体温
バイトのあと、恋人に会いにいった。
約束の21時よりも早く着いて、百万遍の通りをぐるっと徘徊してご飯屋さんをさがした。
北白川方向へ歩いているとき、反対から来た恋人とエンカウントした。
あったかい和のものがたべたいと私が言ったので、彼は沖縄料理を出すちいさな居酒屋を選んでくれた。彼が緑茶ハイを、私が生ビールを頼んだけれども、逆に置かれた。おでんの盛り合わせと、ハマチのお刺身を食べた。沖縄のお好み焼きだというヒラヤーチーも。
さっき先輩方と飲んできたという彼はすこし酔っていて、自分はあまり手をつけず、いっぱい食べな、といって私がゆっくり噛むのをたまにながめた。
もうすぐ修論の時期だよね、と訊くと、彼は耳をふさぐ仕草をしてみせた。12月に会えるのはヘルシンキのライブとクリスマスくらいかな、と彼が呟いたので、え!クリスマス会ってくれるの??と言った。彼は笑って、やっぱり難しいかも…と返した。
彼の家まで一緒に歩いた。徒歩で行ける距離ではないと勝手に思っていたが、意外とすぐだった。
意味をなさない缶チューハイを買って、急いで飲んだ。それから長い時間、すがるように抱き締めて、彼の高い体温をじかに感じていた。
今日はすぐに眠った。
7時半に目覚めた。すやすやとうしろで寝ている彼の腕にくるまれながら、その規則正しい拍動を左耳で受けていた。
いつのまにか寝落ちていて、ちゃんと起きたのは9時だった。飲んだ次の日によくある水分不足の怠さを抱え、バスに乗って帰った。