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作曲少女 平凡な私が14日間で曲を作れるようになった話・仰木日向 まつだひかり

作曲少女 平凡な私が14日間で曲を作れるようになった話・仰木日向 まつだひかり・ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス出版部(第4版2017年8月20日発行)、を読んだ。こんなお話だ。


見た目も頭も普通な女子高生、16歳のいろは。平凡な学生生活の日々にくさくさしていた。自分だけの特別な何かがしたい、と思い、作曲にチャレンジ。中古のキーボードと作曲の本数冊を買い込んでさっそく始めるが、すぐに「ダメだ」となってしまった。クラスメートに天才作曲家がいる。黒白珠美といって、容姿端麗で頭脳明晰、ヘッドホンをしているとき以外は大体ぬいぐるみの帽子を被っている女の子。いろはは、作曲を教えてもらえないか、たのんでみた。珠ちゃんのいうことは驚きだ、音楽理論の本というのは作曲できるようになってから役に立つものだ、たった14日間でまったくの作曲初心者の私を作曲できるようにしてくれる、と。そして初日からさっそく本格的な作曲レッスンが始まるかと思いきや、買い物に連れ出され、音楽と関係のないような、自分の好きなものをいろいろ買い物させられる。そして、それらのもので自分の制作机を埋め尽くすよう指示された。初日にやったのは、それだけだった。こんなんでほんとうに音楽が作れるようになるのだろうか、といろはは思ったが、でも天才作曲家の珠ちゃんがいうんだし、確かな感じもした。


2日目、「でも理論は必要だと思う」「理論は間違うためにおぼえる」なんていう話。3日目、二人で映画を観に行ったあと、音楽と映画は結構似てるっていう話をする。

いまだ曲作りの実践には入らない。ただ友達同士楽しく冬休みの日々を過ごしているという感じだ。まあでも学びは楽しくいったほうがいいし、とりあえずいいか。


4日目は、なんとついに、いろは、ぬいぐるみとマフラーを作った! ではなくて(珠美のためにおたまじゃくしのぬいぐるみを作ってプレゼントし、自分はI♡ MUSICなんていうキュートな文字入りマフラーを作って身につけてきた。実は手芸の才能がある。平凡なのでなにか特別な能力がほしい、なんていっていたくせに、なんだよ、才能あるじゃねーか)、耳コピという、ようやく実践的なレッスンに入る。耳コピするのは、名曲「カントリー・ロード」。メロディやベースの音を聴いて、DAWに打ち込み、再現してみる。ちょっと面白そう、音楽作りなんかしたことない僕もやってみたくなる!


5日目、いろはは不安が爆発し、キレるだけの、短い章になってしまった。作曲のこと、ほぼなにもせずに終わるのが、かわいそうです。


6日目。傷心モードで、ひとり町をぶらついたあと帰宅、ホットカーペットに寝転がり、眠りに落ちる。夢なんか持たずふつうの人であることも悪くないんじゃないかな、と考えたりするいろは。

一方、珠美は、中一のテニス部だったときのことを思い出していた。テスト前だったが、親が買ってくれた新品の道具を使うのが待ちきれず、公園のテニスコートに出かけた。ひとり練習していると、部活仲間の同級生がやってきた。テニスの実力はすごいが、こいつはかなり性格が悪い。「ヘタクソの練習って、見てるとこっちまでヘタになりそう」「私にはどうも、あなたはただラケットを持っているのが好きなだけの別にテニスなんて好きじゃないやつで、気まぐれにコートに来てみただけの人に見えるんだけど」など暴言を吐いていって、最後に「努力してる時点で、向いてないのよ」なんて言い捨て、去っていった。

いやーこいつの言うこと刺さるなあー。テニスじゃなくても、読書や本の紹介を努力してやっている僕にも、こいつの言っていることはドギツイぞ。ぶっとばしてやろうか!(笑)


という具合で、いやな女なんかも出てくるが、音楽と友情と青春の日々の話が、ゆるーく進んでいく、全14日間、15の章から成る小説だ。形は小説だが、この本は、作曲の真の初心者、未経験者に向けた、ゼロからの入門書でもある。

小説としてもちゃんと楽しめるが、耳コピのこと、キーのこと、あの裏技のこと、……など、音楽理論知識ゼロの僕も、読みながら楽しく学べた。特に「ドレミの謎」の件については、僕的にとてもタメになった。よくテレビとかなんかで転調がどうのとかいうのを見聞きするが、さっぱりわからなかったんだ。これを読んで、転調の理解につながった。転調についてのわからなさが、一気に晴れたのはうれしかった。


★ 作曲少女 平凡な私が14日間で曲を作れるようになった話・仰木日向 まつだひかり・ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス出版部・2016年7月10日初版発行



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