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群れのごくごく平凡な毎日②
保育士ジュナ
怪我をして手術・入院をしていた人間が2週間のミッションを終え帰還したのは、丁度ジッチの誕生日七夕の日だった。左肩を固定され痛みの残る状態で、どんな願い事があるというのか。
早く固定具が取れますように!
それとも、早く痛みが消えますように!
どちらも近代医学の中でお医者様から「固定具は3か月です」、「リハビリは半年です」と伝えられていたから、今更願いなんて・・・。と、ふてくされていたのだった。
そんな人間に、「はいはい時間ですよ。庭に出て遊びますよ!」と毎日決まった時間に庭に連れ出す保育士が我が家にはいたのだ。その名は我が家の三男坊ジュナ。確かに気晴らしで庭に出て太陽を浴びることは気分転換にもってこいだ。しかし、我が家の保育士ジュナはそれだけでは済まさない。庭に出たからには、肩を固定していようと関係ない。左肩が動かなくても右肩があるだろうとばかりにおもちゃを次々持ってきては、「ほれ!とってみろよ!ほらぼくを追いかけてごらん。」と、容赦ないスパルタ保育士なのだ。「わかっているよ、ジュナ。追いかけてボールとって投げたいよ。でもね、君のスピードと力に右肩だけではついていけないのだよ・・・。」
そうひとり言をいっても聞き入れてもらえない。きっとジュナは運動不足になってしまってはいけないと、人間のことを考えて遊びに誘っているに違いない。ほら、覚えていない?保育士さんてさ全般的に優しいから、今遊びの気分でなくてもみんなの中に入れない子のことをフォローして、遊びに誘ったり遊びの輪の中に入れてくれたりするじゃない?保育士ジュナもきっと、「一人さみしそうに遊びの中にも入れない、おもちゃでも遊べないかわいそうな人間・・・」と思ったに違いない。ジュナ、正直に言うね。遊びたいけど遊べないんだ。左肩を首から固定しているから運動ができないんだよ。そういってもキラキラお目目で人間のお守りをしているつもりのジュナには伝わらないね。左肩の固定期間で人間は真っ黒に日焼けをした。遊ばないのにずっと庭にいたからね。左肩が予想以上に回復したのは保育士ジュナが庭に連れ出してくれたおかげなのかもしれない。日光を浴びて汗をかくことは自律神経にいいんだって。また、痛みで夜寝苦しい時にも、昼間に庭で過ごすだけでも寝つきがよくなるんだって。リハビリの先生がそう慰めてくれていたよ。こんな怪我をしている人間を気遣ってくれて、保育士ジュナの責任感には恐れ入った。ありがとうジュナ。リハビリがんばるね。あと4か月待っててね。
夏の間、汗だくになりながら左肩を固定した人間が、四頭の息子たちと庭で過ごしている画は、お隣さんにはなかなかシュールに映ったに違いない。