スウェーデン方言字母について
10月22日は方言の記念日である方言の日です。
今回はスウェーデン方言字母について取り上げます。
スウェーデン方言字母とは…
スウェーデン方言字母は北欧諸言語・方言を表記するために1878年に言語学者のヨアン・ルンデル博士(1851~1940)によって考案された拡張ラテン文字で、スウェーデン語では〈Landsmålsalfabetet〉[ランスモールスアルファベテット]と呼ばれ、Googleブックスにアーカイブがある著書『Det svenska landsmålsalfabetet』で確認できます。
スウェーデンの動物学者カルル・スンデヴァル博士が考案した音声記号をもとにっしています。
スウェーデン方言字母は“スウェーデン語方言字母”とも呼称されますが、実際はスウェーデン語以外の言語にも使用されていることから“語”を省略しています。
原則的にラテン文字の小文字のみ使用され、イタリック体で表記されます。
ローマン体でも表記される場合があり、スンデヴァル式音声記号では大文字も制定されていことから、固有名詞の表記などで稀に大文字が使用されます。
スウェーデンの漢語学者ベルンハルド・カールグレン博士は、北方官話の舌尖母音を示すために一部母音字を採用したり拡張字母を追加したり、のちに国際音声記号にいくつかの字母を加えた漢語学音声記号にも採用されました。
国際音声記号では1920年代の子音字追加で、スウェーデン方言字母に由来するそり舌音の字母が採用され、その後もレトロフレックスフックを加えた新規子音字や国際音声学協会未公認の各音声学者独自のレトロフレックスフック付き字母もユニコードに追加されました。
ユニコード/UCSでは、WG2 N3555でアイルランド・エヴァータイプ社のマイケル・エバーソン社長が、ドイツのチュートニスタ音声記号やi.t.a.とフランクリン文字といった英語の人工文字とセットで拡張ラテン文字追加草案が提示されたり、いくつかの字母がラテン文字拡張-Cなどに採用されました。
スウェーデン方言字母の各種字母
スウェーデン方言字母はスンデヴァル式発音記号から《ɑ/b/d/ɖ/e/ⱸ/f/g/h/k/l/ɭ/m/n/ŋ/ɳ/o/ø/ɷ/p/r/ꭋ/s/ʃ/t/ʈ/u/v/w/ӽ/y/z》などの各種イタリック体42字―実は『Kungliga Svenska vetenskapsakademiens handlingar』(※リンク先はインターネットアーカイブ内のアーカイブ)に記載されている《ɑ》のローマン体は《a》―を取り入れ《∂/ı》などを加えたものが基本字母とされていて、他にもラテン文字やギリシャ文字を加工した字形が取り入れられています。
ラテン文字A《a》がそのままの字形でイタリック体となることから、AE《æ》もアルファ《ɑ》とE《e》の合字と区別されることがあります。
ユニコード登録済みのスウェーデン方言字母
ユニコードに採用されているスウェーデン音声記号です。
発音は三省堂・刊『言語学大辞典⑹術語編』の【スウェーデン語方言字母】の項目を参考にしています。
【æ】ラテン文字AE[ɛ̞]
【ɑ】ラテン文字アルファ[a]
【ɒ】ターンドアルファ[ɐ]
【ꞛ】ヴォラピューク語AE[æ]
【ɖ】レトロフレックスフック付きD[ɖ]
【ⱸ】ノッチ付きE[e̞]
【ə】シュワー[ə]
【φ】ギリシャ文字ファイ[ɸ]
【ⱷ】テール無しファイ[〓]
【ɡ】スクリプトG[ɟ]
【ɣ】ラテン文字ガンマ[ɣ]
【ƕ】ホウェイル[ʍ]
【ı】ドット無しI[i]
【ȷ】ドット無しJ[ʝ ; j]
【ɯ】ターンドM[ʉ]
【ø】ストローク付きO[ø]
【ɷ】クローズドオメガ[u̞]
【ⱺ】下リングインサイド付きO[o̝]
【ɍ】ストローク付きR[ɹ]
【ⱹ】テール付きターンドR[l̥]
【ꭋ】スクリプトR[ʁ]
【ʂ】レトロフレックスフック付きS[ʂ]
【ʃ】エッシュ[ʃ]
【ʈ】レトロフレックスフック付きT[ʈ]
【þ】ソーン[θ]
【ӽ】フック付きX[ç] - キリル文字の同型字で代用。
長音及び促音など重子音は下マクロン《ˍ》, 短音は下インバーテッドブリーブを付加して《ɑ̱》[aː アー]や《ı̯》[i̯ ィ]のように示します。
下マクロン付き字母
ユニコードに採用されている下マクロン付き字母です。
【ḇ】[bː ッブ]
【ḏ】[dː ッド]
【ḵ】[kː ック]
【ḻ】[lː ッル]
【ṉ】[nː ンヌ]
【ṟ】[rː ッル]
【ṯ】[tː ット]
【ẕ】[zː ッズ]