ドラマ感想 - 居酒屋新幹線 2
3 月になったと思ったら、大好きなドラマ「居酒屋新幹線 2」が終わってしまった。今期、最も楽しみに観ていたドラマだった。
「俺の仕事は内部監査。真面目にやればやるほど嫌われる、辛い役回りだ。」
眞島秀和が演じる主人公、高宮進のそんな呟きが入る物語の冒頭は、大抵いつも出張先である。進は、出張先でその土地ならではの酒や酒肴を買い揃え、帰りの新幹線で飲み食いすることを「居酒屋新幹線」と呼んでいるのだ。
この手のグルメ系ドラマの例に漏れず、物語は概ね主人公の呟きで展開する。あの「孤独のグルメ」に端を発し、「ワカコ酒」などにも継承され、いまや定番となりつつある手法。
それらの作品と異なるのは、主人公が出張帰りであること。したがって、出てくる酒も酒肴も毎回、出張先の名物や、人気のある酒に限定される。こうして範囲を絞ることによって、視聴者はより、興味を惹きつけられる。
進は、事前に調べたり、人伝に聞いた情報を頼りに自らの足で探し回る。誰もが知っているド定番な名物にも触れるが、その土地で人気上昇中の酒だったり、渋い通好みの肴を選ぶことが多く、呑兵衛な視聴者は毎回、心を鷲掴みにされてしまう。
居酒屋新幹線 (新幹線の指定席) で飲み食いする時に、酒や肴を写真に撮って、X (旧 Twitter) にポストするのも、この作品ならではの魅力。進のフォロワーたちがあれこれコメントするのだが、それらが視聴者に対する、酒や肴の説明の補足になっているのだ。
フォロワーには、呑兵衛初心者もいれば玄人もおり、それらと進との掛け合いが小気味良い律動を生み、知識がスッスッと入ってくる。食べ物の説明を主人公の呟きのみでやろうとすると、どうしても短く納めないと聞きにくくなるものだが、本作ではフォロワー数名で語ることによって、それを克服しているのだ。
ものの味だけではなく、歴史や背景を教えてもらえるのは、自分のようなウンチク大好き人間にとってはこの上なくありがたい。美味しいものはどう、なぜ美味しいのか。テレビでは味が伝わらないのだから、ウンチクは重要なのだ。
題名の「居酒屋新幹線 2」が表すとおり、本作は第二弾である。第一弾は 2021 年の放映だったらしい。大好きな題材、大好きなテレ東ドラマなのに、なぜ 2 年も気づけなかったのか・・・猛省するしかない。
本作の舞台は北陸または長野、第一弾は東北新幹線の駅であった。これは、提供および制作協力が JR 東日本だからであろう。
個人的には、乗る機会の少ない北陸新幹線や長野新幹線沿線の街に出張に行ってくれて本当に良かったのだが、口さがないネット民たちは、東海道新幹線が登場しないことをかなり批判している。進が名古屋、京都、大阪あたりに出張に行ったとしても、有名すぎて物語にならないと思うのだが。
この作品、実は原作漫画があるのだが、まだ読んでいない。というか、あえて読まないでいる。もしこの後に、東海道新幹線や九州新幹線を使って出張するとして、それを事前に知ってしまうとドラマのワクワク感が失われてしまうから。
そう、このドラマの魅力には、進は次にどこに出張して、どんなものを買い集めるのか、それを予測する楽しみもあるのだ。次回予告で土地が分かり、酒や酒肴がチラッと映ることで、より期待が膨らむってわけだ。
そしてそして、次回作「居酒屋新幹線 3」は、果たして制作されるのか。進はどこへ出張してどんな居酒屋を開店するのか。想像と期待が止まらない。
そして、このドラマを楽しんだ視聴者の多くは、その後にそれぞれの居酒屋新幹線を開店せずにはいられなくなる。自分も今から、次の新幹線に乗る機会が楽しみでならない。