ハンガリー語ラテン文字とロヴァーシュ文字による日本語表記
11月13日はハンガリー語の日🇭🇺です。
ハンガリー語の古代文字であるロヴァーシュ文字はルーン系文字で、アラビア文字やヘブライ文字のように右から左に表記されます。
ロヴァーシュ文字はラテン文字のように大小文字の別が存在し、現代ハンガリー語に合わせた表記法も存在しています。
今回はハンガリー語ラテン文字とロヴァーシュ文字による日本語翻字を取り上げます。
ハンガリー式日本語ローマ字とロヴァーシュ文字表記
ハンガリー語による日本語由来の固有名詞表記は、長音記号《ˊ》も含めた表記になっています。
ロヴァーシュ文字表記における撥音《ン》を含んだ二重子音字も含みます。
ハンガリー語版ウィキペディアの【Japán nyelv】の項目内でハンガリー式日本語ローマ字が記載されています。
【A・a《𐲀 𐳀》】ア[ɒ, a] - 本来は英語のイギリス標準発音における短音《O》[ɒ オ]と同じ発音。
【Á・á《𐲁 𐳁》】アー・アア[aː]
【I・i《𐲐 𐳐》】イ[i]
【Í・í《𐲑 𐳑》】イー・イイ[iː]
【U・u《𐲪 𐳪》】ウ[u] - 日本語標準語のウ音は[ɯ]。
【Ú・ú《𐲫 𐳫》】ウー・ウウ[uː]
【E・e《𐲉 𐳉》】エ[ɛ] - エ段はハンガリー語現行正書法に合わせてこの字母で表記。
【Ë・ë《𐲊 𐳊》】エ[e] - 本来の日本語のエ音。ハンガリー式日本語ローマ字に合わせて、前述の《𐲉》に置き換えられる。
【É・é《𐲋 𐳋》】エー・エエ・エイ[eː]
【O・o《𐲛 𐳛》】オ・(助詞の)ヲ[o]
【Ó・ó《𐲜 𐳜》】オー・オオ・オウ[oː]
【K・k《𐲓 𐳓》】カ行[k] - 他にカ行字母はアク《𐲔 𐳔》があるが、現行表記法ではエクにほぼ統一されている。
〖KJ・Kj・kj《𐲓𐲒 𐲓𐳒 𐳓𐳒》〗キャ行[kj] - ハンガリー語TY《𐲨 𐳨》[c チュ]はトルコ語の発音カナ表記ではキャ行になるが、ハンガリー語のカナ表記では〈チャ行〉で表記するルールとなっている。
〖KV・Kv・kv《𐲓𐲮 𐲓𐳮 𐳓𐳮》〗クァ行[kv クヴ] - 沖縄語由来の日本語単語“シークヮーサー”のロヴァーシュ文字翻字は〈𐲤𐳑𐳓𐳮𐳁𐳥𐳁〉/síkvászá/[シークヴァーサー]となる。
【G・g《𐲍 𐳍》】ガ行[ɡ]
〖GJ・Gj・gj《𐲍𐲒 𐲍𐳒 𐳍𐳒》〗ギャ行[ɡj] - ハンガリー語GY《𐲎 𐳎》[ɟ ヂュ]はトルコ語の発音カナ表記ではギャ行になるが、ハンガリー語のカナ翻字表記では〈ジャ行〉で表記するルールとなっている。
〖GV・Gv・gv《𐲓𐲮 𐲓𐳮 𐳓𐳮》〗グァ行[ɡv グヴ]
【SZ・Sz・sz《𐲥 𐳥》】サ行[s]
【S・s《𐲤 𐳤》】シャ行[ʃ] - シの〈SI〉は訓令式ローマ字と共通の綴り。
【DZ・Dz・dz《𐲇𐲯 𐲇𐳯 𐳇𐳯》】ザ行・ヅァ行[ʣ] - ユニコードではラテン文字連字《DZ・Dz・dz》が存在。ハンガリー式日本語ローマ字では原則的にザ行の表記に当てられる。
【Z・z《𐲯 𐳯》】ザ行(語中)[z]
【ZS・Zs・zs《𐲰 𐳰》】ジャ行(語中)[ʒ]
【T・t《𐲦 𐳦》】タ行[t]
【CZ・Cz・cz《𐲆 𐳆》】チャ行[ʧ]
【C・c《𐲄 𐳄》】ツァ行[ʦ]
【D・d《𐲇 𐳇》】ダ行[d]
【DZS・Dzs・Dzs《𐲇𐲰 𐲇𐳰 𐳇𐳰》】ヂャ行・ジャ行[ʤ]
【N・n《𐲙 𐳙》】ナ行[n]・ン[-n] - 本来の日本語における語末音は[ɴ]。
【NY・Ny・ny《𐲚 𐳚》】ニャ行[ɲ] - ハンガリー式ローマ字表記ではナ行のみイプシロン《Y》で拗音を示す。
【H・h《𐲏 𐳏》】ハ行[h]
〖HJ・Hj・hj《𐲏𐲒 𐲏𐳒 𐳏𐳒》〗ヒャ行[hj] - 日本語本来のヒャ行音は[ç]。
【F・f《𐲌 𐳌》】ファ行[f] - 日本語本来のファ行音は[ɸ]。
【B・b《𐲂 𐳂》】バ行[b]
【P・p《𐲠 𐳠》】パ行[p]
【M・m《𐲘 𐳘》】マ行[m]
【J・j《𐲒 𐳒》】ヤ行・拗音[j] - 同じくヤ行音で発音される字母はLY《𐲗 𐳗》[j ィ]があり、本来は[ʎ リュ]音だった。
【R・r《𐲢 𐳢》】ラ行[r] - 日本語本来のラ行音は、語頭は[ɺ]で語中は[ɾ]。
【R・r《𐲣 𐳣》】ラ行[r] - 語中における略字表記。
【L・l《𐲖 𐳖》】ラ行[l] - 外来語表記用。
【V・v《𐲮 𐳮》】ワ行・ヴァ行[v]
【NK・Nk・nk《𐲕 𐳕》】ンカ行[ŋk]
〖NG・Ng・ng《𐲙𐲍 𐲙𐳍 𐳙𐳍》〗ンガ行[ŋɡ]・カ゚行[ŋ] - 語中の鼻濁音は日本語ローマ字同様《G》で示す。
【NT・Nt・nt《𐲧 𐳧》】ンタ行[nt]
【NC・Nc・nc《𐲅 𐳅》】ンツァ行[nʦ]
【ND・Nd・nd《𐲈 𐳈》】ンダ行[nd]
【MB・Mb・mb《𐲃 𐳃》】ンバ行[mb]
【MP・Mp・mp《𐲡 𐳡》】ンパ行[mp]
〖NJ・nj《𐲙𐲒 𐳙𐳒》〗ンヤ行[-n.j-] - ニャ行音は常に〈NY〉で表記されることから、ンとヤ行音を分けるためにアポストロフィ無しで〈NJ〉と表記される。ユニコードではラテン文字連字《NJ・Nj・nj》が存在。
〖SSZ・ssz《𐲥𐲥 𐳥𐳥》〗ッサ[ss]
〖SS・ss《𐲤𐲤 𐳤𐳤》〗ッシャ[ʃʃ]
〖DDZ・ddz《𐲇𐲯𐲇𐲯 𐳇𐳯𐳇𐳯》〗ッザ[ʣː]
〖DDZS・ddzs《𐲇𐲰𐲇𐲰 𐳇𐳰𐳇𐳰》〗ッジャ[ʤː]
〖CCZ・ccz《𐲆𐲆 𐳆𐳆》〗ッチャ[ʧː]
〖NNY・nny《𐲚𐲚 𐳚𐳚》〗ンニャ[ɲɲ]
ZWJ合成が必須となるロヴァーシュ字母
ユニコードのロヴァーシュ文字ブロックでは、外来語表記用などのハンガリー語ラテン文字に対応する字母を表記するためにZWJ合成が必須となり、対応フォントが少なく、且つ複雑であることから拡張ロヴァーシュ文字の追加要望の声が挙がっている状況です。
【DZS・Dzs・dzs《𐲇𐲰 𐳇𐳰》】ジャ行・ヂャ行[ʤ]
【DZ・Dz・dz《𐲇𐲯 𐳇𐳯》】ザ行・ヅァ行[ʣ] - ロヴァーシュ文字による日本語表記に用いる合字。
【Y・y《𐲐𐲒 𐳐𐳒》】ヤ行[j] - ロヴァーシュ文字表記のラテン文字翻字は《IJ・Ij・ij》で、連字《IJ・ij》 が存在。ラテン文字表記は固有名詞のみに用い、通常は連字にのみ使用。
【W・w《𐲮𐲮 𐳮𐳮》】ワ行[v] - ロヴァーシュ文字表記のラテン文字翻字は《VV・Vv・vv》。
ハンガリー数字
1・5・10はローマ数字に形状が似ているのですが、50以降は異なる表記となります。0に該当する数字は無いようです。右から左へ書かれます。
6は〈Ⅳ〉, 7は〈ⅡⅤ〉, 11は〈Ⅸ〉―ローマ数字に置き換えた表記で、本来のロヴァーシュ文字表記は下記の一覧参照―のように配置されます。
【1・Ⅰ《𐳺》】一
【2・Ⅱ〈𐳺𐳺〉】二
【3・Ⅲ〈𐳺𐳺𐳺〉】三
【4・Ⅳ〈𐳺𐳺𐳺𐳺〉】四
【5・Ⅴ《𐳻》】五
【6・Ⅵ〈𐳻𐳺〉】六
【7・Ⅶ〈𐳻𐳺𐳺〉】七
【8・Ⅷ〈𐳻𐳺𐳺𐳺〉】八
【9・Ⅸ〈𐳻𐳺𐳺𐳺𐳺〉】九
【10・Ⅹ《𐳼》】十
【11・Ⅺ〈𐳼𐳺〉】十一
【12・Ⅻ〈𐳼𐳺𐳺〉】十二
【50・Ⅼ《𐳽》】五十
【100・Ⅽ《𐳾》】百
【500・Ⅾ《〓》】五百 - ユニコード未登録。
【1000・Ⅿ《𐳿》】千
句読点類
ロヴァーシュ文字表記の現代ハンガリー語では右から左は書かれる関係から、左右逆の欧文句読点類が使用されます。
ピリオド《.》やコロン《:》, 感嘆符《!》, ハイフン《-》, 括弧類は両文字体系で共通となっていますが、本来は左から右の句読点類なので、入力が結構難しいです。
ネット上でのラテン文字とロヴァーシュ文字の混合表記では、ブラウザで未対応の場合はレイアウトが崩れる場合があるようです。
【,《⹁》】カンマ
【;《⁏》】セミコロン
【?《⸮》】疑問符 - アラビア文字用は《؟》。
【„《⹂》】開き引用符 - ハンガリー語の日を意味する A Magyar nyelv napja [ア・マヂャルニェルヴ・ナピャ] はラテン文字表記では„A Magyar nyelv napja”と囲む。
【‚《⹁》】開きシングル引用符
【”《‟》】閉じ引用符
【’《‛》】閉じシングル引用符
【ʼ《ʽ》】アポストロフ - 日本語翻字で"ンオウ"は〈NʼÓ〉となるが"ンヨウ"は〈NJÓ〉とアポストロフィが付加されないのは、"ニョウ"は〈NYÓ〉と表記するルールとなっているためである。ネット上でのロヴァーシュ文字表示では本来の綴り通りに表示できないので、表示方法を工夫しなければならない。