医療機器の開発に関わるための知識とその情熱
医療関連の仕事を20年弱していました。
主にマーケティングだったのですが、医療機器の会社や臨床研究の会社などでの経験から国内外の医学系の文献を読んだり医学の学会に参加したり、ありがたいことに新しい治療法を開発する会社や開発者や発案者と話す機会が沢山ありました。
医療機器のマーケティングの仕事とは
医療機器の場合、マーケティングの仕事=販売する治療器具の専門家です。
一般的ないわゆるマーケティングの知識も必要なので、広告やチラシ、カタログなどの作り方や製品名の付け方、販売戦略などそういった知識はあるのが前提とされます。
それ以外に必要となってくる大切な部分が医療にまつわる膨大な量の知識。
必要とされる知識
疾患に関する知識や病態、一般的な病気に対する知識、その対象の身体に関する知識、その器具の対象の治療法、器具以外の治療法、副作用、競合する器具、治療する病院や院内の専門科、医師、コメディカル(医師以外で治療に関わる人)、病院内での立ち振舞、業界の決まり事、法律、承認、効果や禁忌、臨床研究の方法や治験に関する知識、製造場所における器具自身に対する試験方法やクリア条件、不具合時の対処法や情報収集の内容、国内と海外の治療や疾患の違いと共通点など、必要な知識に関しては書いていて驚くほど多岐にわたります。
勉強の仕方
社内外の勉強会や、資料、学会で学ぶと言う機会もありますが、ほぼ独学です。
本人がいかに知識を持つか、誰とどう話をするかによって必要な知識も変わってきます。
医師や開発者と話をする必要があったので、とにかくありとあらゆるその周辺の知識は、その会議や開発などが決まった時点でとにかく文献や本を読み漁りました。
一度3日間である治療に関する海外の文献を200文献ぐらい頭に入れなければならなかったこともありました。
目が疲れて一番きつかった記憶があります。
学会での発表の資料やその先生の過去の執筆資料や、日本市場の症例数や対象の病気の機序など質問や会話に出てくるであろう内容を想定して事前に勉強します。
勉強は段々容量を得てくるので私の場合疾患が色々変わっていったためその度にどうしたらいいのか?と言う知恵が付きました。
どう調べて何をどう読んで頭に入れていくのがいいのか?とかどこに数字があるのか?とかそういった勘みたいなものがいつの間にかついて行ったようです。
医療に関わり始めたきっかけ
最初に関わったのは当時の治験中の抗生剤でした。
アメリカの大学卒業後の最初の仕事が医療系の出版社だったので、医学書籍の出版以外に治験の会議の資料や会場の準備などをしている会社でした。
医療に興味を持った理由が2つ。
1つは当時思っていた自分が生きているからには自分を犠牲にして人を助けなければならないという(偏った)考え方
2つ目はその最初の会社で関わった仕事の内容が面白いと感じて人の身体に興味を持ったからでした。
関わった治療や疾患
治療薬から治療機器に移って脳動脈瘤の治療や肝がんの治療の塞栓物質や器具を運ぶカテーテルなどで脳動脈瘤や脳出血・脳梗塞・脳虚血・モヤモヤ病・動脈の閉塞や動静脈瘻や奇形、透析のシャント、肝癌から対象の癌が広がったり子宮筋腫など良性腫瘍なども対象になりました。
もちろんその都度そのエリアの疾患や治療の勉強をし直します。
今考えると自分が如何に勉強が好きだったかわかります。
今考えると結構ひきますw
その後は血管内治療が専門になっていき、主に心臓がメインだったのですが私の担当が一時期血管の縫合だったので、縫合の仕方などは当時海外で処置の実践トレーニングもありました。そのついでにフランスの病院内で看護師さんのお仕事のお手伝いで患者さんのケアやお話をお伺いするなどもしたり…
段々対象が広がって行って、末梢血管(手・足など)腎臓などの臓器などの勉強を長くしていました。
途中で開発の仕事をしていたのでその時は肺気腫や全身スキャンの診断など血管以外の疾患の話をスタートアップの会社から聞いたりするために段々全身が対象になっていきました。
最後にしていたのは大動脈弁の置換術を経皮的(カテーテル内に入れた弁を血管や一番近い部位から通して弁の内側に入れて置き換える治療法)の治験のトレーナーの仕事でした。
こちらは治験だったので日本に症例がなく、治療自体も当時新しかったので海外でも症例が少なく、フランスを拠点にしてヨーロッパ中の症例がある日にその病院に行って症例を見て覚えるというトレーニングで1ヶ月以上ホテル住まいになることがありました。
感謝のおかげの知識
今振り返って考えると沢山の方々の協力やサポートによって知識をつけられたり、症例を見せて頂けたりしていた事に気づきました。
わたしがご飯をちゃんと食べていないからと言って、ご飯を作って食べさせてくださる先生方もいらっしゃいました。
本当にありがたいです。
当時は仕事に一生懸命なあまり自分も人も二の次でした。
多分当時の私はかなり冷たい手段を選ばずな色んな意味で偏り過ぎの人で沢山迷惑もかけたと思います。
それでも応援してくださる先生方や周りの人にいて頂けたのはありがたいことでした。
今回この書き方の角度になったのはお友達が病気になってそれを調べ始めたのがきっかけです。
最近関わっていただいた方々の夢を見たり、ハガキを頂いたり、メールを頂いたり振り返る機会が多くあったので余計に医療について書きたくなったのかもしれません。
自分や身近な人が病気になった時に
勉強した知識や調べ方はもちろん自分や身内が病気になったりして治療法を調べたりセカンドオピニオンを得るために使えます。
父が脊柱菅狭窄症になった時も、病院や専門医や症例数などや、一般的な治療法、新しい治療法、気をつけること、予想できる後遺症や副作用、どういう治療なら比較的安全でそうではないか?とか何もしないとどうなるか?とか…そういった情報を得た上で医師から手術の説明を受ける際に一緒に行って先生に質問を色々させていただきました。
おじが胃がんになった時は臨床研究の対象疾患だったためその症例に登録したので、チームで説明してくださって術後の取り出した胃まで見せて頂いて説明いただきました。
知識を持っていると安心出来たり、医師に気にしてほしいことの要望を事前にすることができます。
治療用の機器の開発に関わる人々
治療に関する商品の開発は、開発者や発案者から出る一般的な発想からなる『これって可能なんじゃない?』とか『これをここにも使えるのではない?』という視点が結構重要で、人の思い込みや常識が妨げてしまうところを取っ払って生まれるものが後に当たり前になってくる画期的な治療法になったりしています。
これはスタートアップの会社の方々から学んだことでした。
そこから自分も商品開発に関わり始めるようになって自分の発想で役に立つ事ができると気づいたんだと思います。
使う側の医師に対する情報提供や逆に臨床現場での経験や知識、エンジニアの製作する側の可能性や発想、法律範囲内か法律の範囲を広げる必要があるのかもしくは新規に作る必要があるのか?など日本の場合はここに診療報酬という保険制度に繋がってくる承認が必要になってきますが…
パズルの組合せ
このいくつものパズルのようなものを組合せて出来上がる医療に対する新規性や発展、その先にある寿命を延ばすことや人のQOL(生活の質の向上)を見据えた意識や意志の持ち方などが必要です。
そういったものをスタートアップの会社の方や開発した発案者の方々からかなり学びました。
こういった発想の仕方や物の考え方見方などが今の自分の問題解決能力や発想力、目標達成力などのスキルを上げていったんだな…って書きながら改めて思ったり…
情熱の炎
今回これを書いてみたくなったのはその時の情熱が懐かしくなったから…ということと、あれくらい世のため人のために夢中になれる機会を与えて頂けたことにものすごく感謝を感じたこと。
医療の仕事は自分の目が当時機能的失明をしかけたことで歩くことができなくなり強制終了しました。
その前にも途中で何度か挫折したり色々あったのですがその度に燃え尽き症候群になっていて半年ぐらい何も出来ない時期がありました。
その割にはその時期に見ていたドラマとかがGray's anatomy とかDr.Houseだったりしますが…(笑)
実際はその後色々調べて当時一般的ではなかった手術を先生に提案をして実施して頂きこの疾患が治った人はいないと言われていたのですが、完治にはならなかったものの、改善して特に日常生活に問題なく生活出来ています。
これもそういった知識を持っていたおかげだと思っています。
情熱の炎をあれほど持てることってもうないのではないか?と思うくらいやりがいのある頑張れるお仕事でした。
その仕事につかせていただけた事に本当に感謝しています。
最後に…自分の体のことは自分で調べてみる
自分の身体のことに対して、患者さんになったり、なりそうになったら自分自身でもちょっと知識を増やしてみるのって大事なことだし一般の人でも十分可能なことであると思ったので書いてみました。
わたしは医学部を出たわけではなく大学の専攻はビジネスとフランス語でした。
勉強はどんな事でもどれだけ興味や関心を持って調べてそれを知識に変えられるか?というところではないか?と思うのですが
もしも自分や身内が病気になった場合、興味や関心は十分あると思うのであとはどれだけ必要な知識に近づけるか?というところだと思います。
調べてみると割りと患者さんの会とかあったりするのでそういったところに問合せするという方法もあります。
自分でその疾患に関して調べていくといろんな治療法が出てくると思うので、わからないことが出てきたら担当してくださっているお医者さんにまず聞いてみるのは大事な事だと思います。
お医者さんも人間なので自分の専門以外のことは知らないことやアンテナが立っていないこともあります。
患者さん側からでも提案してみると先生も考えてくださると思います。
どなたかにピンと来たら嬉しいです。
いつの間にかかなり長文になってましたw
もしも最後(ここ)までお読み頂けましたら、本当にありがとうございます(^^)