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リーガルリリー 3rdフルアルバム『kirin』 鮮やかな挑戦作


8月29日に、リーガルリリーの通算3枚目となるフルアルバム『kirin』がリリースされた。

 高い評価を受けた前作『Cとして生けるもの』から約2年半ぶりとなる今作は、彼女達が次のフェーズに繋げるための役目を担う重要な作品だ。


 しかし今年3月、高校生の時から活動を共にして来たゆきやま(Dr.)が脱退を発表。2人体制になるなど、バンド活動において大きな変化があったリーガルリリーにとって様々な要素が詰まった渾身の3rdフルアルバムだ。


 そんな今作は、米津玄師や常田大希(King Gnu、MILEENIUM PARADE)といった数多くのアーティストの楽曲制作に参加をしているドラマー石若駿。音楽プロデューサー亀田誠治といった敏腕ミュージシャン達が制作に参加しており、これまで以上に完成度の高い楽曲が連ねている。


 過去2作品のアルバムにおいて彼女達は、「幻想」と「現実」をボーダーレスに掻き鳴らすオルタナティブサウンドをベースに、たかはしほのか(Vo,Gt)の力強くも佳麗な歌声で「祈り」を歌ってきた。


 今作はそんな彼女達のアイデンティティに、終始ダイナミックでドラマチックな展開が加わった。


 聴いていると、我々の普段の生活は広い世界の一部としてしっかり存在しているという気付きを与えてくれる。


 また、ナイトダンサーな心情を抱いてしまう4曲目「ハイキ」や、孤独な若者の物淋しさを疾走感のある激しいバンドサウンドで歌った10曲目「60W」など、様々な新しい一面を覗かせる。


  さらに7曲目に収録させている「ムーンライトリバース」は、これまで彼女達の楽曲にありそうでなかった正真正銘のオルタナティブロックバラードだ。

 最後の12曲目となる「ますように」は、まさしく今作を締めくくるのにふさわしい楽曲である。新鮮で爽やかな印象な与える壮大なストリングスと、当たり前のように過ぎていく日常への「祈り」を変わらずに歌うボーカルに聴いていて感慨にひたってしまう。


 今作はそんなリーガルリリーのこれからに新しい風を吹き込む意欲的な一枚だ。


 今年バンド結成10周年を迎え、7月からはじまった全国ワンマンライブツアーで彼女達はどんな雰囲気を解き放っているのか楽しみにしておこう。
















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