毛布
バイト後、岡崎公園に自転車を停めて、蔦屋書店で暇を潰した。
『「利他」とは何か』という本を見つけ、でもそこでは買わずにネットで中古品を注文した。あまい香りのオードパルファムのテスターを、試すためではなく付けるために付けた。
15分遅れると言った恋人から、きっかり15分後に電話がかかってきて、蔦屋書店とファミリーマートのあいだで合流した。私が見慣れたせいか、彼は金髪が良く似合っていた。
ライトアップされた紅葉を見るため、永観堂に行った。
混雑しないように、拝観券はグループの代表者ひとりが購入してくださいと勧められていた。買ってきてくれる?とか俺の分も奢ってよ、とか茶化していたけれど、いざ受付に来ると彼はするっと私を先に行かせ、自分だけで列に並んでくれた。人に気を遣わせようとしないやさしさに感心した。
来場者は、許容できる範囲だったものの多かった。勉強で疲れているだろう彼をさらに人混みで疲れさせてしまうかと、すこし申し訳なくなった。
橋をわたると、一面にモミジを反射させる池が圧巻だった。あーこれは綺麗、と彼がつぶやいたので、今日はこの人にとってまったくの無駄にはならないのだと安堵した。仮に、私が紅葉を見たいと言ったから一緒に来てくれただけだとしても。
見終えてから、晩ご飯に台湾料理を食べにいった。彼は大盛の炒飯をたのんでいて、たぶんもっと早く食べられるのに、私のペースに合わせてゆっくりと口に運んでいた。
室内のあたたかさのせいか、あるいはビールを飲んだせいか、お互い眠くなってお店を出るのが億劫になった。しばらくして、「家に帰って寝ます」と目を細めた彼が言い、ああ今日はここでお別れか、と思った。
「さみしそうだね」
「長く一緒にいられるほど良いからね」
悲しい表情をしたつもりは無い。つまり彼は、さみしそうだねと決めつけてしまうことで私の感情を誘導している。そして私もそれに乗る。
「…汚いけどうち来る?」
私はうんと返した。
彼の家に着いて、すぐに順番にお風呂に入った。歯を磨いて、すぐに毛布をかぶって、ふたりで横になった。使い捨てのアイマスクをした彼はすぐに寝息を立て始めた。
厚い毛布と近くの体温とが心地よくて、ずっとこのままがいいと陳腐なことをおもった。同時に、眠ってしまった彼が早く目覚めてほしいともおもった。
中々寝付けず、寝てもへんな夢ばかり見た。