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利休百首その16 中継は胴を横手にかきて取れ
「利休百首」は茶の湯の作法や礼儀を100の和歌の形式でまとめたもので、茶の湯の実践者だけでなく、茶の湯の初心者も親しめるように作られたものです。
この利休百首を今、ひとつひとつ読み返していて、このnoteには読んだ感想や、この歌にまつわるエピソードを残しています。よかったらお付き合いください。
中継は胴を横手にかきて取れ
茶杓は直におくものぞかし
中継を扱う時は、胴の横から取ること。茶杓を蓋の上に置く時は、水平に置くこと。
この歌は薄茶器の一種、中継(なかつぎ)の扱い方について書かれています。
中継は中次と書くことができるように、蓋が深く、蓋と胴の長さがだいたい同じです。蓋が深いということは、棗のを持つときのように上から持つことができないので、胴を横から持つことになります。
お点前の時に茶杓でお茶碗に茶を入れた後、茶杓は薄茶器の上に置くものですが、その置き方も棗の場合と異なります。
棗の蓋には丸みがあるので、その丸みに沿うように茶杓を置きますが、中次の蓋には丸みがなく平たいので、茶杓を平行にして蓋の上に置きます。
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「こういうきまりだから」と教わったことはたくさんあります。「ルールは守るもの」と判断すればそれ以上を考えなくて済むかもしれません。しかしお茶に限らず日常でも、いかにルールにしばられているか、ということを感じた一首です。
この歌に妙な違和感を覚えていたのですが、その理由がようやくわかりました。中継は薄茶をいれるもの、とはいえど、私の記憶にある限り、中継を使ってお薄を点てたことがありません。(先生が私に向かって「あんた、何忘れてるの、もう」と泣くマネをされる様子が目に浮かびます……)
中継というと、桑の木地で内側が金色のもので、天皇家からいただいた(という設定になっている)生地で作られたお仕覆と古帛紗を用いた和巾点のお点前が記憶にあります。玄々斎が「復活」させたお点前で、茶器ではなく天皇家からいただいた仕覆や古帛紗が主役です。
和巾点では確かお濃茶を練っていたけれど、ここで使う中継は薄茶器なのか……。そもそも、陶器の茶入には濃茶を、木製の茶器には薄茶を、という私の稽古場ではあたりまえとなっているこのルールも、考えてみればなんだかシステマチックな気がします。
「こういうきまりだから」というのは簡単で、教える側がこういえば、これより先はありません。しかし、少なくとも茶の湯の世界は、説明が可能な背景をしっかり学べば、決まりの理由を話せるようになるかもしれません。
そんな可能性を見出した一首ですが、茶の湯は本当に奥が深いなぁ(ため息)