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誰からも求められないという問題:【映画企画を成立させる「説得力」とは何か?】

映画のアイデアや企画は、基本的に 「作者の内側」 から生まれるものであり、それを映画として完成させるには多くの障害がある。
特に 「誰からも求められていない」 という根本的な問題をどう乗り越えるかが鍵になる。

その説得力を持たせる要因はいくつか考えられるが、そのうちの一つを挙げるとすると「物語の文学性」 が、解決策になるのではないかという仮説に大いなる可能性があるのではないでしょうか?



1. 映画企画を支える「説得力」の本質

映画が作られるには、必ず 「作らなければならない理由」 が求められる。
しかし、新しい企画というものは、最初から観客やプロデューサーに望まれているわけではない。
では、何がその説得力を生み出すのか?

 (1) 作者の強い内的必然性

  • まず、作者自身が「この映画を作らなければならない」という確信を持つこと。

  • 例えば黒澤明は、『乱』の構想を40年間温めていたが、それを作る強い理由を感じたからこそ実現できた。

 (2) 社会的・文化的な必要性

  • その物語が「今、この時代に必要だ」と多くの人に感じさせるものがあるか?

  • 例:『パラサイト』が世界中で共感を呼んだのは、貧富の格差というテーマが普遍的だったから。

 (3) 物語の文学性(普遍性)

  • 「文学性」とは、時間を超えて人々に訴えかける普遍的な要素を持つこと。

  • 映画の物語に 古くから伝わる神話や寓話、心理的な構造が見えてくる と、観客は自然に共感できる。


2. 「文学性」が映画の説得力を生む理由

もし映画の企画が、「完全に新しい、誰も見たことのないアイデア」だった場合、それを説得するのは非常に難しい。
しかし、その物語が 「人間が昔から求めてきた何か」 に根ざしていれば、企画としての説得力が生まれる。

 映画の「文学性」とは何か?

  • ① 神話的な構造(ヒーローズ・ジャーニー)

    • 例:『スター・ウォーズ』『千と千尋の神隠し』

    • 古代神話のように、「旅」「試練」「成長」の要素を持つ物語は、自然と観客の心に響く。

  • ② 人間の根源的なテーマ(愛・死・喪失・希望)

    • 例:『タイタニック』→ 愛と運命の物語

    • 例:『シンドラーのリスト』→ 人間の善と悪、歴史の悲劇

    • 人が避けられない「生と死」などのテーマがあると、作品は深みを持つ。

  • ③ 社会の寓話(現代を映し出す鏡)

    • 例:『パラサイト』→ 資本主義社会の格差

    • 例:『マッドマックス 怒りのデス・ロード』→ 環境破壊と支配の寓話

    • 映画が「寓話」になると、観客は無意識のうちにそのテーマに引き込まれる。

 なぜ「文学性」が観客と作品をつなぐのか?

  • 人間は物語を求める生き物だから。

  • 「新しさ」だけではなく、「古くから人間が持っている感情」や「普遍的なテーマ」があると、共感しやすくなる。

  • 「個人的な話」が「誰にとっても意味のある話」に変わる。


3. 映画の企画を持ち堪えさせるために

映画の企画が「なぜ作られるべきなのか」を示すために、以下のポイントを考えるべきだ。

(1) 自分だけの「作る理由」を明確にする

  • なぜこの物語を語る必要があるのか?

  • 例:黒澤明が『生きる』を作ったのは、人間が「本当に生きるとは何か」を問いたかったから。

(2) 物語の「文学性」を意識する

  • 普遍的なテーマは何か?

  • 例:愛、死、運命、希望、成長

  • 「新しさ」だけでなく、「人間にとって根本的な何か」を含むことが重要。

(3) 社会とのつながりを意識する

  • この物語は「今の世界」にどんな意味を持つのか?

  • 例:『ジョーカー』が世界的にヒットしたのは、社会の格差と孤独の問題を反映していたから。

(4) 直感的に「これは見たい」と思わせる力を持たせる

  • 観客が「この映画は気になる」と思う要素を入れる。

  • 見た瞬間に「これは観るべきだ」と感じさせるフックが必要。


結論:映画を「作るべき理由」は「文学性」によって生まれる

新しい映画企画は、最初は誰も望んでいないかもしれない。
しかし、その映画の物語が 「人間が古くから持つ感情やテーマ」 を含んでいれば、観客とのつながりが生まれる。

つまり、映画を作る説得力は、
・監督自身の強い想い
・普遍的なテーマ(文学性)
・時代とのつながり
の3つが合わさることで生まれる。

新しい映画を成立させるには、「これは必要な物語だ」と思わせる力が必要。
そのために 「物語の文学性を深く掘り下げること」 は、映画の説得力を生む大きな要因となるだろう。

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