’22-’23WEリーグ第21節 ベレーザ対パルセイロレディース
2023年6月3日
日テレ・東京ヴェルディベレーザ 3-3 AC長野パルセイロ・レディース
ホーム最終戦に表出した今季の課題
前節2位の座を争うINAC神戸との一戦を引き分けたベレーザは、最後の望みを賭け前節首位浦和を破ったAC長野パルセイロレディースとの今シーズンホーム最終戦を迎えた。
首位浦和を破り勢いに乗る長野は立ち上がりから積極的な前線からの守備を見せる。
最終ラインに今季これまでチームを牽引した主将 村松を欠くベレーザは左CBに宇津木を起用。積極的にポゼッションを失うリスクを取り前線に一気に繋ぐ宇津木の横には坂部が並び、その1列前のアンカー木下と3人でのビルドアップを試みるも、長野の積極的な守備の前に坂部のパス選択が消極的になる。
23分には二人のパス選択を象徴するかのように坂部から宇津木へ横パスが入ると
宇津木から一気に前線へ繋ごうとするが
レフトバック木﨑、左ハーフスペースで待つ小林のいずれも反応できずポゼッションを失った。
左CB宇津木のリスクを厭わないパスの選択は直接失点に結びつく。
18分、長野の選手2枚に囲まれた菅野へパスを通そうとしたところをカットされ
三谷が奪ったボールを拾った瀧澤にそのままゴール前まで運ばれ失点した。
3−2−5のフォーメーションで皇后杯を制した後、そのフォーメーションで中心的役割を担ったCB岩清水を欠いたベレーザはリーグ再開直後のジェフ戦で相手のハイプレスに苦戦したが、
本試合も第18節に3−2−5のフォーメーションで大勝したもののCB村松を欠きフォーメーションを変更せざるを得ない似たような状況でハイプレスに苦戦することとなった。
また、アタッキングサードではチームでトップクラスのシュート力を誇る藤野が右ウィングでの起用となったことから、クロスに頼る攻撃が多く見られた。
37分には外側に開いた藤野の内側をライトバック宮川がアンダーラップし、
ファーで待つ植木の頭に合わせたが、相手にブロックされた。
”頭利き”の植木がPA内ファーサイドでヘッドを狙う形は今季度々見られるが、ヘディングシュートは同じ位置からの足でのシュートよりも成功確率が低く、今季のベレーザは前期11試合を終えてxGよりも実ゴール数が大きく下回っている。
攻撃の形にも今季の課題が見え隠れする前半となった。
解決策の持続可能性
確率論的な”揺らぎ”(偶然の要素)が結果に大きな影響を与えるサッカーでは、時にその課題から良い結果が生まれることがある。
この試合のベレーザの先制点は、先に課題として上げたそのクロスから生まれた。
14分、藤野の内側をアンダーラップする宮川へアンカーの木下から鋭いパスが通るとその宮川から藤野へパス
そのまま縦に突破しファーで待つ植木を狙ったクロスを上げると
ボールはネットにそのまま吸い込まれラッキーな先制点となった。
また、試合序盤から課題となっていた長野のプレスに対するビルドアップでは、アンカーの木下が個人技で状況を打開する。
42分、木下が相手3枚に囲まれながらボールを受けると、華麗なドリブルで相手守備を回避
最後は倒れながら右サイドで待つ藤野へスルーパスを通すと、
藤野は一気に加速しドリブルでエリア内まで侵入するとファールを受けPKを獲得、自ら決め追加点を奪った。
どちらも結果的には得点に繋がったが、課題に対する解決策として「偶然が起こるまで回数を重ねる」というのは持続可能な方法では無いだろう。
前半に表出した課題に対し、ベレーザベンチはライトバックにFW山本柚月を起用する。
右サイドに攻撃の厚みを増したベレーザは
(こちらも前半の課題であった)CB宇津木からのリスクを厭わないパスからチャンスを作る。
75分、左CB宇津木から前線に一気に長いボールを入れると
右サイドの藤野に繋がり、その藤野がゴール前へ早いクロスを入れると
ゴール前に詰めた小林が決め3点目となる追加点を奪った。
しかし、ライトバックにFWを起用した結果、守備には不安を残すこととなり、83分にはクリアミスからGKと1対1になるピンチを招き
89分には途中出場の鈴木日奈子に山本と坂部の間でランニングを許し、
山本が振り切られるとまたしてもGKと1対1の状況となり、
痛恨の同点弾を許した。
シーズン開幕直前にライトバックとして不動の地位を築いた清水梨紗が移籍し、FWの木村彩那をコンバートしたが
その時を彷彿とさせる失点となった。
残り1試合
今季の経験した複数の課題を、今季なかなか勝ち星を上げることが出来なかったホームの最終戦で一気に経験したベレーザ。
それらの課題に対する根本的な解決策を見つけることが出来ないままここまで来た背景には、主力の海外移籍、怪我等でメンバーが最後まで固定出来なかったことがある。
試合後のインタビューでも
と竹本監督が語った通り、メンバー編成は最後まで”真の課題”であった。
そんな今シーズンも残り1試合となり、このメンバーで戦うのも残り1試合となった。
シーズン終了後にW杯を控え、さらに2024年にはオリンピックも迫る中、W杯終了後には、大会中に良い経験も悪い経験もする選手たちは海外移籍を含めた様々なキャリアの選択肢を考慮するであろう。
代表クラスが多く在籍するベレーザの主力選手たちもその例外ではない。
このメンバーでの最後の試合になる次節は、今のメンバーで最高のサッカーをすると同時に、来季に繋がるものをどれだけ積み上げることが出来るかが来季のスクァッド編成を考える上でも重要になるであろう。
リーグ順位が決定した今、少しでも未来に繋がるリーグ最終戦になることを期待したい。