利休百首その7 点前には強みばかりを思ふなよ
これは私のお茶の先生がよく口にされる歌です。
でも、それにしても前の一首でおっしゃったことと矛盾していませんかと、頭を悩ませる一首でもあります。
お点前では、力強く振る舞うことばかり考えてはいけない。軽いものを持つ時は、まるで重いものを持つように、逆に重いものを持つ時は、まるで軽いものを持つように。
水がたっぷり入った大きな水指を運ぶ時。
また、薄茶のお茶碗とお棗を運ぶ時。
別の生徒さんを指導しているはずの先生が、「強きは弱く、軽く重かれ」と私の方を見ておっしゃいます。
ふと、丸まっていた背中をぴんと正そうとしたが最後、茶碗に載せていた茶杓を畳の上に落としてしまうということを、これまで何回繰り返したことか。
利休百首その6の歌で「弱みをすててただ強く」とはいえ、どんなときでも強そうにしていればよい、というわけではありません。
たとえば水指などの重いものを持つ時は、さも軽そうに扱うこと。このようなふるまいによって、お点前を見ているお客さんに重々しさを感じさせないようにすることができます。
そして大切なのが、次のことです。
逆に茶碗や茶器など軽いものを持つ場合、さも重いものを持つように、落とさないように扱うこと。
こうすることによって、ともすると粗相を起こしかねない軽率さを払拭し、ふるまいに丁重さを与えることができます。
茶の湯の教えの多くは、日常生活においても生かすことができると思います。
たとえば、スマートフォンを見る時。
ただ持っているだけでなく、機体をしっかり持ち、それから得る情報に重みを感じること。また、これから入力する文字、発信する情報に重みを与えること。
動作や文章は自然とゆったり、落ち着いた印象になる気がしますが、こちらも身につけるにはまだまだ修行が必要になりそうです。