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富山の魅力を一緒に開拓してくれる人、募集します。



地方の暮らしを深掘りし、その魅力を都市の人々に発信するquod(クオド)。メイン拠点の一つ・富山では、これまで代表の飯塚がquodとしてはほぼ一人で、地元企業の人々とともにプロジェクトを企画・推進してきました。おかげさまでプロジェクトの数も増え、「今こそチームをつくる時だ!」と、今回初めて富山を一緒に盛り上げてくれる仲間を募集することに。富山という土地の可能性や、現在進行中のプロジェクト、これからチームとなるメンバーに伝えたいことなど、気になるポイントを聞いてみました。

人と自然の共存の中にこそ美しさがある
氷見の多彩な海の恵みを伝えたい
外の目を持ちながら継続的に接すること
新しい社会の在り方を地方から模索する


人と自然の共存の中にこそ美しさがある


-そもそも、quodが手がける拠点として富山を選んだ理由は何だったんですか? 
 
僕たちの活動するエリアには「山水郷」という共通のコンセプトがあります。恵まれた自然があるからこそ生まれる魅力や地域全体の循環を、大都市の人にも感じてほしいなと思っていて。世界レベルの自然に出会える富山は、まさにそのキーワードがピタッとハマる土地だったんです。
 
-なるほど。では最初に、現在進めている富山の主なプロジェクトについて教えてください。
 
僕たちが関わっているのは主に富山の西部地区で、立山連峰などの自然豊かな東部に対し、西部には浄土真宗の信仰文化が強く根づいています。大きく分けると、DMO(観光地域づくり法人)の「水と匠」のメンバーとしての取り組みと、氷見の「松本魚問屋」さんとの取り組みの2軸になります。
 
-まず「水と匠」に関してですが、一緒に取り組むようになった経緯は?
 
僕が富山に来た当初は地縁もなかったのですが、東京で繋がっていた知り合いから「地域の人と関係性を築いていくにはDMOの取り組みに参加するのがいいよ」と言われ、「水と匠」のプロデューサーの林口さんを紹介してもらったのが始まりです。DMOって、他の地域だと行政の外郭団体が運営していることが多いんですけど、ここは地元の約80の民間事業者が協力して立ち上げた組織なんです。そういった意味でも、地域を学び始めるのに最適な一歩だったと思います。今、quodは外部パートナーの一つで、僕は株式会社化したDMC(観光地経営会社)「水と匠」の社外取締役として、EC事業の立ち上げや物件の開発企画など、収益性のある取り組みに携わっています。

-具体的にはどんな内容ですか?

主に二つあって、一つは「楽土庵」という物件の開発です。富山の西部・砺波市には、平野にぽつりぽつりと屋敷林があって、中に古民家があるという集落形態の「散居村」が広がっています。その中の空き家を改修して、オーベルジュにしようというプロジェクトです。
https://www.rakudoan.jp/
 

砺波平野の散居村に佇む楽土庵


 
-美しい風景ですね!
 
日本で一番大きな散居村で、世界遺産レベルと言ってもいいくらい、本当に美しいところです。この古民家を「アズマダチ」と言うのですが、言葉の通り東向きに建っています。南西の風を避けるという目的もありますが、「阿弥陀如来がいらっしゃる極楽浄土は西方にあるので、西を背にしてお仏壇を置くと、玄関が東を向く」という浄土真宗の信仰も影響していて、この土地の地域性が色濃く出ているんです。
 
 
 
-開業はいつですか? 
 
今年の10月です。単に「ホテルを一つ造ります」ということではなく、人間が自然の地形に則って手を加えながら、共存してきたことで生まれる美しさを、世の中に広めていきたいと思っています。高齢化による担い手不足や、農家自体が減っていることもあり、散居村もどんどん消滅しているんですよ。なので、保全の動きにつなげるためにも、もっと多くの人に訪れてもらおうという狙いがあります。

 
-もう一つはどんなプロジェクトでしょうか? 
 
「善徳寺」のプロジェクトです。南砺市にあるお寺で、民藝運動を始めた柳宗悦が『美の法門』を書き上げた場所としても知られているのですが、まさに“民藝の聖地”のような場所です。quodの目指す方向性としてもシンパシーを感じる部分が多く、ここを研修・宿泊施設に変えていこうという取り組みになります。
 
 

善徳寺研修道場


-これまた素敵なところですね!
 
そうでしょう?この地域は浄土真宗の信仰が生活の中に落とし込まれているので、景観も美しいし、人々もすごく優しいんです。柳宗悦も、この土地が持っている力だったり、そこからくる暮らしの美しさに感銘を受けたそうです。なかなか僻地にあるので、観光地的な場所ではないですし、まちとしては少し賑わいが減ってしまっているのですが、仏教思想の美しさはしっかりと残っています。あと、この地域にいらっしゃる僧侶が本当にすごい。
 
-南砺の僧侶のすごさとは? 
 
まず僧侶として立派な方なんですけど、哲学者としてもすごく示唆深いんです。僕も訪れるたびに、まちづくりのこととか、これから仕事どうしていこうとか、家族のこととか、すごく色んな相談をするんですけど、何でも答えてくれます。そして面白いのが、プロダクトデザイナーだったり大手広告代理店だったり、第一線でものづくりをしている人々が、今この地域に頻繁に足を運ぶようになってきているんです。それって、色んな企業がこれからの社会を考えた時に、持続可能な形でものづくりをするためのヒントがある場所だということなんですよね。でも、宿がない。
 
 

善徳寺テレワークPROJECT  北の書院


 
-そこでこのプロジェクトが活きてくるわけですね。
 
せっかく来るなら泊まりたいし、地元の人と交流もしたいし、食文化も知れて、仕事もできたら最高だなって。そういう体験ができるように、物件や研修プログラムの開発、必要な資金調達を進めているところです。まずは手始めとして、テレワークスペースをオープンしました。
https://mizutotakumi.jp/zentokuji-telework/
 


氷見の多彩な海の恵みを伝えたい



-お話を聞いているだけでワクワクします。では次は氷見のプロジェクトについて教えてください。
 
氷見は“天然の生け簀”と呼ばれるほど魚が有名で、その魅力を地域外に発信していくために、地元の「松本魚問屋」さんと一緒に古民家の改修やポップアップ店舗の企画などの取り組みをしています。氷見港が面する富山湾は、水深1,000m以上の深海が3,000メートル級の山々に囲まれていて、世界的にもすごく稀有な地形なんですよ。高低差が大きく複雑な地形のおかげで、多彩な魚の住処になっている。なんと、日本の海で獲れる魚種の6~7割が生息しているそうです。
 
-すごいですね!具体的にはどんな取り組みですか? 
 
まずは氷見駅の前の古民家を改修して、例えばぶりのフルコースなど、現地ならではの料理を味わえて、かつ氷見の魚の魅力を伝えられるキッチンスタジオを一緒に企画しました。そこから今年の春に、富山駅の商業施設内に「氷見のうみと」という期間限定ショップをオープンしました。お弁当や加工品を販売して、氷見の海の恵みを手軽に持ち帰ってもらおうというコンセプトです。
 

富山駅に出店したポップアップショップ


 
“肉の旨味=脂”って結構すぐイメージできると思うんですけど、実は魚の旨味も“脂”なんですよ。そこでぶりをすき焼きにして、野菜や麩にもぶりの美味しい脂を染み込ませて食べてもらおうということで、フレンチシェフにレシピを考案してもらい、お弁当にして売り出しました。
 

鰤のすき焼きとホテルイカ弁当


 
-反響はいかがでしたか? 
 
情報発信や空間づくりに関してはうまくいったと思うんですけど、実際に届けたいお客さまに買っていただくという点では課題も多かったです。そういった反省も踏まえながら、次につなげていきたいと思っています。
 
-氷見もますます盛り上がっていきそうですね。 
 
そうですね。氷見駅周辺の古民家を改修して、まち全体を宿にしても楽しいと思うし、quod所有の一棟貸しの宿があってもいいと思います。今後も柔軟なアプローチで、随時プロジェクトを立ち上げていきたいなと思っています。
 

外の目を持ちながら継続的に接すること


 -飯塚さんは東京と富山で2拠点居住をされていますよね。富山は住む場所としてはどうですか?
 
めちゃくちゃいいです。とにかくご飯が美味しくて、自然がすごく近い。中心部から1時間以内で壮大な山や海にアクセスできて、能登とかにもすぐ行けちゃいますし。あと、つくり手との距離が近いのも魅力だと思います。東京だと、例えばガラス作家さんだったり漁師さんだったりって遠い存在だけど、富山だと“隣の人がやってる”くらいの感覚なんです(笑)。素晴らしい技を間近で見ることができるし、「飯塚さんのために一番いいやつ捌いてきたよ」なんて言われると、その魚が何倍も美味しく感じられるんですよね。
 
 

富山湾越しの立山連峰


 
-子育てをする環境としてもいいですよね。
 
一人目の娘が生まれたタイミングで移住したんですが、本当にそう思いますね。僕は大学院で都市の研究をしていたので、もちろん大都市も好きですけど、正直、30代半ばで東京に飽きてしまったというのもあるんです。人間がつくれるものの刺激って、ある程度計算できる範囲のものだと思っていて。自然と共存する地方にこそ、まだ見たことのない世界が広がっている気がして、子どもにもそんな環境で育ってほしいと思うようになりました。僕の奥さんは富山出身ですけど、移住しようと言ったのは僕の方なんですよ。
 
-移住したことで夫婦の関係性にも変化はありましたか?
 
結構変わりました。喧嘩ばかりしていた時期もありましたよ(笑)。僕から移住を提案したんですけどね。
 
-いくら場所が素晴らしくても、環境の変化によって歪みが生じるのはまた別の問題ですよね。
 
これまでの人間関係がリセットされますしね。仕事上の新しい関係性はどんどん増えていくけど、同世代の男友だちは東京よりも少ないし、当初考えていたほど、全てが薔薇色じゃないんだなってこともよくわかりました。人間がつくった刺激に飽きたなんて言いながら、時にはそれが必要だということにも気づけたので、結果的にはよかったと思います。
 
-東京に拠点を残しているのは、そういった面でのバランスを保つ意味もあるのでしょうか?
 
それよりも、外側の視点を保つためという目的の方が大きいですね。地元の人はどうしても内側の視点になるし、観光客はワンショットの景色だけを切り取るので、その時の気候やコンディションによって印象が左右されます。外の目を持ちながら継続的に接することで初めて、その土地の複層的な価値が見えてくる。そういうポジションの人って、実はなかなかいないんじゃないかと思います。
 
-確かに。外の人にどう伝えれば効果的かを考える上でも、必要な視点ですね。ただ、飯塚さんのように富山メインの生活が長くなってくると、外の視点を持ち続けるのが難しくなるのでは?
 
当然その懸念はあるので、定期的に色んな土地に足を運んで、常に新鮮な視点を保ちたいと思っています。だからこそ、東京に拠点を置いてquodっていうチームに属しながら仕事をするのは、個人的にはすごくメリットなんですよ。富山に住んでいても東京側のネットワークを広げやすいですし、富山以外の地域のプロジェクトもあるので、「外からの目で土地を見るってこういうことだよね」と、他のエリアに行くたびに初心にかえることができます。
 

新しい社会の在り方を地方から模索する


 
 

 

氷見漁港


 
-今回、初めて富山でのスタッフ募集となりますが、どんな人と働きたいですか?
 
何かしらの武器を持っている人。東京だと一つ突出したものがあればそれでいいかもしれないけど、富山などの地方では、一人で多機能を果たさないといけない場面も多いと思います。最初からたくさん強みがある必要はなくて、何か接点があればそこから広げていくことができるので、一つ武器があるといいかなと思います。
 
-新たなメンバーの役割として、具体的なイメージはありますか?
 
企画やブランディングだけでなく、マネジメントや資金調達まで担うのが僕たちの特徴で、今回は特にファイナンスやセールスの面を強化していきたいと考えています。あと地方の仕事って、何ができるかの前に人として信頼されるかどうかが大事だと思うんです!「明日の夜、ホタルイカの漁行くけど一緒に来る?」「行きます!」みたいなタイムリーな関係性を築いていかないと、なかなか“中の人”として認めてもらえない。信頼関係から生まれるプロジェクトがどんどん増えているので、富山在住だったり、そういった感覚を共有できる人だと嬉しいです。
 

-では最後に、応募を検討している人に向けてメッセージをお願いします。
 
資本主義的な世界に先行きの不安を感じる人も増えてきているのではないでしょうか?富山には、長く続いてきた生活文化や社会の仕組みがまだまだ残っています。僕たちは、富山の自然や人々、文化からさまざまなことを学び、その“豊かさ”をこれからの時代に合わせてリデザインしていきたいと考えています。単発で終わらせるのではなく、長い時間をかけて積み重なるようなプロジェクトを、一緒につくり上げていきましょう。


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