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好き好き大好き超愛してる。・舞城王太郎

好き好き大好き超愛してる。・舞城王太郎・講談社文庫・2020年10月9日第11刷発行、を読んだ。


大学生の僕・巧也は医者によばれた。付き合っている彼女の八木智依子の肺に入った虫〈ASMA〉が、肺を出て、体内へ増殖している。これから二か月のうちに、親のASMAと子ASMAを全部取り除かないと、彼女は危険な状態となる。というわけで、手術が進められていく。病院に行く途中、公園で僕は男らに絡まれ、ケンカとなり、重傷を負わせ、救急車を呼ぶ。僕は警察の取り調べを受けるが、逮捕も起訴もされなかった。警察はその公園のトイレの地下に、彼らのアジトがあるのを発見。そこに女の子がいるのを発見し、警察は保護する。が、驚くべきことが起きる。女の子は病院で救急隊員や警官を襲い、逃げ出した、という。それも大いに気になる事態だが、僕はとりあえず智依子の病院へ。病室でいつしか眠りに落ち、ふと目をさますと、天井を歩く、さかさまの女の子が病室に入ってきた。逃げ出した女の子だった。彼女はいう、智依子のことを「どうにかしてあげるよ」と。女の子が消えると、智依子のASMAに変化が現れる。


智依子の病態も気になるのに、この後、別の女性の話に移っていく。この章での「僕」は、前のそれと同人物の「僕」なのだろうか、と思わせられながら読んでいかざるをえない点が少々もどかしいが、「僕」が小説を書いている人間だ、と明らかになり、まあ読み進みたくなる(「小説家」という主人公に、小説読みの僕たちは、たいてい弱い)。すると直後に「僕」の名が「治」だとわかることになり、別人物かとなるが、いやまて、ペンネームかも、とも思え、明らかにならない。まあいいや、そのへんは気にせず、ひたすら黙って読んでいけ。……


……読み終わった。序盤からいきなり出てきてその後も出てくる「祈る」や「愛」というものがどうもキーっぽいなとは予想できるも、うーん、よくわからない小説だなあ、と思って終盤までひたすら読んでいくことを我慢させられる作品だが、終盤で、しかけのわからなさがわかったとなって、とりあえず納得がいく。ネタバレはもちろんしないけど、それとは別の、すごいなと思ったことをひとつ書いておく。


作中に出てくる「GREENE'S MAIL DELIVERY」という年月日指定で手紙を届けるサービスがあるが、登場人物の女性が恋人へこの先百年間、百回のバースデー前日に手紙を届けるという契約を交わした。その後彼女は亡くなるのだが、亡くなった後もちゃんと毎年届けてくれるのだ── 。こんな、実際にあったらとても温かくて感動的、素敵なサービスを考えだした著者さんの発想力、すごい!



★ 好き好き大好き超愛してる。・舞城王太郎・講談社・2004年8月単行本刊行。講談社ノベルス・2006年8月刊行。講談社文庫・2008年6月13日第1刷発行。




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