![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/106854863/rectangle_large_type_2_bc96aed19e66e7318945447c221a33e3.png?width=1200)
Photo by
morinokujira
つゆ空に揺れる雨傘
もう一生会わないんだろうな、って思った。
あたしから言い出したらお別れなのに、そんな感傷が胸に広がる。
これは後悔なのかな。
彼があたしの心をしっかりと掴んでいてくれる間は、強い雨も強風も平気だったよ。
彼を守ってあげられた。
それがあたしの役目だと思ってたし。
知らず知らずのうちに彼の手の力が弱くなって、わたしは風に飛ばされた。
公園の植え込みに逆さまに落ちたあたしに雨水がたまっていく。
傍らにたたずんで、じっと見つめる彼。
なぜ、すぐ拾い上げてくれないの?
雨はずっと降り続くかもしれないのに。
誤解されたくないのは、彼はあたしを大切にしてくれたとっても優しい人だってこと。
わたしが転んで骨を折った時も仕事終わりに顔に見にきてくれた。
だから彼の悪口は言わないで欲しい。
言っていいのはあたしだけ。
心の底から愛してた。
別れたくないけれど、あたしはもう彼の心を見失った。
彼にもあたしが見えていない。
これ以上一緒にいたら、不幸になるだけだと思う。
だから涙をこらえて言いだした別れ。
彼と死ぬまで一緒にいたかったのに。
彼との別れを決めて、誰にも聞こえない大声で泣く。
さようなら。
生まれ変わったらぜったい傘なんかに生まれない!
そしてまたあなたと出会いたい。