空気を読めないラジオ
前田は、恋愛の真っ最中。
海で出会った女性と付き合っているそうだ。
「モデルみたいなスタイルでね、出るとこはボンボン!って出ててさ。たまんないんだよ」
同種の自慢を飲みに行くたびに聞く。
ここ数日秋風っぽくなってきた。
温暖化だかヒートアイランドか知らないけれど、夜はエアコンなしで寝られなかった夜ともそろそろおさらば。
そんなある日。
「最近彼女の反応がよくないんだよ。メールの返事とか遅いし、帰ってこなかったり。ちっとも既読にならなかったり」
「まあ、彼女だって働いてるんだろ。忙しいんじゃないのか。そんな細かいこと言ってると嫌われるぞ。どうだ気晴らしに飲みに行くか」
「それもいいな、行くか!」
会社前に止まっていたタクシーに乗り込んで経緯を告げる。
「どのくらい付き合ってる?」
「3ヶ月くらいかなあ」
「まだまだこれからだな」
「おお。まだキス止まりだよ」
「まだ、って。意外と手が早いな」
そんな時、ラジオから聞こえてくる歌....
黙り込むふたり。
夏の恋はまぼろし
ウソじゃないさ うぶじゃないさ
夏の女はまやかし
季節替わりはちょっとね 身もだえる🎵
空気読めよな、ラジオ。
ここは「あぁ夏休み」を流すところだろうに。