか?

ロックダウンによってECの需要が高まった結果、物流も再編が求められているという話。特に店舗を「ミニ倉庫」とみなして物流を効率化させる考え方は、Nordstrom Localのような中小型店の出店増加とセットで検討するべき考え方だと思います。またこれまでは倉庫もファックスでのやりとりなどアナログなやり方でどうにか回せてしまっていましたが、小売店への納品とは異なり個人宅への小口配送の量が増えるとより効率化が求められるため、テクノロジーの導入も必要不可欠。
「大きな倉庫を西海岸と東海岸にひとつずつ」がセオリーだった10年前から状況が大きく変わり、いかにフレキシブルに小ロットの配送を実現するかがキーになっていきそうです。

ビジネスウェアブランドたちの新たな挑戦

世界的にリモートワークが推進されたことで J.CrewやBrooks Brothersのような通勤服を中心に扱ってきたブランドが軒並み大ダメージを受け、破産申請や売却プランがでていますがD2C系のオフィスカジュアルブランドは影響を受けつつもビデオ会議に対応したアイテムや動きやすい素材のスーツを投入することで新しい道を探っているようです。
特に興味深かったのは、「NYの基準だけでみてはいけない」ということ。東京も全体的にカジュアル化が進み、IT業界の人にいたっては一週間の中でスーツ姿を一度もみないケースも多いと思いますが、大手町や丸の内に行けばスーツの方が多いし、地方ではもっとコンサバだったりします。
また士業にいたってはビデオ会議だからといってTシャツやパーカーでは見た目の信頼度が落ちるため、「スーツほどかっちりしすぎないけれど相手に信頼感を与えるきちんと感のある服」が新しい需要としてでてきている気もします。

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価値の本質を見る

今週一番印象的だったのは、ビジネスウェアブランドの取り組みに関するレポート記事。

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