JFA U-18 女子サッカーファイナルズ 藤枝順心高等学校対日テレ・東京ヴェルディメニーナ
2024年9月16日
藤枝順心高等学校 0-2 日テレ・東京ヴェルディメニーナ
一昨年より日本サッカー協会が「全国高等学校体育連盟の所属チームと、日本クラブユースサッカー連盟の所属チームが対戦する、U-18年代女子チームの真の日本一を決定する大会として実施する(大会実施要項より)」という目的で始まったU-18女子サッカーファイナルズは2年連続で高校王者 藤枝順心とクラブ王者メニーナの対戦となった。
メニーナはこの年代の主力である松永未夢が今季ベレーザに昇格しまた同時期に飛び級でU-20W杯に招集されたことから不在。
スポーツ雑誌Numberにも取り上げられますます注目を集める眞城美春と現在イングランドで活躍する清水梨紗二世の呼び声も高い青木夕菜はこの試合の前夜、キックオフから約15時間前にトップチームであるベレーザの一員として昨季のWEリーグ王者とリーグ戦をそれぞれ約60分間、約35分間非常に強度の高いプレーをし体調面も不安視される中、高校王者に対しどのような戦いを見せるのか注目の一戦となった。
味方に優位を与えるビルドアップ
メニーナは非ポゼッション時4−4−2で構え、
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ポゼッション時には須長がピヴォットの位置に入りオーソドックスな4−3−3の陣形に並ぶのに対し、藤枝順心は中盤の3枚、前線の3枚がフラットに並ぶ”4−3−3”の陣形に並びかつてメニーナとして共に中学年代日本一となった新宮さくら率いる前線から積極的に守備をする。
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試合開始からメニーナはこの4−3−3の形で後ろからじっくりボールを握り、藤枝順心の前線3枚のプレッシャーをいなしながら試合のペースを握る。
相手のプレスを回避する重要な役割を担ったのは6番の位置でプレーする高校1年生 須長穂乃果。
最終ラインからパスを”3人目”として受け素早くフリーの味方にボールを渡していく。
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前線、中盤がそれぞれ3枚の藤枝順心はメニーナがフリーの選手に繋ぐたびに左右に大きくスライドする必要に迫られる。
そのような形から試合が動いたのは17分。CB朝生から外に開いたインサイドハーフ伊藤が左でボールを受け、
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左からの突破を諦め一度最終ラインまで戻すと、メニーナはすぐさま逆サイドに展開
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相手を左右に揺さぶったところでボールを持った朝生が”3人目”の須長へパス。相手が食いついた須長はワンタッチでフリーの松岡へボールを繋ぐと
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そのフリーになった松岡を捕まえようとさらに相手が中盤から飛び出してくる。その背後に出来た広大なスペースで待つ栗田へ”3人目”の青木を介してボールを繋ぐと
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ハーフスペースでフリーになった栗田が起点となり右のワイドで待つ式田が裏へ抜け相手の最終ラインを突破。
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この式田が上げたクロスからのシュートが相手の手に当たりPKを獲得。青木が冷静に決めメニーナは先制点を挙げた。
体格差をハンデにしない楔のプレー
須長を起点としたビルドアップを止めようとする藤枝順心は試合時間20分頃から中盤から植本が積極的に須長を捕まえようと飛び出してくる。対するメニーナは中盤をバイパスし、最終ラインから一気に前線へボールを繋ぐことを試みる。
この日、高校年代日本一を決める試合にFWとして先発出場したのは、僅か半年前まで小学生だった中学1年生の西尾咲希。
そんな彼女のフィジカルはまだ成長過程にあり、当然ながら前線への長いボールを受ける際に高校生に強く当たられるとボールをロストしてしまう。
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フィジカルでは相手に分があるが、西尾はこれを頭脳と技術で回避。
31分、朝生から直接ボールが西尾へ入ると
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相手が寄せきる前にすでに前を向いて準備が出来ている須長へファーストタッチでレイオフ
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素早くサイドに展開し相手を揺さぶった。
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ピッチ上にボールより速く走れる選手は一人もいない。いつ、どこで、どのように誰がボールを受けるのかという技術は、時に体格差を上回ることができる。
今季これまでカップ戦、リーグ戦を合わせて3試合を戦ったトップチームのベレーザでは、前線の選手が後ろ向きにボールを受けるとそのまま相手を背負ってキープし相手に囲まれてしまうか、少しでもコントロールがずれれば一気にボールを失いかねない狭い場所での180度ターンをするかのいずれかのシーンが多いが、このメニーナの常に味方の斜めにポジションを取り続けボールを受けた選手には必ず前もしくはすぐに前を向ける横向きの選手がいる状態を作り素早くボールを回すことでゴールに向かっていくこのプレーからベレーザも学ぶことも多いのではないだろうか。
世代別日本一という通過点
メニーナはベレーザの下部組織であり、メニーナにとって将来ベレーザ、日本代表、そして海外のビッグクラブで活躍できる選手を育成することは、その年代で日本一になることと同じかそれ以上に重要な目標である。
試合後メニーナを率いる坂口監督が
皇后杯ではなでしこリーグの1部チームを倒し、WEリーグのチームにチャレンジをすることを目標に、選手の成長を第一に考え、願わくば3年前のような良い結果で、選手にいい景色を見せたいと思います。
と語るように照準はすでに年齢カテゴリの壁のない皇后杯に向いている。
坂口監督が引き合いに出す”3年前の皇后杯”ではメニーナはプロチームを破りベスト4に進出。
この時の主力メンバーは当時キャプテンを務めた坂部幸菜を筆頭にベレーザの主力として活躍。大学サッカーに進んだ大山愛笑も同日行われたU-20W杯準々決勝スペイン戦で決勝点をアシストする等国内外で大活躍をしている。
この日のメニーナも全員が将来が楽しみなタレント揃いである。
西尾と同じ中学1年生ながら左ウィングで先発出場した小野葉月はスピードを活かした突破だけではなく、外でボールを持ち相手と対峙してラ・パウザ(一瞬止まるプレー)でレフトバック鈴木のオーバーラップを誘発する等クレバーな一面も見せた。
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先述のピヴォットを介したビルドアップは昨年から2大会続けての出場となった中学2年生 伊藤風葵も完璧にこなすことができ、
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インサイドハーフとしてのチャンスメイクだけでなく早くも万能型MFとしての片鱗を見せている。
世代別日本一を通過点とするメニーナの選手たちが日本一へ、世界一へ将来大きく羽ばたいていくことを期待したい。
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