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ユニフォン文字について

4月29日はフォニックスの日です。
今回は英語の人工文字で、アメリカの各民族の言語で使用されるユニフォン文字について取り上げます。

ユニフォン文字とは

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ユニフォン文字は1950年代にアメリカのジョン・A・マロン博士が作成した英語の人工文字で、拡張ラテン文字の一種です。
英語版ウィキペディア内の解説 👉 https://en.wikipedia.org/wiki/Unifon
原則的にリス語のフレイザー文字と同じく大文字のみで表記されますが、小文字としてスモールキャピタルが使用される場合があります。

ユニフォン文字はフパ語・ユロック語・トロワ語・カロック語などといったアメリカの各民族の言語に使用されていることから、ユニコードコンソーシアムで追加申請が数回行われました。

ユニコードにスモールキャピタルIɪ》の大文字《》が採用された際に、ユニフォン文字の字母の一種と認定されたことから、今後のユニコード追加で拡張ラテン文字の字母として扱われる可能性が大きいです。

ユニフォン文字の字母

ユニコードに採用されていない字母は、ユニコードの私用領域PUAに配置された人工文字の外字共通コードであるUCSUR準拠のにしき的フォントのコードポイントで示しています。

ユニコードコンソーシアムの追加申請L2-12/138ではラテン文字に合わせたユニフォン文字の小文字も申請されましたが、UCSURではスモールキャップと統合されています。ユニフォン文字の小文字はユニコードで表記可能な字母を併記しています。
日本語による字母名は日本語の発音に近いものと併記しています。

ADDA・ᴀa》】アッド[æ エァ]
ALEΔ・{U+E701}】エイル⬅エール[eɪ エイ]
ALLɅ・ᴧʌ》】オール[ɔː オー]
BANB・ʙb》】バン[b ブ]
CHUMȻ・{U+E704}ȼ》】チャム[ʧ チ]
DIGD・ᴅd》】ディッグ[d ド/-ɾ- ル]
EVERYE・ᴇe》】エヴリ⬅エブリ[e~ɛ エ/ə ウ]
EVIL{U+E747}・{U+E707}】イーヴル⬅イーブル[iː イー]
HER{U+E748}・{U+E708}ɚ》】ハー[ɝː~ɚː アー/ɚ ア] - 大文字はターンドE《Ǝ》とアール《R》の合字、すなわち左右逆のYAE《Ԙ》。
FLYF・ꜰf》】フライ[f ふ]
GOG・ɢg》】ゴウ⬅ゴー[ɡ グ]
HOMEH・ʜh》】ホーム[h ハ]
ITꞮ・ɪɪ》】イット[ɪ イ] - Noto SansフォントではスモールキャップIの大文字であるU+A7AE《》は通常のラテン字母アイ《I》とほぼ同型。
ICE{U+E74D}・{U+E70D}】アイス[iː イー]
JAMJ・ᴊj》】ヂャム⬅ジャム[ʤ ヂ] - 本来の字形は異なる。
KISSK・ᴋk》】キッス[k ク]
LIEL・ʟl》】ライ[l る/-ɫ ゥ]
MYM・ᴍm》】マイ[m ム]
NON・ɴn》】ノウ⬅ノー[n ヌ・ン]
SING{U+E753}・{U+E713}】スィング[ŋ ング] - 大文字はエング《Ŋ》の異体字のひとつ。
GOTO・ᴏo》】ゴット[ɑː アー/ɑ ア/ɒ~ɔ オ] - 長短は区別されない。
OVER{U+E755}・{U+E715}】オウヴァー⬅オーバー[oʊ オウ/əʊ オウまたはエウ]
BOOK{U+E756}・{U+E716}】ブック[ʊ ウ] - デセレット文字ロングOO𐐅・𐐭》と同型だが、発音が異なる。
NOW{U+E757}・{U+E717}】ナウ[aʊ アウ]
TOY{U+E758}・{U+E718}】トイ[ɔɪ オイ]
PUNP・ᴘp》】パン[p プ]
RUNR・ʀr》】ラン[ɹ ル/-ɚ ア/◌˞ ー]
SUNS・ꜱs》】サン[s ス]
SHUNꞨ・{U+E71C}》】シャン[ʃ シュ] - 本来の斜めストロークの配置は異なる。
TONT・ᴛs》】トン[t ト/-ɾ- ル]
THEЋ・{U+E71E}】ジー[ð ず] - 大文字はキリル文字の同型字で代替可能。
THING{U+E75F}・{U+E71F}】シング[θ す]
UPU・ᴜu》】アップ[ʌ ア/ə アまたはエ]
DO{U+E761}・{U+E721}】ドゥー[uː ウー]
YOU{U+E762}・{U+E722}】ユー[juː ユー]
VERYV・ᴠv》】ヴェリー⬅ベリー[v ヴ]
WITW・ᴡw》】ウィット[w ゥ] - 本来の字形は異なる。
VISION{U+E765}・{U+E725}】ヴィジョン⬅ビジョン[ʒ ジュ]
YESY・ʏy》】イェス[j ィ]
ZEBRAƵ・{U+E727}ƶ》】ズィーブラ⬅ゼブラ[z ズ] - かつてアゼルバイジャン語などで使用されていたヤナリフの字母のひとつで、日本の男性芸人の〈KAƵMA〉さんの表記に用いられる。

拡張ユニフォン文字

過去に使用されていた字母やアメリカ先住民諸言語用の拡張字母です。

CHILLC・ᴄc》】チル[ʧ チ/s ス] - 言語によって発音が異なる。
CELLↃ・ᴐ》】セル[s ス/ʧ チ] - 言語によって発音が異なる。
BURƎ・ⱻǝ》】バー[ɚː アー/ɚ ア] - ユロック語用。1980年代のユニフォン文字正書法では曖昧母音を示す字母として使用されていた。
BIT{U+E733}・{U+E6F3}】ビット[ɪ イ]
BITE{U+E734}・{U+E6F4}】バイト[aɪ アイ]
LIE WITH STROKEȽ・{U+E6F5}ƚ》】ストローク付きライ[ɬ ルまたはス] - 異体字は《Ł・ᴌ・ł》。
BOY{U+E756}・{U+E6F6}】ボイ⬅ボーイ[ɔɪ オイ]
THEREꞱ・{U+E6F7}ʇ》】ゼア[ð ず]
THIRSTƟ・{U+E6F8}ɵ》】サースト[θ す] - カロック語用。
TLO{U+E739}・{U+E6F9}】トロウ⬅トロー[tɬトル/eɪ エィ] - 言語によって発音が異なる。
KHAH{U+E73A}・{U+E6FA}】ハー[juː ユー]
EWEX・{U+E6FB}x》】ユー[x ハ] - UCSURでは前述の字母名が本来のこの字母名のものとなっている。ユニコードの基本ラテン文字で唯一スモールキャップが採用されていない。
CHAYЧ・{U+E6FC}ч》】チェイ⬅チェー[ʧ チ] - チワン語ラテン文字同様、キリル文字の同型字母と統合。
ZHAY{U+E73D}・{U+E6FD}】ジェイ⬅ジェー[ʒ ジュ]
OUTØ・{U+E6FE}ø》】アウト[aʊ アウ]
JAY{U+E73F}・{U+E6FF}】ヂェイ⬅ジェイ[ʤ ヂ]
HAHH̄・{U+E72C}】ハー[不詳]
KAHK̄・{U+E72D}】カー[不詳]
GHAHX̄・{U+E72E}】ガー[ɣ グ]
XAHX̱・{U+E72F}】ザー[不詳]

主な連字

ユニコードで表記可能なものを示しています。
本来の英文で子音字の2連続は、本来の発音に合わせて1文字で表記されます。

・ALL【ɅL・ᴧʟ】オール[ɔːl]
・ON【ɅN・ᴧɴ】アン[ɑn]またはオン[ɒn/ɔn]
・OR【ɅR・ᴧʀ】オー[ɔ˞ː/ɔː]またはオア[ɔɚ]
・-DS【-DƵ】ヅ[ʣ]
・-EN【-EN・-ᴇɴ】ゥン[-n̩/-ən] - 例外的な綴り。
・AIR【ER・ᴇʀ】エア[ɛɚ]
・ER【ƎR・ⱻʀ】アー[ɝː~ɚː/ɜː~əː]またはアァ[-ɚ/-ə] - 連字によるユニフォン文字HERの代替表記。
・GU-【GW-・ɢᴡ-】グヮ[ɡw-]
・-X-【-GƵ-】グズ[-ɡz-]
・WH-【HW-・ʜᴡ-】ホヮ[ʍ-]
・-ED【-ꞮD・-ɪᴅ】ィッド[-ɪd]
・EAR, EER【ꞮR・ɪʀ】イア[ɪə]
・X, -CS【KS・ᴋꜱ】クス[ks]
・QU-【KW-・ᴋᴡ-】クヮ[kw-]
・AR【OR・ᴏʀ】アー[ɑ˞ː/ɑː]
・TS【TS・ᴛꜱ】ツ[ʦ]
・-TLE【-TUL・-ᴛᴜʟ】タル[-təl]またはロゥ[-ɾɫ̩]
・THE【ЋU】ザ[ðə]
・-LE【-UL・-ᴜʟ】アル[-əl]
・-OM【-UM・-ᴜᴍ】アム[-əm]
・-ON【-UN・-ᴜɴ】アン[-ən]