ドラマ感想 - 晩酌の流儀

Amazon プライムのオススメに出てきた、「晩酌の流儀」が望外に面白かった。

一見して「孤独のグルメ」を彷彿とさせる題名だが、物語の随所に主人公の呟きが入る点で共通している。孤独のグルメの主人公が飲食店を追い求めるのに対し、本作の主人公はいかにおうちグルメの晩酌を美味しく堪能するかに重きを置いている。

主人公の伊澤美幸を演じるのは、栗山千明。放送枠は、幾多の傑作を生み出してきたテレ東の「ドラマ 25」である。

[【ドラマ25】晩酌の流儀 | テレビ東京・BSテレ東 7ch(公式)]
https://www.tv-tokyo.co.jp/banshaku/

物語は一話完結型で、概ね美幸が出勤前にその日の晩酌を仕込み、グラスを冷蔵庫に入れるところから始まる。そして、美幸はいつも定時きっかりに仕事を上がり、スーパーに寄って食材を仕入れ、帰宅して酒肴を作り、最高の晩酌を愉しむのだ。

これまでのグルメ系ドラマと一線を画しているのは、美幸が料理することで、「料理は作っている様を眺めているだけで既に味わっている」という事実を視聴者に知らしめている点である。

飲み屋でカウンターに座ることの意義は、何もマスターや女将と話すだけではない。目の前で料理を作り、酒を注いでいる瞬間を眺めることで、味覚以外で美味しさを感じているのだ。

ドラマでは匂いや味は伝わらないが、美幸の手際の良さや呟き、さらには食材が形を変え料理に変わっていく様を眺めているだけで、美味しそうと感じる。口に入れて味わわなくとも、演者の様子を見ていれば美味しいと感じるのは、これまでのグルメ系ドラマと同じである。

やたらのバラエティのように、口に入れた瞬間に「めっちゃ美味い」と叫び、ろくに味わいもしないで「美味い、本当に美味い」と連呼する陳腐さがないのも、ドラマの良さである。

全 8 回で終わってしまったが、このドラマを観ながら晩酌を楽しんだ期間は、本当に幸福そして口福であった。

しかし、このドラマにも弱点はあった。

それは、劇中で使われるビールが毎回必ず「金麦」であるということ。スポンサーの意向なのだろうが、残念でならない。金麦が大好きな人には悪いが、「画竜点睛を欠く」とはまさにこのことであった。

制作陣もそれを考慮したのか、缶を直飲みする場面はついぞ表れなかった。いつも美幸は、キンキンに冷えた缶から見事な手付きでグラスに注ぎ、黄金比で構成された泡とビールをまざまざと見せつけてくれた。

おかげで、ドラマを観ながら晩酌しているこちらは金麦をいったん忘れて愉しむことができたのである。

そんなところも、大好きなドラマであった。

[ドラマ25「晩酌の流儀」予告映像 7月1日(金)深夜0時52分スタート|テレビ東京]
https://www.youtube.com/watch?v=KeAGR30s4hM


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