元ずっと真夜中でいいのに。大ファンの個人的TOP3曲
音楽好きを名乗るにはまだまだだが、音楽が好き!と大声で言いたいオタクのあまりです。僕の音楽の出会いはずっと真夜中でいいのに。でした。このアーティストがなければ僕は今も音楽なんてましてやバンドなぞ全く聞かなかったでしょう。恐ろしい…
中学生というのは流行りに敏感ながら、それに少し歯向かってみたい生き物だと思います。そんな生き物だった僕が出会ったずとまよは「聞き飽きたフレーズを使わない、不思議な感覚に陥らせてくれるアーティストだ…」と運命の出会いだと思いました。コロナ禍、休校中の僕の部屋のBGMはずとまよで埋め尽くされてました…自分語りはさておき、個人的TOP3を選ぶのですが…
選べない!!!!!!
ほんとに苦しいです。どの曲も同じくらい好きなので。高校2年生の冬頃くらいにはずとまよから離れ、邦ロックに夢中になり、大学生になり、洋楽に触れたり、実験的なポストロック(かっこつけたいだけ)など様々な音楽ジャンルに出会ったり、今に至ります。いろんな音楽を知った(まだまだですが)今だからこそ、どの曲が微妙か、完璧かのような善し悪しがわかるかと思いきや思い出補正もあり全く選べれない…
選ぶ基準
歌詞、曲調、ライブでの化け方、どのジャンルに組み込まれるか、などなど様々なことを考慮して決めます。音楽ジャンルに関しては定義に当てはまらない場合があり、間違った認識をしていたらごめんなさい!!
それでは…
第三位 奥底に眠るルーツ
ずとまよは「生活」に寄り添った曲がなにかと多い気がします。それはACAね自身の生活でもあり、僕たちリスナーの生活でもあります。若干生活でのめんどっちい人間関係を愚痴った歌詞だけど私はこんな風でいてやる!という決意表明の意味を込めた居眠り遠征隊だったり、恋人同士の生活を歌った違う曲にしようよ、そのもつれを歌うばかじゃないのになどなど。
そんな中これはACAね自身の最近(2021年時点)での思いを赤裸々に述べた歌だと思う。またリスナーに共感性を持たせる箇所のリリックだがそこの解像度がとても高い。いくらワクチンがそろえど感染の恐怖がまだ残り、ライブも懸念されるコロナ禍でファンとの遠く近い距離についての思いもある。ぐされアルバムの最後の曲(実際は暗く黒くのツインピアノだがそれは加味しないとする)であり、アルバムラストの曲というのはいわばエピローグに近いものだ。そこでどう、うまくアルバムを終結できるかはアーティストの技量やセンスが関わってくる。そこで今の生活、私はこんな感じだよ、皆に会いたいね。。というエピローグではなく あとがきという形の曲で締めたのだ。あとがきは筆者のその本に対しての思いだったりただの自分の生活のことだったりその形は様々だ。だからこそ人間味が味わえるので読む人も多いだろう。そのあとがきが僕はこの曲だと思う
「僕の奥底に眠るルーツ 見せびらかし隊
とりあえずでいいので 生きた証残し隊」
隊という表現の秀逸さ
見せびらかしたい 生きた証残したいという欲望だと、アーティスト個人の悩み、病みになる。それを隊にすることで
「自分を形あるものとしてありたい、アイデンティティが欲しい」という将来が不安な若者たち=生きた証残し隊 と解釈できる。そこで既に共感を産んでいる。
「今日は少しだけ早めにお風呂に入ろ。夕暮れが青くなる前に
今日を少しだけ良い気分にさせたくて。すべてじゃなくても唯一
何かを越えなくても今日は 染まってく。」
生活への態度の最適解
これが三位に踏み込んだおもな理由です。ずとまよの歌詞といえば
暗号のようで、一回きり聞いただけではそのメッセージ性や何を伝えたいかわかりません。もちろん、紐解いていくとその隠されたものがとてつもない意味を持っていますよね。だけどそんなスタンスのずとまよに こんな分かりやすく、そしてこうでありたいと思える正直な歌詞も書けるの、すごくないですか?これは神聖かまってちゃんを聞いているとこも同じことを思います。悲しい顔を君には見せたいと思います/美ちなる方へ や 正直に息できる朝五時が気持ちいい/僕は頑張るよっ これと同じ感覚。歌詞が複雑だったり、不思議な感覚に陥ったりするアーティストが不意に見せる、「現実の生活で味わえる安心」の解像度って高すぎて苦しくなるんですよね。
何も成長しなかった、何も成し遂げれなかった、むしろ失敗や悲しいことがあって落ち込む夕方。早めのお風呂でさっぱりして全部洗い流したくなるときはだれしもあると思います。でもそれってものすごく気づきにくい。だって早めのお風呂に入ることは珍しいことじゃないし。その何気ない行動に「すべてじゃなくてもいいから一つだけでも良い気分になるようなことしよう」って理由づけてくれるのもすごく良い。
この曲のルーツは「上を向いて歩こう」なのでは?
書いてるうちに感じた。この曲、上を向いて歩こうとどことなく曲の雰囲気が似ている。イントロの柔らかさ、歌詞の共通性(生活するうえで辛いときどうしようだとか、辛かったらこうしていこうという 自分自身への言い聞かせっぽく感じれる)、そしてアウトロが口笛でどちらも終わっている。まあ、こじつけは良くないので話を戻そう…
「またどうにか ヒトに会いたい」からの 「またいつかは キミに会いたい」の変化
ここの変化すごくエモーショナルだと思うんです。だれしもコロナのせいで人っ子一人会えないことを強いられ、寂しくなってしまう。それがAメロの情景だと思います。そしてBメロ「独りぼっちがしっくりくる季節も永くはなくて」、つまりコロナが少し収束し生活が始まる中、次にこう思います。
「あなた」に会いたい。やっと面と向かって会えるようになった今、会いたいのはあなただよ。というヒトに会いたいという気持ちに隠された本当の気持ちは
あなたに会いたい。ということ。と僕は読み取りました。勝手な解釈極まりないですが幅広い解釈ができる曲は名曲だと思います。ただ一つのターゲット層に絞るとそのターゲットたちにとって共感性があったとしてもそうでない人は分からなかったり、共感できなかったりしてします。でもその分誰にでもどうとでも解釈できる曲というその壮大さ、漠然な範囲の広さゆえにとても難しいと思います。ずとまよはわりと前者の傾向にあります。それは悪いことではありません。でもそんなずとまよがこんな「コロナ禍とその後の生活」という漠然としたテーマを自粛期間を経て見出した曲なのかなとぼくは思います。アルバムの順番的にも、この曲の纏う普段のずとまよとは違うACAねとしての赤裸々な生活の思いというメッセージ性があることなどから三位にしました。すごく迷いました。どれも十二分に一位にしてもよい曲なので...
第二位 正義
ライブ化けがとにかくすごい曲。入りのリコーダーがどことなく幼さを感じる僕がこの曲を二位にランクインさせたのは今自分がいる環境と重ね、投影し思わず涙を流したからだ。僕のこのランキングが数週間後には変わっているかもしれない。音楽とはそういうものだ。これ以上の曲はないと思った数時間後、あるいは数十年後、必ず超えるものが現れるものだ。ま、今この瞬間の僕のランキングなのでそこは気にしないでおこう。
大切な人とのもどかしさ、そして後悔の歌。
「そっと芽を合わせて仕舞えば仕舞うほど花びら散って」
目と芽 しまうと仕舞う ずとまよ特有のダブルミーニングだ。ダブルミーニングを歌詞で用いるのはとても難しい。一歩間違えれば歌詞が支離滅裂、だじゃれみたいで滑稽な歌詞ともとれちゃう。どう二つの意味の整合性を付けるか、そしてそれをいかに端的に、リスナーが読み取れるようにするか
難易度が高い。素人があこがれてやると怪我をする(経験者)
しかし目を合わせることの恥ずかしさと芽が育ち、咲いていく過程を「仕舞う」の三文字でまとめること。たった一行にACAねの作詞センスがにじみ出ている。またMVを見ていると「親子」という近くて遠い共同体をテーマにしている。僕が気を付けていることはあまりにMVを曲と重ねるとその描写が曲の最適解に見えてしまい、自分の中で生まれた解釈は違うと見なしてしまいそうなので気を付けている。ただずとまよ自体、MVとセットなところがあるので悩ましいが…
「今日は僕と君に近づきたいから」
これおかしなところがあって、なぜ「僕と」という要素があるのでしょう。君に近づきたい だけでも伝わります。
1,手を振る今日が 僕と君に近づいていること
2,今日 僕は君に近づきたいということ
両方考えれます。1は さらに前に「ただ体育座りして抗ってる君と並んで」ということからキミは今日という日が来てほしくないように思えます。
私の父は二週間前ほど、世を旅立ちました。その数日前の気持ちと似ています。
今日なんて来てしまったらあなたが死ぬかもしれないから抗っている。でも体育座りという何の作用も及ぼさない行動、つまりその無力さを纏い、容赦なくこっちの気持ちも知らずなれなれしく手を振るようにすぐ今日が来ること。そう思いました。人の死は音楽すらも客観的に聞けなくなるから嫌いです。でもどうしても照らし合わせてしまうのです。これは曲のランキング付をする上でちゃんとした評価にならないとわかってます。しかしこの曲の意味がもし、別れを意味していると私は思い、二位に入れました。
この曲の歌詞はとにかく死が近い人、あるいはもう旅立った人と残された人の後悔や切なさを味わった人にわかる苦しさを表現している気がします。
「深い昼寝の温度に慣れてくの?」 ずっと病院のベッドで眠るあなたに問いかけた僕。
「ただ思い出して 終わらないで 抱きしめたいように たやすい笑みじゃまとめきれぬほどに」 あんなこともあったねって半ば無理矢理の笑みじゃ済ませれない 大切な記憶
「出遅れた言葉誓って 冷めた皮膚だけ継ぎ足して 生かされてた浅い声の正義であるように」あなたの死に目に会えず、伝えたかったことを冷たくなった意思も魂もない体に言いたかったことを今さら言う僕。
すべてのワンフレーズ、ワンフレーズが僕や父に投影してしまうのです。きりがないのでこの辺にしますが。ここまで旅立たれ、残された側の心理描写がうまいのはACAねさん自身がそれを経験したからなのかなとも思います。
ライブ化けがすごい
こんな切ないリリックなのにライブ化けがすごいんです。最初のリコーダーアレンジがすごく好きツアーによって別の曲をリコーダーで吹いたり、いつはじめるんだ?と思ったらやり直すんかい!みたいなひと悶着があったり。あと始まる瞬間にすべての楽器が幕を開けるように奏でられて歌いだすのがあまりにもいい。そしてサビの爆発力。「まとめきれぬほどに」のきれぬほどにの部分の楽器の一体感が好き。そして「近づいて 遠のいてめぐりあってみたんだ」のコールアンドレスポンスも最高。ラスサビ前の一瞬の静寂、からの切なく響く弦楽器の音、そしてACAねの叫び!この流れがあまりに美しくて、楽しすぎる。全国各地によって叫ぶことが変わるのもよい。あとACAねの最後の「近づいて...」の部分を思いっきしアレンジするとこもよい。多分ライブで一番好きになる曲だと思う。でも曲の心理描写、残された側の気持ち、それらの表現がとてつもなく良い。よって2位となった。
一位にしようかほんとに迷った...変えちゃダメかなぁ・・
第一位 MILABO
臆病な僕をごまかすための空元気ソング
キャッチコピーを付けるならこれですね。
さっき、好きな曲ランキングは多分変わるだろうと言っていたがこれは確実に変わらない。一位にずっとい続ける。曲調はリズミカルなピアノで始まり、どことなくディスコを感じさせるビートやクラップがずっと続く曲。さわやかなギターの音色からどことなく夏を感じさせてくれます。MVが出たのも7月なのでそこも起因してますが…
しかし歌詞が爽やかで明るい曲調とは裏腹にとてもネガにあふれています。
サビに向かう前、BOWと爆発するサビに向けて導火線をなぞるようにズンズンとしたビートが続きます。しかし
「あたしのこと 知らないで 因果応報叱らないで
あたしのこと 知らないで 因果応報叱らないで
あたしのこと 知らないで 因果応報叱らないで
あたしのこと 嫌わないで」
ここだけ切り取るとメンヘラっぽい。まるで自分の中の気持ちを爆発寸前までため込んでいる感じ。2020年のコロナ禍では夜行性アーティストがという名称が生まれたようにずっと真夜中でいいのに。という名前というが広まってきていた。しかし顔出ししないという、世間のアーティストのイメージとは異色な存在ゆえに偏見、憶測、ありもしないことが飛び交い、それらが目に入ってきて、「私のこと知らないくせに勝手なことを言わないで...」っていう気持ちが少しづつ募っていくのを盛り上がるサビ前に置いている。暗い、不安定だけど安定した雰囲気が好きであろうACAねにとってはっきりとしたもの、まぶしいものに恐怖を感じていたのかもしれない。しかし、表現者として表舞台に立ち、存在を証明するにはステージに上がるしかない。いつまでも隠れていられない。「アコギ持って、まだ慣れないけど私は頑張るよ、変わっていくよ、だからしっかり見届けてほしい。という決意を伝えたいのかなと思った。活動し三年が経ち、ACAねという存在も知れ渡っていく上での不安、不満、臆病さを捨てたい気持ちを爆発させた曲だと思う。でもそんな自分の中の葛藤などをディスコミュージックに乗せて歌うこと。ディスコといえば夜をも照らす、明るく楽しいイメージだ。そのイメージに乗せることで自分をも明るくさせたいと思い、ディスコを選んだのかなと僕は思う。でもあまりの明るさに私も無理してるかもといわんばかりに不安定な歌詞でもある。Bメロの「どう思っているとか...」の部分は歌詞が結構詰め込まれている感じがする。カラオケで歌ってみるとわかるがここがとても難しい。ここだけファンクやR&Bを感じさせる歌い方だ。
ディスコとファンクはどことなく似ている(そこを掘っていくとと一万字いく)ので、二番の部分の聞き心地がよいのはそれら二つが親和性があるからだ。とてもうまく落とし込めていると思う。だけど歌詞だけに着目するととても不安定なのだ。「私が伝えたいこと。歌にしたいこと。でもそれがごっちゃになって難しい。」みたいなこと
そこの苦難が顕著に表れている。
この曲はディスコの影響とそのネガティブな歌詞の対比がACAね自身の様々な苦悩との向き合いをより強く明確に表現しており、
「朗らかな皮膚とて不服」の最後を飾るにあまりにふさわしい曲なのだ。
ACAねの描く詞はとても難解だったりする。真正面からぶつかってもよくわからないまま歌詞の理解を諦め「曲調が楽しい感じだね」と端的にまとめてしまう。それが僕だったから。でも今こうやって改めて整理すると、時代、現代社会、インターネットそれらすべてによって巻き起こる何か暗い感情をディスコに乗せて向き合わんとする姿勢の曲だと思った。
その「私」をどうにか明るく見せるために取り繕う曲調、でも正直でありたい思いが混じった、複雑で、感情的で、いっぽ踏み間違えたらぐちゃぐちゃになりそうなリリックそのすべてを詰め込み、完成されている。繊細だけど堂々とした、まるでミラーボールのような不思議な輝きを持つ曲を僕は一位にした...
最後に
ずとまよの曲は時にダークで、時に空元気で、そんないろんな人間の心の形を表現したアーティストだ。ぜひあなた自身のずとまよベスト3を選出しましょう。とても楽しいです!めちゃくちゃ悩みますが…
最後まで読んでくれてありがとうございました!それではさよならさよなら