スカーレット (テレビドラマ) 朝ドラ
『スカーレット』は、2019年度後期放送のNHK「連続テレビ小説」第101作で、2019年9月30日から2020年3月28日まで放送されたテレビドラマ。連続テレビ小説における令和に初回を迎えた最初の作品である。
出演者
戸田恵梨香
富田靖子
松下洸平
伊藤健太郎
大島優子
林遣都
桜庭ななみ
福田麻由子
黒島結菜
溝端淳平
羽野晶紀
三林京子
マギー
西川貴教
佐藤隆太
烏丸せつこ
財前直見
水野美紀
イッセー尾形
稲垣吾郎
北村一輝
ナレーター中條誠子
音楽冬野ユミ
オープニングSuperfly「フレア」
時代設定
1947年(昭和22年)春 - 1987年(昭和62年)秋
信楽焼で知られる滋賀県信楽を舞台に、女性陶芸家「川原喜美子」の半生を描く。
2023年6月12日から9月22日まで、チャンネル銀河にて2話連続で放送された。
あらすじ
昭和22年、9歳の川原喜美子は、戦後の食糧難と父・常治の事業失敗による生活難のため、一家で大阪から常治の戦友・大野忠信が住む滋賀県の信楽に転居する。同級生に貧乏を囃し立てられ屈辱に耐えるある日、常治が買い出し先で出会った引揚者・草間宗一郎を連れ帰り、沈鬱する彼を療養目的で居候させる。給食費支払いも困難な生活を逼迫するゆえに草間を当初疎ましく感じた喜美子だったが、彼から人としての分別や柔道を教わり、草間も彼女に励まされ互いに打ち解けていく。一方喜美子は、大野家の一人息子・ 信作と、裕福な信楽焼窯元「丸熊陶業」の娘・熊谷照子から勉強を教わったり、一緒に柔道に励んだりし、友情を築いていく。
5年後、教員が進学を勧めるほど成績優秀で絵が得意な中学3年生になった喜美子は、家計のため卒業後は丸熊陶業で働く予定であった。しかし卒業目前に、丸熊陶業から男社会を理由に内定を取り消され、事を知った常治は喜美子に大阪の「荒木商事」への就職を決めてくる。就職話を承諾するも信楽を離れる寂しさを感じた喜美子だが、常治が勧める丘から見える美しい夕陽を見て気持ちを切り替え、その場で古い信楽焼の欠片を拾って旅のお供として、大阪へ旅立つ決意を固める。
喜美子は、社長・荒木さだの自宅兼下宿屋である「荒木荘」の女中の仕事を与えられる。当初、先輩女中の大久保のぶ子に、仕事は出来ないと見解され、彼女が促すまま信楽に帰ろうとした喜美子だったが、応援する母・マツの手紙を見て考え直す。大久保から休む間も無く仕事を命じられ、更にさだから「大久保が辞めるまでは見習いのため月給千円[注 3]と言い渡され、苛立ちながらも表には出さず、喜美子は真面目に仕事に取り組んでいく。ある日、下宿人の新聞記者・庵堂ちや子の会社から好条件な転職話が舞い込み気持ちが揺れる喜美子だったが、ちや子の働きぶりを知り自身の半人前な現状に気づいたことや、大久保のさり気ない優しさを知り「3年は実家に帰らない」と誓い、改めて荒木荘で働き続ける決意を固める。2年半後、大久保から引き継ぎ独りで荒木荘を切盛りするようになった喜美子は、貯金し美術学校への進学を目指していた。そんななか、下宿人の医学生・酒田圭介に恋をするが、彼が恋人の希望で転居し失恋。その後、志望校の講師で世界的芸術家・ジョージ富士川のサイン会で喜美子は、仕事で会場を訪れていた草間と偶然再会する。
草間との別れの後、マツが倒れたとの常治の嘘を信じ信楽に駆けつけた喜美子は、理由を告げず帰郷を迫る彼に対し、荒木荘の仕事と進学への夢を理由に反発する。しかし、窃盗被害と仕事の不調で自棄を起こした常治の借金で荒んだ家庭事情を知り、急遽荒木荘の仕事を卒業し信楽に戻る。常治の交渉で丸熊陶業の社員食堂に再就職した喜美子は、絵付係の仕事現場を見て絵付け師になりたいと思い、更に絵付け師で日本画家・深野心仙の生き様を知り、弟子入りを望む。当初、修行の長さや家庭との両立の難しさなどから現状では無理と諦めようとした喜美子だったが、彼女の本音を知ったマツは協力に動き、妹たちは応援する。喜美子を早く結婚させ婿を取ろうと画策していた常治は猛反対するも、偶然深野と酒を交わし話すうちに喜美子の弟子入りを認めることとなる。
修行を重ねて絵付け師の仕事をもらえるようになった3年後の昭和34年夏のある日、深野からの打診で喜美子は火鉢の絵柄をデザインする。デザインは照子の夫で次期社長候補・敏春の目に留まり採用されるが、利益を上げたい彼の画策で、喜美子は不本意ながら会社のマスコットガールに仕立て上げられる。程なく社長に就任した敏春は主力商品を従来の絵付け火鉢から植木鉢に移行し、絵付係の縮小を決定。深野と弟子たちはそれぞれ進路を見つけ旅立つことを決める。一人で絵付係を請け負うことになった喜美子は、高校進学を志望する末妹・百合子の学費のため、敏春に賃金引き上げを直談判。敏春に承認された喜美子は、深野から一人前の絵付け師と認められる。同時期、喜美子は新入社員・十代田八郎と親しくなり、彼から陶芸を教わるうちに相思相愛へと進展する。陶芸家を目指す彼との結婚に常治は不安を感じ猛反対するが、展覧会で受賞を条件に承諾。紆余曲折を経て新人賞受賞を果たした八郎は、川原家の婿養子になる形で喜美子と結婚する。
その後、喜美子と八郎は丸熊陶業から独立し「かわはら工房」を立ち上げる。昭和40年には大量注文も舞い込むようになり、長男・武志を育てながら夫婦で陶芸に勤しんでいた。同年の夏、常治が末期がんと診断され冬に死去。すれ違っていた喜美子と八郎は、葬儀後話し合い絆を深める。そんななか、東京で働いていた長妹の直子が会社を辞め帰省。恋人の鮫島正幸と大阪で商売を始めるため再び旅立つ。またジョージ富士川の講演会が信楽で開催。喜美子は諸事情で行けなかったが、八郎の計らいで再会を果たし、夫婦は彼から英気をもらう。そして4年前の受賞以来燻っていた八郎は翌年春の陶芸展で金賞を受賞。それまで陶芸職人に徹していた喜美子も、八郎の後押しもあり、初めて自分のために陶芸作品を生み出す。
昭和44年、かわはら工房は八郎の陶芸作品の製造販売が中心となる。喜美子も陶芸を創作することはあるものの公にすることはなく、相変わらず八郎を支えていた。八郎は個展を開催し2人の弟子がつくようになるが、作品の売れ行きは不調で、関係者らから新作を促されるも傑作は出来ず、壁にぶつかっていた。銀座での個展開催に向け、八郎は創作に集中するために弟子らを解雇。その直後、松永三津がやって来て弟子入りを懇願する。当初固辞した夫婦だったが、三津が八郎の創作に良い影響を与えると感じた喜美子は、彼女が泥棒被害を食い止めてくれた礼として弟子に採用する。一方で喜美子も八郎を励まそうと陶芸を創作し、展覧会に出展する。しかし、上手くいかない自分の隣で、才能を発揮し進んでいく喜美子を目の当たりにした八郎は、同じ経験を持つ三津に「しんどい」と吐露。三津のアドバイスで八郎は初期の作風に戻り、彼女の話から和食器のディナーセットを作る事を思いつき創作に拍車がかかる。喜美子は変化した八郎に戸惑うある日、三津から八郎の本音を聞くも、彼の気持ちを理解出来ず、価値観を同じとする八郎と三津の仲や、三津が八郎に惹かれつつある様子に複雑な思いを抱いていく。結局、展覧会で落選した喜美子は、展覧会で受賞し八郎を喜ばす目標を掲げる。大阪就職前に拾った信楽焼の欠片と同じ、自然釉の陶芸を作りたいと思うようになった喜美子は、その為の穴窯設置を計画する。維持と使用に莫大な費用がかかることが判明し、計画見送りを考えた喜美子だったが、八郎に背中を押され、家族からも理解と支援を得て、設置を決める。やがて穴窯が完成し、期待を込めて初めて火入れをするが、結果は失敗。同じ頃、三津は八郎への想いを断つため、表向きは穴窯使用反対を理由に、かわはら工房を去っていく。2度目の穴窯挑戦も失敗し、多額の支出が続くことを危惧した八郎は、穴窯使用の中止を喜美子に説得する。しかし、家族の貯蓄を切り崩してでも穴窯を諦めようとしない喜美子に八郎は憤り、家出する。夫婦別居生活が始まった直後の3度の挑戦も失敗した喜美子は、百合子の勧めで12月末、息抜きがてら武志を連れて大阪に行き、ちや子の自宅を訪問する。そこで、荒木荘時代の人々と再会を果たした喜美子は英気を養い、再び穴窯への挑戦を胸に帰宅する。翌年、喜美子は信楽信用組合から借金しつつ失敗と研究を重ね、7度目の挑戦は穴窯を2週間炊き続ける事を決める。事を知った八郎は、穴窯が破損し火事になる恐れもあり猛反対するが、同時期に駆けつけた草間の応援を力にし、喜美子は実行に移す。八郎の予想通り穴窯は一部崩落するも応急処置で乗り切り続行、その結果12月、喜美子が目指した自然釉の信楽焼が成功する。
ちや子が穴窯成功を取材し女性陶芸家として名が広まった喜美子は個展を開催、昭和53年には後援会が出来るほどの陶芸作家となっていた。高校2年になった武志は進路に悩み続けるが、5年前に離別した八郎を訪ねて相談した結果、陶芸家を目指すことを決意。猛勉強を経て昭和54年春、京都の美術大学に合格し大学近くで寮生活を始める。同年夏にはマツが他界。既に百合子も信作と結婚し家を出たため、喜美子は独り暮らしとなる。武志が卒業し帰宅するも束の間、武志は自ら家を出て、信楽窯業研究所での釉薬の研究とゲームセンターでのアルバイトを掛け持ちしながら独り暮らしを始める。ある日、かわはら工房に資産家出身を名乗る老女・小池アンリがやって来て、初成功した自然釉薬の作品の買取を願い出る。喜美子が非売品と説明するも小池は聞き入れず、大金を積み重ねてでも作品を欲しがり根競べとなるが、最後には小池が諦める。そして喜美子作品に心酔する小池と話を交わすうちに喜美子も打ち解け、小池を川原宅に受け入れる形で一緒に暮らし始める。また、喜美子の本心を知った小池のアドバイスや、武志との他愛ない話から、自分が意識する以上に周囲が八郎との仲を気遣っていると気づいた喜美子は、再び八郎との距離を縮めていく。喜美子の作品と人柄に英気を養った小池からパリへの旅に誘われた喜美子だったが、工房に残り作品作りに精を出す。
武志が慢性骨髄性白血病を発症。喜美子は看病しながらドナーを探すが死別する。長崎へ移る八郎とも別れた喜美子は、今後とも作品作りに励むのであった。