スープ
昨晩の仮眠はいつのまにか本眠にシフトしていて、だから部屋の電気はつけっぱなしだった。朝に人工的な明かりを浴びるのをなんだか不健康に感じて、珍しく8時に目覚めたのに気分はよくない。
昨日諦めたレポート課題を再開し、締切の30分前に提出した。
二限にすこし遅れて行った。アメリカ史の講義だが、背景説明がどれも理解しやすく腑に落ちるものなので、先生の教え方はかなり上手いと前々から思っている。私がいつも遅刻さえしなければ、もっとちゃんとした知識として吸収されているだろう。私がいつも遅刻さえしなければ。
昼休みにきのこのクリームスープを買った。そのおともに、『イン・ザ・スープ』という洋画を観始めた。
三限を受けたあと、自転車に乗りながらあおい快晴をみていた。清々しいけれども風がつめたかったので、今日の天気は80点だなあと偉そうに思った。
寮に帰り、二作の邦画の冒頭を再生した。しかしどちらもピンと来ず、飽き足りない気持ちをかかえたまま猫背でバイトに向かった。
まったくもってやる気の起きない日だった。気分が乗らなすぎて、上品な派遣社員さんに話しかけられ、彼女の髪がまあまあファンキーなパーマになったと気づいたときでさえ、それを褒めると話が長引くことが予想されるので敢えて指摘しないような始末だった。
かえりた〜い、かえりた〜い、と同僚が小声で歌った。…あったかい我が家が待っている。
「そんなCMありましたよね」
「アットホームっすか?」
「アットホームは賃貸だからあったかくないでしょ」
「賃貸でもあったかいかもしれませんよ」
そうかも、と返した。脳死で喋っていたが、文字にするととんでもない偏見である。訂正。
バイトを終えて帰宅し、ご飯を食べつつ『イン・ザ・スープ』の続きを観た。へんな映画だった。
大人たちが年甲斐も無くはしゃいだりダンスしたりするシーンは、やっぱり総じて好きだと認識した。近頃は湿っぽくて彩度のひくい邦画を観がちだけれど、人間賛美的ロマンを見せてくれるのが欧米の映画の良さだとも思った。
「人間を見下すな 非芸術的だ」という台詞など。
映画に関して言うと、私はわりとどの作品においても、鑑賞直後はめっちゃいい!と感動する。にもかかわらず、余韻や記憶が薄れていくと(映画の内容をあまり覚えていられないので早い段階で)、いやべつにそんなハマってないな、と我に返り、後になってこっそりFilmarksのスコアを0.5ずつ落としたりするのだ。
だから、内容を忘れてしまっても、肯定的な感情だけは頭に残っているものが、自分にとって良い映画なのだと思うようにしている。
映画にかぎらないか。