VRChatにおける謎「Dahlia」調査記録〔③ 神殿〕[Hidden Dahlia]
昨日の「Life On Mars?」「Hotline Miami Sunset」の衝撃を忘れられないまま、私は翌日単独での調査を開始した。
まずはワールドオーナーの情報をVRChatの公式ページで調べる。
「Life On Mars?」は、オーナーが「Hydrangea+」。
「Hotline Miami Sunset」のオーナーは、「JACKET+」。
JACKET+の方のアバターサムネには見憶えがあった。
「Hotline Miami Sunset (Bus)」でバスを運転していたNPCの彼女に似ている。
とりあえず二人の作成した他のワールドの情報を調べると、それなりに数がある。またその大半がPC専用ワールドだ。
私はQuestを置き、デスクトップPCを起動させると、手始めに「Life On Mars?」で先に行けなかった「Hydrangea+」のHidden Dahliaへ向かった。
※よろしければBGMをどうぞ
閉鎖感のある巨大な建造物が目の前にひろがる。一瞥して中央の階段と、左右の通路先に別区画が広がっていることが予想できる。
その各出入り口の傍らには、モノリスよろしく黒光りするインフォメーションボードが設置されている。
私は中央の区画への入り口に近づいた。黒い情報版には赤い文字で、何か書いてある。
・・・・読めない。
キリル文字とか、ルーン文字とか、そういったレベルではない。
「意図的に暗号化された文字」という事のみが解るだけだった。
文字の解析は後回しにして、内部の調査を先に進める。
リスポーン地点のエントランスから、まるで受付とても言いたげなカウンターのあるロビー。
そのロビーからメインホールに入ると視界が開け、広い空間中央にはピラミッドを思わせる白亜の三角錐、その前にはBarが設えてあり、構造からこの空間が何かのコンベンション・センターであることが伺えた。
そのBarより左右に道が伸び、調べると、それぞれ、講堂若しくはセミナー会場。地下へと続く談話室、若しくはリラックスルームの様相をそれぞれ呈していた。
どうみても、多人数の来客者を想定した造りになっている。(警備員室ともいえる、エリアごとの監視カメラのエリアも存在した。)
一通り回り終えて中央のメインホールに戻る。
中央のバーカウンターに立ち、自らがこの施設の関係者で、客人らをホストするなら、どういった事を考えるかを黙考する。
・・・・・・
ロビーより、メインホールへ、そこにあるバーで、ウェルカムドリンク。
・・・・いや、まて。
おかしい。
この施設には、核となる「場所」が無い。
もちろんリラックスを主として談話室へ誘導も、セミナーとして講壇に案内するのもいいだろう。
しかし、それはら施設の「顔」では無いはずだ。
この規模の施設にあるはずの、場所の「格」を位置づける。場所が見当たらないのだ。
——頭上を見上げる。
白亜の三角錐。無機質なピラミッドに鎮座する。水銀めいた巨大な金属球。
神秘主義者たちにとってピラミッドは力場を象徴する物であり。水銀はそのもの以上の神秘を内に抱えたという。
——跳び上がり、駆け上がる。
三角錐の力場の頂点。球体のその中心。
——あった。
わずかな反応。しかし確かな反応。
飛び込みながら、手を伸ばしトリガーを起動する。
——白閃。
十字は未知を闢き、摂理を露わにする。
秘められた何処へと閂を引き抜くように、扉が出現する。
帳は開かれ、視界が光に見慣れる頃。重厚に更なる重厚を過度に加えた隔壁の霊廟。世界の心臓部へと探索者は降り立つこととなる。
「Hidden Dahlia」深部。玉座の間。
五体の選ばれし花たちが、物言わぬ来訪者を迎え入れる。
伝わるべきは、何なのか。何にたどり着くのか。
私は、墓所を盗掘する、ならず者の考古学者の様に、興奮冷めやらぬ頭で、座とDahliaの意匠を見上げる。
花は何も語らない。
しかし、辿るべき道は確かに受け取った。
この玉座にかつて相応しかった5名。その足取りを、わたしは追うことになるのだろう。
・・・・・・
構造物の巨大感。陰影含めた光源作用の妙。暗号。説明の無さ。隠し部屋要素。シャットダウンシステム。それら全てが、「謎の組織」の拠点、いや神殿としての機能を十全に備えていた「Hidden Dahlia」。
SNSを調べると、更なる隠しフロアや、危険なシャットダウンシステムの存在も示唆されていた。しかしこの時の調査では、それらの発見には至らなかった。
ツイッターで「VRC Dahlia」等で検索をかけ、出てくる順に片端からチェックすれば、やはりHidden dahliaが人気なのか、数々の来訪記録が観測できる。
私の歩む、はるか前から、先達の探索者達がいた事に安堵し。
次の候補のリスト化を終える。
続いて行くワールドは、何処かもうそれは決まっていた。
Hidden Dahliaに設置された暗号文字。それをワールド名にも関する世界。
「Jacket+ ⋔⟒⋔⍜⍀⟟⏃⌰」だ。
自らの名と、謎そのものをタイトルにしたワールドに何もないわけがない。
私は何も語らぬ玉座たちに見送られながら、私は神殿を静かに後にした。
- The investigation will continue. -
◇無言者の走り書き
・Hidden dahlia
デザイン原本
https://www.artstation.com/artwork/GXgJW1
https://www.artstation.com/nick_stath
ダリアマーク原本
BGM原本
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