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読書log|成瀬は天下を取りにいく

滅多に文芸ものは読まないのだが、audibleにあったし本屋でよく見かけて気になり読んだところとてもよかった「成瀬は天下を取りにいく」の読書log。

(どうでもよいのだが)活字は苦手なので例にもよってaudible。子供が「えほんよんでー」とねだる気持ちが分かってきたような。。。そんなわけで「成瀬は天下を取りにいく」の魅力を。

タイトルからして巨悪の敵と戦うのかと思いきや、そんなことはなく成瀬とその周辺人物についての日常が淡々と語られる。ではその面白さについて以下に淡々と。


当然だが、成瀬がかっこいい

とにかく主人公成瀬、かっこいい。芯があり、それに基づく行動力。「かつてなく最高の主人公、現る」というコピーのままの主人公っぷり。「他人なんか気にするな」なんて成瀬は言ってないが言われている気がする。かっこいい。

確かに変わりものに見えるかもしれない。でもこんな成瀬みたいな生き方をしたいと思いつつも、私は普通に生きたいと思い今まで過ごしてきた。

しかし成瀬は違う。いろいろな啓発本や禅にも「他人と比べるな」という言葉があり、恐らく真理の1つだと思うが、成瀬は生まれてからずっとこれを体現している。故にかっこいいのである。

多角的視点による成瀬の深堀

聴いてて最初「ん?」となったのですが、エピソードごとに一人称が変わるのもよかった。序盤は成瀬と友人の島崎が語り部で、島崎視点で物語っていくのかと思いきや次のエピソードで突然「あんた誰?」という人が語りだしで一人称が変わる。

なんじゃこりゃ、と思い聴いていたが、この表現を用いることで成瀬の人物像がさらに深く掘ることに成功している。語り部が1人だと、どうしてもその語り部のイメージに凝り固まってしまうが、異なる語り部がまた違う視点で成瀬を語ることにより、深堀りが出来ている。作者天才かよ。


複数エピソードからの見事な伏線回収

前述の通りこの物語は複数エピソードで構成されている。「まあ成瀬ならこれぐらいやるよな」と思い何気なく聴いていた前半のエピソードが、最後のエピソードでいろんな事象と見事につながるということに驚いた。

そして最後にキレイに繋がってくるだけに飽き足らず、感動まで与えてくれるとは。胸がジーンとした。伏線を伏線と思わせないスバラシイワンピース顔負けの伏線回収でした。

ちなみに次作の「成瀬は信じた道をいく」でも本作のエピソードが絡んでくる。また読み返したくなっちまった。作者天才かよ。

取材すげぇ、というか出場しているのでは

作者は地元愛が強く、滋賀県大津市の描写が富んでいるのはまあ分かる。でも少々ネタバレになるが成瀬たちがM1グランプリに出るエピソードでは、M1の描写がとても詳細に書かれており驚いた。聴いてて思わず「実際作者も出たことあるのではないか?」と思えるほどだった。

ちなみに素人目線ではあるが、漫才ネタもよく出来ている(気がする)。ちゃんとPDCAサイクルを回してネタを昇華させていく成瀬と島崎もとてもよかった。作者天才だよ。

年代が被る奇跡

先述した通り、エピソードごとに語り部が変わる。その中で年代がとても近い人たちのエピソードがあり、ゲームボーイが話に登場する。

今となってはSwitchやスマホを使ってゲームを外で出来るのは当たり前だが、私の子供のころはゲームを外でやるなんて夢の話だった。そんな夢を叶えてくれたのがゲームボーイだった。

私と(ほぼ)同年代の人物たちがゲームボーイを持って外でテトリスをするのだが、私はそれと同じことをやっていたことがあり、とても懐かしい気持ちになれた。

ちなみに余談ではあるがゲームボーイは対戦の際、物理ケーブルでゲームボーイ同士を直接繋ぐ必要がある。当時小学生の私からすると本体だけでも高いのに、ケーブルなんて買う金は無く、友達に借りて対戦していた思い出が蘇る。作者、思い出させてくれてありがとう。

(いい意味で)地元愛が過ぎる

とにかく、いい意味で滋賀愛が強いw いや、正直知らんがな、という話題も詰め込んでくる。逆にそれがいい。

そして数あるエピソードの中で、西武大津店は行きたくても行けないのだが、ミシガンにはぜひ行ってみたいと思った。

船好きなんですよ、というか乗り物全般が好き。滋賀に行ってみたいと思わせる作者すげぇ、ありがとう。すき。


まとめ

久しぶりに文芸もの読みましたが、いいもんですね。でもやはり、刺さったのは地元愛の強さなんですかね。滋賀県の人たちなんて読んでて楽しいんだろうなー、と羨ましくなってしまいます。

私の地元もこういった日常ものあるかもしれないなー、読んでみたいなー、と思いました。読むときっと嬉しくなってしまうんだろうな。

では、読んでいただきありがとうございました。。。いや、成瀬はこんなこと言わないな。

「ここまで読んでくれたのか、ありがとう。また会おう」

ではまた。

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