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向けあった背と背…ケレン・アン 〈ブルー 〉

向けあった背と背、甘い肌触りのシーツの中
通りに面した部屋に満ちるウイスキーの香り
何ものにも換えられないこの重い沈黙が
私の軽率さを揺りかごのように慰め包む

ケレン・アンが2019年に3月、フランス語メインのソロ・アルバムとしては14年越しにリリースした《Bleue ブルー》の中の2曲目の先行発表曲で、かつアルバム・タイトル曲の 〈 Bleu ブルー 〉。

優しくほんわり明るい曲調。
ありきたりのトーチ・ソングとも違う、微妙な大人の歌。
いつくしい思いと虚しさの交差する切り取られた瞬間というべきか。

憂愁のブルーの色合いは淡くフェードアウトするのか、激しいドラマに豹変する一歩手前なのか、胸苦しいようなスリリングさがある。


https://youtu.be/ruZFeJTZsd4




ブルー詞・曲
ケレン・アン


向けあった背と背、甘い肌触りのシーツの中
通りに面した部屋に満ちるウイスキーの香り
何ものにも換えられないこの重い沈黙が
私の軽率さを揺りかごのように慰め包む

あなたが私を知ったのは別の人の腕の中にいる時
ここで、あなたは私の一ミリ一ミリを知っている
良心は私の心を困らせるはずなのだけど
だけど、私はひきょうもので
離れたくない

そのブルーの視線から
すばらしいブルー
恋しているブルー
勇気のないブルー
そのブルーの視線
狭間に迷うブルー
さよならのブルー
私の全部を欲しがりながら

寄せあった頬と頬、眼は開けて。
恐しい絶望の予感の明日
誰にも明い日の光が見えていない
眼が覚めればすぐに、輝かしく
照らしてくれるはずなのに。

そのブルーの視線
すばらしいブルー
恋しているブルー
勇気のないブルー
そのブルーの視線
狭間に迷うブルー
さよならのブルー
私の全部を欲しがりながら

向けあった背と背、甘い肌触りのシーツの中
通りに面した部屋に満ちるウイスキーの香り
何ものにも換えられないこの重い沈黙が
私の軽率さを揺りかごのように慰め包む

Bleu
Par Keren Aann


Dos contre dos dans des draps exquis
Chambre sur rue embuée de whisky
Rien ne vaut ce lourd silence
Qui vient bercer mon imprudence

Tu m'a connue dans les bras d'un autre
Là, tu me connais au millimètre
La conscience peut m'embrasser
Mais je suis lâche
Je veux pas laisser

Ce regard bleu
Bleu merveilleux
Bien amoureux
Qui n'ose guère
Ce regard bleu
Bleu d'entre-deux
Bleu d'adieu
Qui me veut toute entière

Joue contre joue, les yeux ouverts
Un lendemain qui exaspère
Nul ne voit le grand soleil
Qui fait briller
Dès le réveil

Ce regard bleu
Bleu merveilleux
Bleu amoureux
Qui n'ose guère
Ce regard bleu
Bleu d'entre-deux
Bleu d'adieu
Qui me veut toute entière

Dos contre dos dans de draps exquis
Chambre sur rue embuée de whisky
Rien ne vaut ce lourd silence
Qui vient bercer mon imprudence

繰り返し聴いていくと、かなりよく練られていることに気づく。
「背中と背中を向けて」は「今」で、その4行からあとは時間が遡っている。
そして「 頬と頬を寄せて」が、同じ2人の位置関係でも、冒頭より時間が先行している。

背と背を向けあっているから、相手の青い眼は見られないはずで、具体的な視覚的ブルーはすべて心象のなか。

4行目の「重い沈黙がゆりかごのように自分を抱き包む bercer」から、男の「腕の中」の記憶の表現を5行目に呼びこんでいくわけだが、曲末の、現在に針を戻す冒頭の4行が再現するときにその4行目でで終わるのは、自分を抱き慰めるものは沈黙以外他になにもないという、他者-相手の不在感を際立たせる。音楽的にはそしてここではちゃんと終止してない。


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