【ライブレポ】2024/3/2みつの日
mitsu主催『みつの日〜mitsu&ν[NEU]〜』
2024年3月2日(土) 渋谷REX
今や365日「~の日」といった何かしらの記念日が存在し、毎日のように話題となっている。
中には日付の語呂合わせを由来としたものもあり、ここでレポートする3月2日の「みつの日」も例外ではなく、ボーカリスト・mitsuにとっては特別な日なのだ。
2019年以降、「みつの日」には毎年ライブを行ってきた中で、特に今年はソロシンガーでありながらν[NEU]の活動も並行していることから、“mitsu & ν[NEU]”としてスペシャルな内容での開催が実現した。
形式上は“2マンライブ”であるが、あくまでもmitsuがオーガナイザーとなって企画したライブということもあり、通常の2マンライブとは少々趣が異なる。
ν[NEU]というバンドのもとで表現するmitsuと、
よりセルフィッシュなベクトルで表現するmitsuと、
それぞれの立場から伝えられるメッセージや体現するスタイルはもちろん違って然るべき。しかし同じ人間であることから、そこに共通項があるとするならば、“今、どうであるべきか”ということだろう。
「予定調和や正解かどうかではなく、自分がやりたいことをやりたいようにやっていく」
「今が一番楽しく、HAPPYであることが大切。そして、それが今後へと繋がる」
ライブ中、「どちらかに絞る必要はない、どちらも好きでいい」と話していたν[NEU]とmitsuの両ステージで節々に挟んでいたMCを聞く限り、今抱いている思いというのはこういうことだった。
まず、ν[NEU]のステージが見せたのは、変わらない強みとパワーアップしたバンド力。
従来のエレクト・サウンドにダイナミックさをプラスしているのは、紛れもなくメンバーが奏でる生身の音である。
タクミと、彼の師匠でもありν[NEU]をサポートギターとして支えてくれている夢時がそれぞれ巧妙なギターフレーズを奏で、包容力を増したヒィロとЯeIのリズム隊も時折オリジナリティをプラスしながら存在感を放つ。
これらが生み出すバンド力は、「カレイドスコープ」による圧巻のスタートから、「everlasting light」で響いたシンガロングで一体感を帯びたラストまでの全11曲中、オーディエンスを高揚させ続けた。
久しぶりの披露だったとは思えない程に一瞬にして浸透した「D's Wonderland」や、「YES≒NO」や「ピンクマーブル」、そして〈妄想?――お願いします!〉の斬新なコールアンドレスポンスが生まれた「妄想接吻」といったライブ・キラーの所以も不変なものとして画にしていった。
ついでに、mitsuのハイブリーチ&前髪ぱっつんのボブヘアもまた、懐かしさをくすぐる。
2014年に解散の道を選ぶも復活を遂げた今、mitsuは「一度止まったからこそ、一歩引いて見えるものがある」と話していたが、確かに今のν[NEU]にはどこか余裕が感じられる。それは、仲間と音楽を楽しむ余裕だ。だからこそ、ステージ上でメンバー同士が目を合わせるタイミングも多く、自分たちの過去に向き合う=自分たちの生み出してきた楽曲に向き合うことことを楽しんでいる。それが、この「みつの日」のステージにもしっかりと表れていた。
そして、ソロワークとして立つmitsuのステージ。
“ソロ”といえども、この日印象的だったのが、「“mitsuバンド”もいいでしょ?」と問いかけながら、いつしか“サポート”と呼ぶことをやめて“mitsuバンド”と言うようになったということだった。
mitsuのことを初期から支えている夢時(Gt)と、パンキッシュなマインドを共有しているとも想像できるRENA(Ba)、後方から気持ちごと叩き上げてくれる大熊けいと邦夫(Dr)、そしてこの日はキーボードとして楽曲に素晴らしい彩りを加える風弥~Kazami~もいた。
もちろんサポートメンバーは流動的であるだろうが、mitsuが“バンド”という言葉を使って彼らを表したところに、ν[NEU]の時と繰り返しとなるが仲間たちと音楽を楽しんでいる姿勢を感じることができた。
ソロシンガー・mitsuとして歌い上げる楽曲はジャズ、ロックンロール、バラードといった具合にとにかく幅が広い。
ただし「エトリア」を皮切りに披露した全11曲すべてに言えることは、紡がれる想いのフレーズやその瞬間の気持ちを表す声色、すべてが自然体だということ。それが「鼓動」や「Naked」のように、まるでアンビエントミュージックのような心地よさであることもあれば、「Into DEEP」や「ラストヒーロー」のようにファイティングポーズのごとく拳を振り上げながら自分らしく戦う意思を示す強さであることもある。
「考えて音楽をやるより感じたいなと思って」と、見え方よりも自分がどうしたいかということに重きを置いていることを示していた中で、それを一際感じたのはmitsuがアイデンティティとして大切にし、ライブでラストに届けている「For Myself」だった。
ソロを始め、「歌が好き」と言えるようになった9年目、「自分のためじゃなくてみんなのために歌えるようになった」というこの曲をグッと身を屈めながら力を込めて歌い上げた。我々の視界から一瞬その姿は消えたが、これこそ見え方よりも伝え方を大切にした一つのシーンだったと受け止めている。
最後に、「歌い切った……!」
とmitsuが浮かべた達成感に満ちた笑みが、2024年の「みつの日」がどれだけ充実していたかを物語っていた。
「どちらかに絞る必要はない、どちらも好きでいい」――その理由はとてもシンプルで、“どちらも良いから”である。
この日、ν[NEU]は「Into DEEP」を、mitsuは「エンドロール」をそれぞれカバーしていた。
そして、やはり今が生んだ奇跡ともいえる光景だったのは、ラストにステージへν[NEU]のメンバーを呼び込み、mitsuバンドが演奏して届けた「スプラッシュ!」だった。
「これはν[NEU]の前身バンドからある曲で、だからこそ歌う事がすごく大変だった曲。前にあったことをなくす必要はない。
全部背負っていくので、力を貸してください。一緒に、楽しいことしよう!」
このラストシーンも、一見イベントライブでよくある“セッション”だったかもしれない。
しかし、ν[NEU]とmitsuの歴史の中で2つが交わることができた今は、その場にいた全員がここまで懸命に生きてきたからこその結果であり、それがどれだけ意味を成すことだったのかを目に見える形で刻み込んだ一時だったともいえる。
mitsuは、7月27日に「HOPE to LIVE」と題したワンマンライブを恵比寿LIQUIDROOMで控えており、ν[NEU]も2024年末に定めたゴールへとひた走っている。過去に目を向け、未来へ繋げるために今を生きる。
シンプルだけど簡単ではない、それでもν[NEU]もmitsuも、そこに目を向けて進んでいる。
しかし、彼らの理想へ向かう道は明るいだろう。
だって、最新の彼らが見せたライブは、
とても可能性と輝きに満ちたものだったのだから。
レポート・文:平井綾子
Photo:Intetsu
[ν[NEU]:セットリスト]
1.カレイドスコープ
2.LIMIT
3.Jumping Lady!
4.D's Wonderland
5.最愛と渇望の日々
6.YES≒NO
7.Into DEEP(mitsuカバー)
8.cube
9.妄想接吻
10.ピンクマーブル
11.everlasting light
[mitsuセットリスト]
1.エトリア
2.蛍
3.It’s So Easy
4.鼓動
5.Naked
6.キンモクセイは君と
7.エンドロール(ν[NEU]カバー)
8.Crazy Crazy
9.Into DEEP
10.ラストヒーロー
11.For Myself
EN.スプラッシュ!(ν[NEU]カバー)