第3章 「ななめ向かいのタカハシさん」
今日、ななめ向かいのタカハシさんに会った。
1ヶ月くらい前、農園で収穫して、あり余った梅をおすそわけした。それが最初で最後のおすそわけだった。
今日は近くの川に散歩しに行くのにタカハシさん家(ち)の前を通ったとき、たまたま会った。
「ちょっと川までウオーキングしてきま〜す」って、きっとタカハシさんにとって宇宙一どうでも良いことだけを言って、歩き出そうと思ったら、わざわざ近づいてきてくれた。
すると
「近く、引っ越しするんです」
とのこと。
「たくさんのものをいただいてありがとうございました」とも言っていただいた。
いやいや、実際、梅くらいしかおすそわけできてないです、、、って思ったけど、そう言ってもらえたことが嬉しくて「こちらこそ、ありがとうございました!」と意識より先に言葉が出た。
新しい家が見つかったみたいで、それは良いことだ。
でも、ちょっと話ができるような「お隣さん雰囲気」ができてきた時に、引っ越してしまうのはやっぱり寂しい。
別に特段、深い関わりを持ってたわけじゃない。なにせ、僕が初めてまともに話したのは1ヶ月前だ。
でも、初めて梅をおすそわけしに行った時の、インターホンに出たがって必死に泣いていた娘さん(そんなにインターホンに出たいのか、、、とその好奇心にも驚いた)や娘さんを抱きかかえながらも喜んで梅をもらっていただいたタカハシさんの様子を今も覚えている。
なにより、いきなりピンポンを押した僕を温かく受け入れてくださったことがとてもありがたかった。
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近所に住むって偶然以外のなにものでもない。
その偶然を楽しむことができるのも一つの近所付き合いの良さかもしれない。
おそらく僕たちは住環境について考えると、家の「中」を住み良くしようと思いがちだ。
でも、家の外まで、たまたま居合わせたお隣さんともコミュニケーションを取れば、暮らしはもっと楽しくなるんじゃないかな。
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ま、考察はこんくらいにして、とにかくタカハシさん、短い間でしたが、ありがとうございました。
引っ越し先でもお体にお気をつけてください。
それとこれを読んでらっしゃる読者の皆様、もし、ななめ向かいに「タカハシさん」という方が引っ越してこられた時は、どうかインターホンを押して話しかけてみてくださいませ。
きっとインターホンに出て満足げな娘さんとお母様が笑顔で扉を開けてくださると思います。
ではまた、どこかで。
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