墨色の海の底で 7
どれくらい泣いただろうか。外も少し薄暗くなってきていた。
「何でまだここにいてくれるの」
「良かった、いて欲しかったなら」
「…さっきのは、その時の私から見た周りの風景」
「能面とかヘラヘラとかハッピーとか?」
「…そう」
「矛盾してるって思ったんだね。それと空気にそぐわないって」
「でも今考えたらさ、私が傷ついてたから誰かを責めたかっただけなんじゃないかって思うの」
「明日の学校、サボっちゃおっか」
「もともと休むつもり」
「いや、どこかに行こうよ。ちょっと悪いことしてみたい」
「やだ。そんなリスク負うようなことしたくないし、よりにもよってあんたと行きたくなんかない」
「ちょっと元気になったみたいだ。明日の朝8時、君の家の近くの電信柱の前で待ってる」
「ちょっ行かないってば!てか何で私の家の場所知ってるのよ…」
彼はひらひらと手を振って、颯爽と去っていった。
街灯に照らされた彼の横顔は、今までになく柔らかい表情だった。
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