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THBT, assuming compliance, we should globally cap military spending to 1% of GDP.(新緑杯GF & 3位決定戦)


はじめに

続いて新緑杯の決勝 & 3位決定戦。モーションみたときのインプレッションとしては、あ~日本の防衛費の話をちょっとGlobalに広げる感じなのかなと思いましたが、自分がジャッジした決勝も、あとでアーカイブで見た3決もほとんど日本の話はしてませんでした(💦)。

ひとまずWikipedia

日本は伝統的にGDP1%枠(1%以下に抑制すること)を政策にしてきて、逆にNATOなどではGDP比で2%以上を防衛費に充当するように求めてきました(厳密にはあんまり守られてない…)。

MotionのWordingとして、GDB based Capにしないで1% of GDPにしてるってことは、Maximum 1% rather than more than 2%(NATO方式じゃなくて伝統的な戦後日本方式)ということを言わせたいのかなと思いましたが、実際のところはよくわかりませんでした。

対立軸ー世界の警察・米軍の存在

プレパのときに考えていた対立軸としては、いまの世界平和は米軍の存在によって保たれていて(独裁国家が暴れだしたり地域紛争が起きたら米軍が介入して辞めさせる)、なのでGDP1%枠の世界だと米軍がかなり弱体化することになるので、

(米軍の軍事力低下で)地域紛争がもっと増える世界
 vs
(独裁者たちの軍事力も低下するから)地域紛争がもっと減る世界

という対立軸を考えてました。決勝のほうは比較的そういう流れだったのかなと思います。

一応、世界の軍事費資料。ロシアが4%、米軍が3~4%、先進国は1~2%の間、途上国が3~5%の間くらいなんで、米軍の力が大きくそがれるのと、途上国ほど影響が大きいというのは間違いなさそうです。

というわけでそれぞれ考えてみましょう。

Gov①戦争が減る

  • 現状、地域紛争や宗教紛争が多い(アフリカや中東など)

  • 各国の軍事力が減る(とくに途上国の軍事力減る)

  • 紛争遂行が困難になる。

  • これまで紛争で失われていた命が失われなくなる。

シンプルにはこんな感じかなと思いますが、紛争の原因には触れておきたいです。資源争奪戦だったり宗教対立・民族対立など。でまあ、軍事費削らされて、軍事力が低下したところで、潜在的な紛争原因(対立構造)自体がなくなるわけではないので、それで本当に紛争起きないの?というダウトはありうるかと思います。大規模な衝突は回避されるかもしれないけど小競り合いのバチバチとかは相変わらず起こります、とかはOppから言われるんじゃないかと思います(この辺の話はGov②で触れます)。

Gov②内戦が減る

  • 現状で民族紛争・宗教紛争が多い

  • 国家の軍事力が減少することによって、戦闘手段が弱体化する

  • 対立よりも和平交渉が進む(例:イスラエル-パレスチナなど)

軍事力が低下するので、紛争を継続することよりも和平交渉して対立を回避するほうにインセンティブが働くという方で考えてみました。軍事力をどんどん使えるから軍拡競争(≒安全保障のジレンマ)が起こるんであって、軍事力にCapができたら無理して戦うよりも平和・安定の道を模索するんじゃないかという話です(独裁者とか国の指導者は潜在的に自分たちの地位を守りたいと思っているというインセンティブの分析はあったほうが良いと思います。③参照。)。安全保障のジレンマについてはこちらを。

Gov③独裁者のインセンティブ

  • 軍事力はGDP1%だから軍事力を延ばすためには経済力を高めなければならない

  • 独裁者は経済成長にシフトする

  • 経済部門に多くの公費投入、投資が行われ、経済・福祉が向上する。

独裁者は自分の地位を安定させるために軍事力を維持して、他国からの侵攻に備えたり、内乱・暴動に備えたい、というインセンティブを持っているとします。で、1%Capがあるんで軍事力を伸ばすためには経済成長しなければなりません。で、経済成長にシフトする。経済部門に多くの公費が投入され、教育とか医療にもお金が使われて、国民の福祉が向上するみたいなシナリオかなと思います。

Opp①紛争介入の減少

  • アメリカは世界の警察。

  • 地域紛争が起きるとアメリカが軍事介入するから世界平和が維持され(例えば、イラク、アフガン。または直接介入しなくてもウクライナへの軍事支援)

  • モーションによってアメリカの軍事力が低下する

  • 地域紛争に介入できなくなる(≒自国の防衛だけで手いっぱいになる)➡アメリカが介入できなくなる→地域紛争が増える→多くの人が死ぬ

対立軸で書いたことと被るのでとくにないです。誰が戦争起こすの?っていうところは②に譲ります。

Opp②非国家武装勢力

  • アルカイダ、タリバン、ISILなどの非国家武装勢力はこのモーションの対象外(つまり、この人たちには1%Capは適用されない。なぜなら国家ではないから)

  • 国家の正規軍は削減・縮小されるのに非国家武装勢力の軍事力はそのまま温存される。

  • 国家の正規軍では武装勢力を抑えきれなくなる、かつアメリカの介入能力も減少。

  • 武装勢力による攻撃・テロが増える➡多くの人が死ぬ

クラッシュしそうな論点

①Power-imbalance
Opp:経済力のある大国ほど軍事力を保持することになるからPower Imbalanceが生じることになる。
Gov:(Power-Imbalanceは返しずらいですが…)先進国は人件費や兵器が高額なので、実際それほどPower-imbalanceは生じないのでは?など。

国家間紛争そもそもかなり稀
大国間の紛争はそもそもほとんど起きないのでは?という議論に対して、
Gov:大国間の紛争は変わらない(もともと少ない)けど、at least: 小国間の紛争は減る
Opp:大国が小国を圧迫する・飲み込む(例:ロシアvsウクライナ、中国 vs ASEAN)ようなかたちの紛争は増える

※どういう国のどういう種類の紛争が増えるのかっていう分析はあると強いかなと思います。

③Principle:平和の責任と国防の権利(Sovereigntyの話)
Opp
:自国民を守るために武装するのは国家の権利(≒自衛権)。このモーションは国家の自衛権を制限していてprinciplly bad。また、power imbalanceはより拡大するから、その点でもjustifyできない。
Gov:平和な国際関係を守るのが国家の責任。各国で協力して軍縮するのはjustifiableです!

※発展性は怪しいですが、一応言うことはできるくらいのレベル。

勝ち筋

Govの勝ち筋
Power-Imbalanceを認める(➡米国はPower Imbalanceでかなり強力な軍事力を維持できる)➡軍事介入もガンガンできます、武装勢力も抑え込めますという流れでOppのインパクトを削る。

Oppの勝ち筋
国家軍事力が減少する中で非国家武装勢力が跋扈する。テロや紛争が増える。

おわりに

シナリオ的にはもう少しありそうかなという気もしますが、ひとまず筆をおきます。要は、①なぜ紛争が増えるのか(減るのか)、②どんな種類(どんな国、どんなアクター)の紛争が増えるのか、③(可能であれば)それを見て周りの国はどういうリアクションをするのか(助けるのか、傍観するのか)あたりが争点になるかなと思います。


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