冬休みアレンジ祭21-22 後記

何度かこのnoteで話題に出していたアレンジ祭Day3で私の出番が来たので2曲放送していただきました。
主催のあべしさんをはじめ、参加した皆さんありがとうございます。
まだ中ほどのはずなので興味持たれた方はどうぞご覧ください。
今回は提出した曲の制作時に考えてたことをまとめておきます。
セルフライナーノーツ…というには格好つけすぎているので単純に後記。

ちなみにこの放送の曲とはyoutubeに上げている曲は少し違います。今年入ってからミックスでの気づきがあったので両曲ミックスし直してます。
ミックスしたいから曲作っている、まであります。笑

I Don’t Think So

keyword : 人力ドラムン Pigments3.5 音ゲー

まず原曲側で提出した曲「I Don’t Think So」
新しい鍵盤が届いて楽しい気持ちが爆発してる中間部が冷静になると怒り狂ってるようにしか聞こえなかったので、逆張りオタクが心に隠し持つナイフ「私はそうは思わんけどな」をそのまま題名にしました。

この曲の構想はAurturiaから出ているお気に入りシンセ「Pigments」のヴァージョンが3.5になったところから始まります。
アプデされた更新内容の中にどうしても使いたいダブステップシーケンス系のプリセットがあり、そこから着想を得ました。
(中間部のタイムがハーフになったところですね)
あとは音程感のあるHarmonic Kickってプリセットを隠し味に。
初めて音色から曲を作ったかもしれません。

アイデアだけ先行して宙に浮いたままだったところから色々試行錯誤して
人力ドラムンをイメージして曲を作ることにしました。
人力ドラムンを馴染みの無い方向けに紹介すると、ジャンルとしてのドラムンベースを逆輸入して無理やり演奏するというスタイルで、何年か前にジャズ文脈で流行りました。人間が出す独特の無機質感がすごくクール。
Jojo MayerとかMark Guiliana,Louis Cole辺りは有名どころですね。

(若き日のLouis Cole この時から今のスタイルが垣間見えます)

Pigmentsのプリセットを選んでた所から薄々感づいていたんですが、この手のジャンルのこと全然分からずに苦しかったです。そこでフォロワーさんが遊んでいたことをきっかけに「音ゲー」に解を求めました。

arcaeaという音ゲーのサントラをよく聞きました。楽しく聴いていただけでしたが…w)

音ゲーってすごいです。新たな鉱脈を見つけた感じ。EDMがほぼ解体され踊る場も無くなってる昨今、勝手な想像ですが一番技術的に尖った音楽快楽の研鑽の場所かもなと思って注目してます。多分踊る必要性もないから機能的にもっと自由なんだな?どうだろうか。
今回の企画でも気に入った人は音ゲーの公募に出してる人だったり、俄然興味が湧きました。私も公募挑戦したいと思ってしまうくらいには。
音ゲーの制作の動画を少し見聞き齧って自分が気持ちいいと感じた+10テンポを上げ、音圧マシマシ(当社比)の曲になりました。完成。

イベント別日で感嘆したぺてねこさん。ヤバくないです?

問題はそうして出来上がった曲が全くキャッチーでなかったこと。
原因ははっきりしていて、私のメロが弱すぎる。
それも当然そうで、メロに興味が薄いんですよね。正確に言うとグッドメロディに対する興味の薄さ。人に聞かせる、アレンジしてもらう立場としては致命的。
(逆にサウンド、アトモスフィアに関する興味は人一倍あります。)
今回の曲は構造は気に入っているからこそ、おざなりになっていたことは否めません。

そんなのは全部言い訳なので、素直にごめんなさい。

コメントではドラム褒めてもらえて嬉しかったです。
まだドラマー名乗ってもいいですか…笑
一部叩いたり組んだりの組み合わせです。
テンポ後から増してるので叩こうものなら四肢が爆散しますが。
ドラムンを叩く人力ドラムンを再構築してドラムンにする入れ子になっていて、好きな仕上がりでした。
打ち込みでしかできないことが出来るのは楽しい✌('ω'✌ )三✌('ω')✌三( ✌'ω')✌

驚愕したのはその不出来な曲を不出来なまま拾って拡張して見せた
れとろみらいさん!れとろみらいさん以外に私の曲当たったら事故だったなと今となっては思うくらい、完璧にアレンジしていただき心から感謝しています。おかげで比較的平常心でこのnoteを書けています。苦笑
人の寿命は短いです。もし、どうしてもこれを読んでくれているあなたに一曲聴く時間しか無ければ、まずれとろみらいさんの曲を聴いてください。

また、この曲は友人のトリさんにミックスの相談とジャケットの実装をお願いしてます。
ジャケットには私一人でコントロールしきれない要素を入れたくて、最近話題になっていたAIドローイングにこの曲のイメージを表していそうな単語で書いてもらって、それをトリさんに組んでもらいました。
いつもありがとうございます。何か返せればいいんだけど。

Relaying a fire

keyword : 対位法 4つ打ち→レゲトン 人の曲をアレンジすること

次はアレンジ側で提出した「Relaying a fire」について。

奈賀6時さんのかっこいい原曲はこちらです

この4つ打ちを聴いていた時に冷たい炎を想起したのでこれから私がすることはその火を受け継ぐ継火=アレンジという行為なのかなという発想そのまま命名。ちょうど冬季オリンピックなのはたまたまでした。直接的には裏で遊んでいた「オクトパストラベラー」というゲーム(いわゆる神ゲー)のキャラ、オフィーリアがイメージソース。

原曲とは対照的にアレンジはメロディがある、ので好き勝手出来ましたが、だからこその沼がありました。初期はメチャクチャな変拍子にしてやろうとか、奇数割のリズムモチーフを採用したり…技巧的にいろいろ詰め込んだんですね。当然上手く行くわけもなく。残り二日。

そこで命名の時と同じく人の曲をアレンジすることの意義に立ち返ってアレンジを練り直しました。

原曲はハイパー音圧の冷たい4つ打ちで自己の内に潜って踊るタイプの曲だと感じたのでその逆、外で皆で踊るには…と連想していきました。
4つ打ちは曲を支配し過ぎるので換えることだけは決めて試した結果、踊りに適するリズムとして使ってみたかったレゲトンにたどり着きました。(4つ打ちが私の手法ではうまみが出にくいという技術的な側面もあり。)
南米由来の完結しないリズム構造が踊りと相性が良く、いつまでも踊っていられそうなリズム系で楽しかったですね。

一人で完成しない音楽を目指す方針が決まったので学び始めた対位法的手法も自然に採用出来ました。幸いキャッチーなメロディとリフがあったので流用しつつ大好きなバンド、ceroの大きな編成をパク…リスペクトしつつ。

最後に我慢できなくなってシンセのFX的装飾をしました。音ゲーや坂東祐大さんの関連諸作を聴いていた影響で音を散らしたくなったんですね。
気づいたらやってしまうので気を付けたいです。用法用量を守って。完成。

それぞれの手法の拙さはありますが総体としては気に入っている方です。
やっぱり自分の中でアレンジに必然性が見出せると迷いが無くて良い。
音楽は何やってもいいですが、ことアレンジにおいては原曲をくださった人への最低限の礼儀として必然性はこれからも考えることになると思います。
内容としてはそれぞれのラインに自信がなく、楽器を増し過ぎたので分厚くなってますね。日和ってリズム楽器を入れ過ぎたのも一因としては思いつきます。ミックスも難しかったですしね。
アレンジとしても元のメロディが見えにくくなってしまったので特にトップをどう補強するかは研究のし甲斐がありそう。

放送時の反応も意図したところが伝わって持っていけてたような気がします。暖かいコメントに感謝します。

ジャケットは継ぐという行為から連想してちぎり絵という方法でロゴを構築しました。これは結構気に入っています。
手を動かして実物を作るのはDTM的には忘れそうになるけど
私に足りない同人的な精神に則る行為だと感じました。

反省

覚悟していた反省と覚悟していなかった反省が訪れましたが、
その両方で致命的なものが見つかったので実りある回でした。

  • 単純にアレンジしにくい曲を送ってしまったこと

これは何度反省してもしきれません。今回いつもの構造→コード→メロの順で作っていきましたがアレンジにおいてはメロが大事に決まっている。
メロから考えるべきでした。自分の手法のために曲を作るのは他の人が関わる作品ではもう絶対にしません。大反省。

  • コンペティブなミックス(≒マスタリング)

私は人よりもミックスについて考えていることが多いタイプみたいですが、今回提出した曲はyoutubeで他の曲と一緒に流れると明らかに競争力が足りないミックスでした。音楽は競争ではないという大義名分の裏には争えるほどの品質が必要で、それが足りていなかったな、と思います。
こればっかりはトライ&エラーですし公募の件もそうですが、戦うステージを意識したミックス(とアレンジ)を心掛けたいです。

良かったこと

正直に言うと自分の曲を聴いているといつも嫌な気持ちになるタイプです。
足りていない、劣っている部分が耳について辛い。だからひたすら酷評するのは得意なんですが良かった部分もしっかり掬い上げられてこそですよね。
一瞬だけポジティブな私をサモンしてよかった部分について考えてみます。

  • 原曲側では自分が今まで取り組んでた手癖にケリをつけられた

作り方然り、構造然り、ミックス然り、原曲の方は私が今まで出来たやり方を意識して出力出来ました。行動と結果が結び付くことは意外と貴重。
今のやり方が役に立つこともいつかあるかもしれない。
腹を痛めることでしか得られない教訓も、車輪の再発明でしか体感できない技術の厚みもある。それらが分かればよかったのかな。

  • アレンジ側では正しいチャレンジを行えた。

完全に理解してからのみ実装出来ないなら新しい技術は発展しない。
制作前に事前に考え、学習しておくこと。それらを意図をもって組み込めれば技術的には未完成でも組み込むことは出来るのかもしれません。
やらないとうまくなりませんしね。実践側でのノウハウの積み方について改めて考えるいい機会になりました。

今後の目標

今回の結果をもとに、いくつかやってみたいことが出来ました。

  • 評価しやすい、ジャンルを作ること。(今のところは)

評価される場では評価しやすい、きちんとその場にあった文脈のものを提出すること。つまりTPO、ドレスコードみたいなものです。
違うもので一点突破するには、逆説的に総合力が必要でまだ足りてない。
いつも聞いたこと無いとんでもないものでぶん殴りたいと考えています。何よりも自分自身に驚いていたい。そこまでは早い。
私は守破離の守です。まだそのレベル。
ウケの良いものが作れるようになってからでも、その先を出せるハズなので両面の研鑽を努々怠るべからず。

  • 声、を入れること。

声のキャッチーさは音楽では否定できない程に大きいと再確認しました。
メインで歌い上げるわけでなくても、アウトロで語りを入れたりコーラスワークが聴いている曲でも一層キャッチーです。
イベント同日のletheさんの曲は端的にそれを表していました。

アレンジもかっこよかった。ああいう語り的構造に憧れます

音楽的ではないであろう私の声であっても、導入の仕方は色々あります。
少し真剣に声に向き合う必要があると思いました。

おわりに

一項目を書いているときに1000字超えてて嫌な予感がありましたが現実に。
5000字位いってます。ここまでお付き合い頂き、読んでくださっている皆さんに心から感謝です。

私は多作家ではなく、良く友人に怒られます。
そりゃそうです。究極的には実践からしか上手くなれないんだから。
うだうだテキストなんか書かず、曲を作れというのは真理です。

…分かってんだけど書いちゃうんだよなぁ笑
曲作りに大事なのは怨念でそれが乗りきらなかった時次に移れない。
供養して成仏させてあげたい。そしてたまには墓参りしたい。
文明の人間としてはどうでしょう。自然なことではありませんか。

そういう後記でありました。何でも糧に強くなっていこうな。
尊敬できる人ばかりでひたすらに感動しました。幸せでしたし、私もその末席に加われるように(全員薙ぎ倒せるくらい)頑張っていきたいです。

読んでくれてありがとう。


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