黙示録SF戦記:巨人と愛のタルタリア、核の炎に消えたフリーエネルギー文明の遺産
第1話: 幻影の帝国 - タルタリアの残響
古地図の囁き - 隠された世界の輪郭
薄暗い書斎。埃を被った古書に囲まれ、研究者の エミリア は、虫眼鏡を片手に一枚の古地図を睨んでいた。羊皮紙はひび割れ、インクは滲み、ところどころ破れている。しかし、エミリアの目は、その古地図に隠された秘密を見逃さなかった。
「タルタリア…?」
地図には見慣れない国名が記されている。現代の地図には存在しない巨大な帝国。その領域は、ヨーロッパからアジアにまで及んでいた。エミリアは興奮を抑えきれず、古地図をなぞる。
「一体、どんな文明だったんだろう…」
その時、背後から声が聞こえた。
「その地図は危険だ。エミリア」
振り返ると、老教授の アレクサンドル が深刻な表情で立っていた。アレクサンドルはエミリアの恩師であり、古文明の研究者として世界的に有名な人物だ。
「先生!このタルタリアという国について、何かご存知ですか?」
エミリアは期待を込めて尋ねたが、アレクサンドルは首を横に振った。
「タルタリアは、歴史から抹消された国だ。研究すれば、君自身が危険に晒されるかもしれない」
「でも、先生!この地図には、信じられない技術の痕跡が…!フリーエネルギーの技術があったかもしれないんです!」
エミリアは興奮気味に語る。アレクサンドルは苦渋の表情を浮かべた。
「…その話はよせ。忘れるんだ。さあ、この地図を私に…」
アレクサンドルの手が、古地図に伸びる。しかし、エミリアはそれを掴み、強く握りしめた。
「…できません。私は知りたいんです。タルタリアの真実を!」
エミリアの強い眼差しに、アレクサンドルはため息をついた。
「…わかった。だが、くれぐれも注意しろ。この世界には、タルタリアの存在を隠蔽しようとする者たちがいる。そして、彼らは手段を選ばない…」
その言葉を最後に、アレクサンドルは書斎を後にした。エミリアは再び古地図に目を落とす。その輪郭は、まるで幻のように揺らめいていた。
(第1話 シーン1 終わり。 次のシーンへ続く)
文明の断片 - 異形の建築物、フリーエネルギーの痕跡
エミリアはアレクサンドルの警告を胸に、タルタリアに関する情報を集め始めた。図書館に通い、インターネットを検索し、あらゆる文献を読み漁った。そして、彼女はいくつかの奇妙な事実に辿り着いた。
世界各地に残る、様式が統一された巨大な建築物。ゴシック様式とも、ルネサンス様式とも異なる、異様な形状をした建造物。そして、それらの建造物には、共通してある特徴があった。それは、現代の技術では説明できない、高度な技術が用いられていることだった。
ある日、エミリアはインターネットで見つけた写真に釘付けになった。それは、東ヨーロッパにあるという廃墟の写真だった。巨大な石造りのアーチが連なり、まるで巨大な発電所のような構造をしている。写真のキャプションには、こう書かれていた。
"かつて、この場所には、フリーエネルギーを利用した都市があったと言われている…"
エミリアは、その廃墟を訪れることを決意した。
数日後、エミリアは東ヨーロッパの小さな村に到着した。村人たちは、その廃墟のことを「呪われた場所」と呼び、近づこうとしなかった。しかし、エミリアは恐れることなく、廃墟へと足を踏み入れた。
廃墟は、想像以上に巨大で、そして荒廃していた。壁は崩れ落ち、植物が生い茂り、まるで時の流れに取り残されたかのようだ。しかし、その中でも、アーチの連なりは、圧倒的な存在感を放っていた。
エミリアは、アーチに近づき、その表面に触れた。冷たく、硬い石の感触。しかし、その石には、かすかに温かさが残っているような気がした。
その時、エミリアの頭の中に、映像が流れ込んできた。眩い光。人々の歓声。そして、都市全体がエネルギーに満ち溢れている光景。
「これが…タルタリアのフリーエネルギー…!」
エミリアは確信した。この廃墟は、かつてタルタリアの重要なエネルギー源だったのだ。
突然、背後から物音がした。エミリアが振り返ると、黒ずくめの男たちが立っていた。
「お嬢さん、ここは危険だ。早く立ち去りなさい」
男たちの言葉には、明らかに敵意が込められていた。エミリアは、アレクサンドルの警告を思い出した。
「あなたたちは…誰?」
エミリアが尋ねると、男たちは冷たく笑った。
「タルタリアの秘密を暴こうとする者は、生きて帰れない」
男たちは、一斉にエミリアに襲い掛かってきた。
(第1話 シーン2 終わり。 次のシーンへ続く)
理想郷の崩壊 - 平和と愛の帝国の終焉
エミリアは男たちの攻撃を辛うじてかわしながら、廃墟の中を逃げ惑った。男たちは訓練された兵士のようで、動きが機敏で容赦がない。
「なぜタルタリアの事を隠すんだ!?」
エミリアは叫んだが、男たちは答えなかった。ただ、黙々とエミリアを追い詰めてくる。
逃げ場を失ったエミリアは、巨大なアーチの上に追い詰められた。男たちは、ゆっくりとエミリアに近づいてくる。
「…もう、終わりか…」
エミリアは絶望的な気持ちになった。その時、彼女の目に、アーチの表面にある、小さな刻印が映った。それは、見たことのない奇妙な記号だった。
エミリアは、咄嗟にその記号に触れた。すると、アーチが激しく振動し始めた。
「な、なんだ!?」
男たちが驚愕する中、アーチから眩い光が放たれた。光はエミリアを包み込み、彼女は意識を失った。
…次にエミリアが目を覚ました時、彼女は自分がどこにいるのか分からなかった。
そこは、巨大なドーム状の空間だった。壁面には、美しい装飾が施され、見たことのない植物が生い茂っている。そして、何よりも驚いたのは、そこにいる人々の姿だった。
人々は皆、穏やかな表情で、互いに手を取り合い、歌を歌っている。争いも、憎しみも、そこには存在しないかのようだ。
「ここは…?」
エミリアが戸惑っていると、一人の女性が近づいてきた。女性は、優しい笑顔でエミリアに話しかけた。
「ここは、タルタリア。あなたは、選ばれた者の一人。ようこそ、理想郷へ」
エミリアは、驚きと感動で言葉を失った。タルタリアは、本当に存在したのだ。そして、そこは、平和と愛に満ち溢れた、理想郷だった。
しかし、その時、地響きのような音が鳴り響いた。そして、空が赤く染まり始めた。
「何が起こっているんだ!?」
エミリアが尋ねると、女性は悲しそうな表情で答えた。
「…終末の時が来たのです。タルタリアは、間もなく滅びるでしょう」
空から、巨大な火球が降り注ぎ始めた。都市は炎に包まれ、人々は悲鳴を上げながら逃げ惑う。
「なぜ!?なぜこんなことに!?」
エミリアは、混乱の中で叫んだ。女性は、エミリアの手を握り、こう言った。
「タルタリアは、平和と愛を重んじすぎたのです。その優しさが、自らを滅ぼすことになったのです。ですが、忘れないでください。タルタリアの精神は、決して消えません。いつか、誰かが、私たちの遺産を受け継ぎ、再び理想郷を築いてくれると信じています」
女性の言葉を最後に、タルタリアは核の炎に包まれ、完全に消滅した。
…エミリアは、再び廃墟の中で目を覚ました。男たちは消え、あたりは静まり返っていた。
「タルタリア…」
エミリアは、涙を流しながら、呟いた。彼女は、タルタリアの幻影を見たのだ。そして、彼女は、タルタリアの遺産を受け継ぐことを決意した。
「私は、タルタリアの真実を明らかにする。そして、いつか、再び理想郷を築いてみせる!」
エミリアは、固く拳を握りしめた。しかし、彼女はまだ知らない。タルタリアの真実を暴くことが、どれほど危険なことなのかを…。そして、タルタリアを滅ぼした者の正体を…。
(第1話 終わり。 次の話へ続く)
第2話: 核の炎 - 滅びた栄華
19世紀初頭の悪夢 - 焦土と化した世界の記憶
焼け付くような悪臭が鼻腔を突き刺す。埃っぽい空気は肺を焼けるように熱くし、視界は黄色く霞んでいる。1816年、通称「夏のない年」。主人公、歴史学者のエミリアは、ボロボロになった日誌を握りしめ、凍えるような寒さの中で震えていた。
「…信じられない。こんな記録が、本当に存在したなんて…」
日誌は19世紀初頭のヨーロッパを放浪した、名もなき旅人の記録だった。しかし、そこに書かれていたのは、歴史の教科書に載っているような輝かしい英雄譚ではなかった。代わりに、焦土と化した大地、奇病に苦しむ人々、そして、空を覆う異様な光の記述が、生々しく綴られていた。
エミリアは、数年前から世界各地で発見されるようになった「異形建築物」の調査に没頭していた。それはまるで、現代の技術では再現不可能な、巨大で美しい石造建築であり、同時に、何か途方もないエネルギーを利用していたかのような痕跡を残していた。
「旅人の記述と、異形建築物の位置…まさか、全てが繋がるのか…?」
日誌は突然、狂気に染まった筆跡で終わっていた。「…神の怒りだ!炎が世界を焼き尽くす!逃げろ、逃げても無駄だ!タル…タ…リ…ア…」最後の言葉は、インクが滲んで判読できなかった。
エミリアは、背筋に冷たいものが走るのを感じた。タルタリア。それは、古地図にのみ存在する幻の帝国。フリーエネルギーを操り、平和を謳歌したという理想郷。しかし、その名は、歴史から完全に抹消されていた。
その時、突風が吹き荒れ、日誌が飛ばされそうになる。慌てて日誌を掴もうとしたエミリアは、ふと、目の前の風景に異変を感じた。目の前の瓦礫が、一瞬、巨大な建築物の幻影を映し出したのだ。それは、日誌に描かれた、タルタリアの首都にそっくりだった。
「幻…なのか?」
エミリアは、まるで何かに導かれるように、瓦礫の中へと足を踏み入れた。
忘れられた科学 - フリーエネルギー文明の光と影
奥に進むにつれ、瓦礫の隙間から異様な金属片が顔を出し始めた。それは、現代の金属とは全く異なる、見たこともない合金だった。表面には複雑な幾何学模様が刻まれ、触れると微かな振動を感じる。
「これは…フリーエネルギーの痕跡…?」
エミリアは、持参した解析装置を取り出し、金属片の分析を開始した。解析結果は驚くべきものだった。金属片からは、現代科学では説明できないエネルギー反応が検出されたのだ。
「ありえない…こんなものが、本当に存在していたなんて…」
日誌には、タルタリアのフリーエネルギー技術に関する記述もあった。空気中のエネルギーを直接変換したり、水を電気分解することなく水素エネルギーを取り出したり…まるで夢物語のような技術が、実際に存在していたというのだ。
しかし、その技術は、同時に大きな危険も孕んでいた。旅人の日誌には、フリーエネルギーが暴走し、制御不能になった場合の危険性についても触れられていた。
「フリーエネルギーは、両刃の剣…平和と繁栄をもたらす力でありながら、使い方を間違えれば、世界を滅ぼすこともできる…」
エミリアは、ふと、背後に気配を感じた。振り返ると、そこには、黒いコートに身を包んだ男が立っていた。
「…誰だ?」
男はニヤリと笑った。
「探し物は見つかりましたか、エミリア博士?」
男は、不気味なほどに、エミリアの名を知っていた。
沈黙の証人 - 歴史の闇に消えた真実
「お前は…一体、何者だ?」エミリアは警戒心を露わにした。
「私は、歴史の管理人、とでも名乗っておきましょうか」男はそう言いながら、ゆっくりと近づいてくる。「あなたと同じように、タルタリアの真実を追い求める者です」
エミリアは男の言葉を信じなかった。警戒心を解かずに問い詰める。「タルタリアについて、何を知っている?」
「全てです」男は自信ありげに答えた。「タルタリアは、フリーエネルギー文明を擁し、平和を愛する理想郷でした。しかし、その技術は、一部の権力者によって悪用され、核戦争を引き起こしたのです」
「核戦争…?」
エミリアは愕然とした。旅人の日誌に書かれていた「炎が世界を焼き尽くす」という言葉が、脳裏によみがえる。
「19世紀初頭に起こったのは、単なる戦争ではありません。フリーエネルギー兵器による、大規模な核攻撃だったのです。タルタリアは滅び、世界は焦土と化しました。そして、その真実は、歴史から完全に抹消されたのです」
男は続ける。「私たちは、その真実を封印し、歴史を改竄することで、再び同じ過ちが繰り返されないようにしてきたのです」
「…そんなの、間違っている!真実を隠蔽することが、本当に平和に繋がるのか?」エミリアは反論した。
「真実は危険なのです、博士。知るべきではないこともある」男は冷たい目でエミリアを見つめた。「これ以上、タルタリアの真実を追い求めるのは、おやめなさい」
そう言い残し、男は煙のように姿を消した。
エミリアは、男の言葉に動揺していた。本当に、真実を隠蔽することが、平和に繋がるのだろうか?しかし、タルタリアの真実を追い求めることは、彼女自身の身にも危険が及ぶことを意味していた。
その時、エミリアの解析装置が、再びけたたましい音を立て始めた。画面には、今まで見たこともない、強力なエネルギー反応を示すグラフが表示されていた。
「これは…一体、何が…?」
エミリアは、音の発生源を探し、瓦礫の奥へと進んでいった。そして、ついに、その場所へとたどり着いた。
そこには、巨大な石板が埋まっており、その表面には、複雑な幾何学模様が刻まれていた。そして、石板の中心には、奇妙な紋章が浮かび上がっていた。
その紋章を見た瞬間、エミリアは、強烈なデジャブに襲われた。それは、まるで、過去の記憶が蘇ってくるかのような感覚だった。
「これは…タルタリアの…紋章…?」
石板から発せられるエネルギーは、ますます強くなっていた。そして、突然、石板全体が、眩い光を放ち始めた。
エミリアは、光に包まれながら、意識を失った。
次に目覚めた時、彼女は、信じられない光景を目にすることになる。
(第3話へ続く)
第3話: 聖堂の秘密 - エネルギーの奔流
大聖堂の深奥 - 神聖なる構造、未知なる力
「こんな…馬鹿な…」
考古学者のエレーナは、息を呑んだ。足元には、苔むした石畳が広がり、巨大なゴシック様式の大聖堂がそびえ立っていた。しかし、その威容は尋常ではない。まるで生き物のように、微かに振動しているのだ。
「教授、これは…ただの教会ではないようです」
助手のアレクセイが、震える声で呟いた。彼は懐中電灯で、天井を照らす。複雑な装飾が施されたアーチの奥には、まるで巨大な歯車のようなものが組み込まれていた。
エレーナは、古地図を広げた。それは、タルタリア帝国の残滓とされる、幻の帝国の地図だった。地図に記された場所と、今いる場所が完全に一致する。
「この大聖堂…タルタリア帝国のフリーエネルギーシステムの中心だった可能性がある」
エレーナは、石壁に手を触れた。ひんやりとした感触。しかし、その奥には、確かに何かが脈打っているのを感じた。
突然、大聖堂全体が大きく振動した。天井から砂塵が舞い落ち、アレクセイが悲鳴を上げる。
「教授!何かが起動しました!」
エレーナは、奥へと続く扉を見つけた。それは、固く閉ざされていたが、今、ゆっくりと開き始めている。扉の奥には、暗闇が広がっていた。
「行くしかない…この先に、タルタリアの秘密が隠されている」
エレーナは、覚悟を決めて、扉の奥へと足を踏み入れた。アレクセイも、震えながらも彼女の後を追う。
扉をくぐった瞬間、目の前に信じられない光景が広がった。
文明の発電所 - 地域を彩るエネルギーの形態
大聖堂の地下は、巨大な発電所だった。複雑なパイプが張り巡らされ、水晶のようなものが光を放っている。それは、現代の科学では理解できない、異質な技術だった。
「これが…フリーエネルギー…」
アレクセイは、呆然と呟いた。目の前の光景は、彼の常識を完全に覆していた。
エレーナは、パイプに刻まれた文字を読み始めた。それは、古代文字のようだが、どこか現代の数式に似た構造を持っている。
「これは…エネルギーの変換式だ!この大聖堂は、大気中のエネルギーを変換し、都市全体に供給していたんだ!」
彼女は、一つの制御盤を見つけた。それは、複雑なスイッチとメーターで構成されていたが、完全に停止していた。
「もし、この制御盤を操作できれば…」
エレーナは、制御盤に手を触れた。しかし、その瞬間、激しい電気ショックが彼女を襲った。
「うっ…!」
アレクセイは、慌ててエレーナを抱き起こした。
「教授!大丈夫ですか!」
「これは罠だ…この制御盤は、操作すると危険なエネルギーが放出されるように設計されている」
エレーナは、辺りを見回した。まるで、誰かが自分たちを監視しているかのような視線を感じた。
「誰かが…タルタリアの技術を隠蔽しようとしている」
突然、背後から金属音が響いた。振り返ると、黒いマスクをつけた男たちが、銃を構えて立っていた。
「ここから立ち去れ。さもないと、命はない」
男たちのリーダーが、冷たい声で言った。
エレーナは、男たちの目を睨みつけた。
「あなたたちは、何者だ?なぜ、タルタリアの技術を隠蔽する?」
「それは、お前たちが知るべきことではない。消えろ」
男たちは、銃を構えた。アレクセイは、恐怖で震えている。
エレーナは、覚悟を決めた。タルタリアの秘密を解き明かすため、たとえ命を落とすことになっても、ここで諦めるわけにはいかない。
水の導き - 命を育む活水の神秘
「逃げるぞ、アレクセイ!」
エレーナは、男たちの隙を突き、アレクセイの手を引いて走り出した。銃弾が、背後をかすめる。
二人は、複雑な地下通路を駆け抜けた。通路は迷路のように入り組んでおり、男たちはなかなか追いついてこない。
やがて、二人は、巨大な貯水槽にたどり着いた。貯水槽の水は、青白く輝き、神秘的な雰囲気を醸し出している。
「ここなら、しばらくは隠れられる」
エレーナは、貯水槽の中に身を隠した。
「教授…この水、何か変です」
アレクセイが、水を口に含んだ。
「甘い…それに、体がポカポカしてくる…」
エレーナも、水を口に含んだ。確かに、ただの水ではない。まるで、命が宿っているかのような、不思議なエネルギーを感じる。
「この水は、フリーエネルギーを伝導するための媒体だったんだ。タルタリアの人々は、水を通してエネルギーを都市全体に供給し、人々の健康も維持していたんだ!」
しかし、その時、貯水槽の入り口に、男たちが現れた。
「見つけたぞ」
男たちは、銃を構え、容赦なく撃ち始めた。
エレーナは、覚悟を決めた。しかし、その瞬間、貯水槽の水が、激しく渦を巻き始めた。水は、まるで生き物のように、男たちに襲い掛かった。
男たちは、悲鳴を上げ、水の中に引きずり込まれていく。そして、水は静まり、男たちの姿は消えていた。
エレーナとアレクセイは、呆然と立ち尽くした。
「何が…起こったんだ…?」
エレーナは、再び水を口に含んだ。その瞬間、彼女の脳裏に、タルタリア帝国の記憶が流れ込んできた。平和で、愛に満ちた、理想郷の光景が。
しかし、その光景は、突然、核の炎に包まれた。
エレーナは、悲鳴を上げ、意識を失った。
次に彼女が目を覚ました時、アレクセイは、彼女を抱きかかえ、必死に呼びかけていた。
「教授!しっかりしてください!」
エレーナは、ゆっくりと立ち上がった。彼女の瞳には、強い光が宿っていた。
「タルタリアの秘密を解き明かす…私は、必ずそれを成し遂げる」
エレーナは、決意を新たにした。タルタリアの遺産は、ただの過去の遺物ではない。それは、人類の未来を照らす光なのだ。
その夜、エレーナは、古地図を再び広げた。そして、新たな場所を指し示した。
「次に向かうのは…ロシアだ」
次話へ続く
第4話: 巨人と人 - 失われた絆
巨人族の伝説 - タルタリアに息づく異形の存在
薄暗い洞窟の中で、エミールは古地図を広げていた。地図は羊皮紙でできており、所々が焼け焦げ、インクもかすれていたが、その複雑な模様は、まるで生きているかのようにエミールの心を捉えて離さない。
「タルタリア…かつてこの地に存在した、巨人族と人が共存した帝国…。信じられないな」
エミールの隣には、相棒の猫型アンドロイド、ミケが座っていた。ミケは感情表現が乏しいが、その高性能センサーでエミールの緊張を感じ取っているようだった。
「エミール、地図の信憑性は?」
「50%ってところかな。でも、この地図に描かれている場所…古代の巨石建造物がある場所と一致するんだ。そして、その巨石建造物の周りには、必ず奇妙なエネルギーフィールドが存在する」
エミールは地図上の特定の場所を指さした。そこには、巨大な人型のシルエットが描かれている。そのシルエットの周りには、まるでオーラのような光が描かれていた。
「巨人族…本当にいたとしたら、彼らは一体何者だったんだろう?そして、なぜ姿を消してしまったんだ?」
突如、洞窟の奥から低い唸り声が響いた。エミールとミケは、反射的に身をかがめた。
「敵か?」エミールは懐から、改造したレーザーピストルを取り出した。
唸り声は次第に大きくなり、やがて洞窟の奥から、巨大な影が現れた。その影は、まさに地図に描かれていた巨人族のシルエットと一致していた。
「嘘だろ…本当にいたのか…」エミールは息を呑んだ。
超越科学の遺産 - 現代を凌駕する知識の欠片
現れた巨人は、老いた老人だった。身長は優に3メートルを超え、深い皺が刻まれた顔は、長い年月を生きてきたことを物語っていた。しかし、その目は、まるで子供のように純粋で、知的好奇心に満ち溢れていた。
「人間か…。久しぶりだな」巨人は低い声で言った。その声は、洞窟全体に響き渡った。
エミールは警戒しながらも、レーザーピストルを構えたまま、巨人に話しかけた。「あなたは…巨人族ですか?」
「巨人族、か…。今はそう呼ばれているのか。我々は、かつてタルタリアに住んでいた者だ」巨人は答えた。
「タルタリア…あなた方は、フリーエネルギー文明を築いたと伝えられています。その技術は、現代の科学を遥かに凌駕していたと…」
巨人は少し寂しそうな表情になった。「フリーエネルギー…確かに、我々は自然の力を利用する方法を知っていた。だが、それは力を誇示するためではなかった。ただ、人々が平和に、豊かに暮らせるようにするためだった」
巨人は、洞窟の壁に触れた。壁は、滑らかな石でできており、複雑な幾何学模様が刻まれていた。
「この壁には、我々の知識が刻まれている。科学、哲学、芸術…全てが、ここに集約されている」
ミケが、壁の模様をスキャンし始めた。「エミール、解析を開始します。データ量は膨大です。時間がかかります」
エミールは、巨人に問いかけた。「なぜ、あなた方は姿を消してしまったのですか?そして、なぜ、その知識を隠してしまったのですか?」
巨人は、遠い目をして答えた。「我々の文明は、核の炎によって滅びた。そして、残された知識は、再び同じ過ちを繰り返さないように、封印されたのだ」
共存の時代 - 巨人と人、調和の光景
巨人は、エミールとミケを連れて、洞窟の奥へと進んだ。洞窟の奥には、巨大な空間が広がっていた。そこには、まるで生きているかのような、美しい光景が広がっていた。
滝が流れ落ち、植物が生い茂り、鳥たちが歌っていた。そして、その中心には、巨大な水晶が輝いていた。
「ここは、我々の隠れ里だ。外界とは隔絶された、最後の楽園」巨人は言った。
「楽園…」エミールは、その光景に目を奪われた。タルタリアの時代、巨人と人が共存していた時代は、まさにこのような光景だったのだろうか。
「我々は、人間と共存していた。互いに助け合い、尊敬し合い、平和な世界を築いていた」巨人は、懐かしそうに語った。
「しかし、人間の欲望は、その平和を破壊した。力を求め、支配を求め、争いを繰り返した。そして、最終的には、核の炎によって、全てを灰にした」
巨人は、水晶に触れた。「この水晶は、フリーエネルギーの源だ。自然の力を集め、エネルギーに変換する。我々は、この力を使って、人々の生活を豊かにしてきた」
「しかし、この力は、同時に破壊の力でもある。もし、悪意のある者がこの力を使えば、世界は再び、核の炎に包まれるだろう」
巨人は、エミールに視線を向けた。「お前は、この力の使い手となる資格があるのか?お前は、人類を導くことができるのか?」
エミールは、巨人の言葉に圧倒された。彼は、まだ若い冒険家であり、歴史の真実を追い求めることにしか興味がなかった。人類を導くなど、考えたこともなかった。
しかし、巨人の言葉は、彼の心に深く突き刺さった。
「…分かりません。でも、私は真実を追求します。そして、人類が同じ過ちを繰り返さないように、過去の教訓を伝えます」
巨人は、少し微笑んだ。「それならば、いいだろう。お前に、我々の知識を託そう」
巨人は、水晶に手をかざした。すると、水晶が眩い光を放ち、エミールの脳裏に、膨大な情報が流れ込んできた。タルタリアの歴史、科学技術、哲学、芸術…全てが、彼の意識の中に刻み込まれていった。
「…うっ…」エミールは、あまりの情報量に、意識を失いそうになった。
ミケが、エミールを支えた。「エミール、大丈夫ですか?データ量が多すぎます。処理が追いつきません!」
巨人は、水晶から手を離した。「無理はするな。少しずつ、理解していけばいい」
エミールは、なんとか意識を保ちながら、巨人に感謝した。「ありがとうございます…」
巨人は、再び遠い目をして言った。「我々は、お前を信じている。お前が、人類を導いてくれると信じている」
その言葉を残し、巨人は、ゆっくりと姿を消していった。水晶も、光を失い、静寂が戻ってきた。
エミールは、ミケに支えられながら、洞窟の入り口へと向かった。彼の頭の中には、タルタリアの知識が刻み込まれていた。そして、彼は、人類の未来を託されたのだ。
洞窟を出ると、そこには、見慣れた景色が広がっていた。しかし、エミールの目には、全てが違って見えた。彼は、過去の真実を知り、未来への責任を負ったのだ。
「さあ、ミケ。行こう。次の目的地は…」エミールは、古地図を広げ、新たな場所を指さした。「ナポレオンの足跡を追うんだ…」
(次話への期待感)
今回の出会いは、エミールに大きな影響を与えた。彼にタルタリアの知識が託されたことで、彼は歴史の真実を解き明かすだけでなく、人類の未来を導くという使命を背負うことになった。次なる目的地は、英雄ナポレオン。彼が残した足跡には、一体どんな真実が隠されているのだろうか?そして、エミールは、ナポレオンの過去を通して、人類の未来をどう見出すのだろうか?物語は、新たな局面を迎えようとしている。
第5話: 英雄の焦土 - ナポレオンの真実
戦場の異変 - ナポレオンが見た禁断の光
1812年、ロシア。凍てつく大地に、フランス皇帝ナポレオン率いる大陸軍の兵士たちが疲弊しきっていた。いつ終わるとも知れない泥濘の行軍。食料は底をつき、伝染病が蔓延し、士気は地に落ちていた。しかし、それ以上にナポレオンを苛立たせていたのは、戦場の「異変」だった。
「報告!」伝令兵が息を切らしながら駆け寄る。「スモレンスク近郊の森で、奇妙な建造物を発見しました!建築様式はこれまで見たこともないものです!」
ナポレオンは眉をひそめた。スモレンスクは既に焦土と化しているはず。そんな場所に未踏の建造物などありえない。だが、伝令兵の顔は真剣そのものだった。好奇心に駆られたナポレオンは、護衛兵を率いてその場所へ向かった。
森を抜けると、そこには異様な光景が広がっていた。巨大な石造りの構造物が、無残に崩れ去っていたのだ。その様相は、まるで巨大な何かに押し潰されたかのようだった。石材は見たことのない素材でできており、表面には奇妙な紋様が刻まれていた。
「これは…一体何だ?」ナポレオンは圧倒され、思わず呟いた。
その時、地面が微かに震えた。そして、空が異様な光に包まれた。
「陛下!伏せてください!」護衛兵の声に、ナポレオンは咄嗟に地面に伏せた。
次の瞬間、閃光が全てを焼き尽くすかのように輝いた。激しい熱風が肌を焦がし、ナポレオンは思わず目を瞑った。そして、彼の脳裏に、今まで経験したことのない映像が流れ込んできた。巨大な都市、空を飛ぶ乗り物、人智を超えたエネルギー…。それは、まるで別の世界の記憶だった。
「う…うう…」
光が収まった時、ナポレオンは意識を失っていた。周りの兵士たちも同様だった。しかし、ナポレオンだけが、あの光景を鮮明に覚えていた。そして、彼は悟った。この世界には、自分が知っている歴史とは全く異なる、隠された真実があるのだと。
革命の裏側 - 歴史を操る影の存在
パリに戻ったナポレオンは、表向きはロシア遠征の失敗を反省する皇帝として振る舞いながら、密かにあの光景の真相を追い求めていた。しかし、彼の周囲には、常に監視の目が光っていた。
ある夜、ナポレオンは信頼できる部下の一人、ジョゼフ・フーシェを呼び出した。フーシェは警察長官であり、ナポレオンの秘密裏の調査に協力してくれる数少ない人物だった。
「フーシェ、あのスモレンスクの建造物について調べろ。歴史書を洗いざらい調べ、関連する情報を全て集めろ。どんな些細なことでも構わない」
フーシェは頷き、「承知いたしました、陛下。しかし、最近、奇妙な噂が広まっております。曰く、フランス革命は、ある秘密結社によって仕組まれたものだと…」
ナポレオンは眉をひそめた。「秘密結社だと?一体誰がそんなことを?」
「名前は…『イルミナティ』と申します。彼らはあらゆる分野に潜伏し、歴史を裏から操っていると…」
ナポレオンは鼻で笑った。「馬鹿げている。だが、念のため、このイルミナティについても調べておけ。何が真実で、何が嘘か、見極める必要がある」
フーシェが去った後、ナポレオンは一人、書斎で思案に暮れた。もし、フランス革命が本当に何者かによって仕組まれたものだとしたら?そして、スモレンスクで見たあの光景が、その秘密と関係があるとしたら?
その時、書斎の窓が微かに開いた。そして、一人の影が静かに忍び寄ってきた。
「ナポレオン・ボナパルト…お前は、知ってはならないことを知りすぎた」
その声は、冷たく、そして無機質だった。
被爆の英雄 - 隠された傷跡、歪められた真実
暗殺者の刃がナポレオンに迫る寸前、彼は咄嗟に体をかわした。しかし、刃は彼の左腕を掠め、鮮血が飛び散った。
「貴様は誰だ!」ナポレオンは激昂し、暗殺者に向かって叫んだ。
暗殺者はフードを深く被っており、顔は見えなかった。彼は一言も発することなく、再びナポレオンに襲い掛かった。
激しい格闘の末、ナポレオンは辛うじて暗殺者を打ち倒した。しかし、暗殺者は自決用の毒薬を飲み込み、息絶えた。
ナポレオンは、左腕の傷口から異常な熱を感じた。そして、彼は気づいた。この傷は、ただの切り傷ではない。スモレンスクで浴びた光の影響で、彼の身体は既に蝕まれているのだ。
それからというもの、ナポレオンの身体は徐々に衰弱していった。彼は死の恐怖に苛まれながらも、秘密の解明を諦めなかった。
そして、彼はついに、タルタリア帝国という、かつて存在した高度な文明の痕跡を掴んだ。タルタリア帝国は、フリーエネルギーを駆使し、平和と繁栄を謳歌していたが、19世紀初頭に起きた核戦争によって滅亡したという。
ナポレオンは悟った。スモレンスクで見た光景は、タルタリア帝国の遺産だったのだ。そして、イルミナティは、その秘密を隠蔽し、世界を支配しようとしているのだ。
ナポレオンは、自らの死期が迫っていることを悟り、最後の力を振り絞って、真実を後世に伝えようとした。彼は、日記にタルタリア帝国のこと、イルミナティのこと、そして自身の身体に起きた異変について書き記した。
1821年5月5日、セントヘレナ島にて、ナポレオン・ボナパルトは息を引き取った。しかし、彼の残した日記は、歴史の闇に隠され、長い間日の目を見ることはなかった。
そして現代。歴史の裏に隠された真実を追い求める者たちが、ナポレオンの日記を発見し、再びタルタリア帝国の謎に挑み始める…。
次回、第6話「泥の洪水 - 文明のリセット」にご期待ください!
第6話: 泥の洪水 - 文明のリセット
マッドフラッドの爪痕 - 世界を覆う泥の記憶
荒れ果てた風景が、目の前に広がっていた。かつて壮麗な都市であった場所は、今はただの泥の海と化している。風が吹くたびに、乾いた泥が舞い上がり、埃っぽい匂いが鼻をつく。
主人公、レオは、古地図を握りしめ、瓦礫の山をよじ登っていた。相棒のAIドローン、アルゴスがレオの周囲を旋回し、地表のデータを収集している。「レオ、この地点は、地図上の座標と一致する。しかし…かつてここにあったはずの建造物は、完全に埋没している。」
レオは、眉をひそめた。「マッドフラッド…本当に、これほどの規模だったのか。」彼は、タルタリア帝国の痕跡を追う考古学者だ。秘密組織『クロノス』に追われながら、歴史から消された真実を解き明かそうとしている。
「レオ、瓦礫の中から微弱なエネルギー反応を検出。かつてのフリーエネルギー施設の残骸の可能性が高い。」アルゴスが告げた。
レオは駆け寄った。そこには、巨大な石造りのアーチの一部が、泥の中から顔を出していた。アーチには、幾何学的な模様が刻まれている。それは、かつてタルタリア人が使用していた、フリーエネルギーの制御パターンだった。
レオは、慎重に泥を取り除き、アーチに触れた。瞬間、かすかな振動が伝わってきた。「やはり…生きているのか?」
その時、背後から鋭い視線を感じた。レオは振り返った。泥の中に、人影が立っている。それは、クロノスのエージェント、イザベラだった。彼女は、冷たい笑みを浮かべていた。「レオ、お久しぶりね。あなたの調査は、ここまでよ。」
大地の悲鳴 - 文明を飲み込む巨大な波
イザベラは、両手にエネルギー砲を構えた。「クロノスの命令だ。タルタリアの遺産は、闇に葬り去る。あなたも、その一部になるのよ。」
レオは、アルゴスに指示を出した。「アルゴス、迎撃開始!そして、緊急脱出の準備を!」
アルゴスは、即座に防御シールドを展開し、イザベラの攻撃を防いだ。レオは、瓦礫の影に身を隠しながら、反撃の機会を伺っていた。「イザベラ…なぜ、そこまでして歴史を隠蔽する?タルタリアは、平和と愛の帝国だったはずだ!」
イザベラは、狂ったように笑った。「平和?愛?そんなものは、ただの幻想よ!タルタリアは、強大な力を持っていた。その力が、再び世界を混沌に陥れる可能性がある。だから、消さなければならない!」
彼女は、エネルギー砲を連射した。アルゴスのシールドは、徐々に消耗していく。レオは、古代タルタリアの技術を利用したガジェットを起動した。それは、周囲のエネルギーを吸収し、増幅する装置だった。
「このエネルギー…タルタリアの遺産を、再び輝かせる!」レオは、エネルギーをアーチに注入した。
その瞬間、アーチが眩い光を放った。周囲の瓦礫が振動し、地鳴りが轟いた。大地が裂け、巨大な水柱が噴き出した。
「マッドフラッド…これが、真実の姿か!」レオは、驚愕した。目の前の光景は、まさに文明を飲み込む巨大な波だった。それは、過去の過ちを洗い流し、新たな歴史を創造するための、大地の悲鳴だった。
イザベラは、なすすべもなく、水柱に飲み込まれていった。
アルゴスは、レオを抱え、緊急脱出を開始した。「レオ、急いでください!このエネルギーは不安定です。周辺地域に、更なる被害を及ぼす可能性があります!」
リセットボタン - 新たな歴史の幕開け
レオは、アルゴスに抱えられながら、泥の海を見下ろしていた。かつての文明の痕跡は、完全に消え去り、そこには、ただ広大な水面が広がっているだけだった。
「全て…消えてしまったのか。」レオは、悲しげに呟いた。
「いいえ、レオ。消えたのではありません。リセットされたのです。」アルゴスが言った。「タルタリアの遺産は、形を変えて、新たな歴史の種子となるでしょう。」
レオは、アルゴスの言葉に、希望を見出した。「リセット…か。確かに、過去の過ちを繰り返すわけにはいかない。」
その時、レオは、泥の中から、小さな光を見つけた。それは、タルタリアの紋章が刻まれた、石版だった。
「これは…」レオは、石版を手に取った。石版には、古代文字で、こう書かれていた。「愛は、全てを癒す。」
レオは、石版を胸に抱きしめた。「愛…それが、タルタリアの真髄だった。そして、僕たちが、未来に受け継ぐべきものだ。」
彼は、アルゴスに指示を出した。「アルゴス、次の目的地へ。まだ、タルタリアの遺産は残っているはずだ。そして、僕たちは、その真実を、世界に伝えなければならない。」
アルゴスは、力強く頷いた。「了解しました、レオ。次の目的地は…シベリアの奥地。凍てつく大地に眠る、真実を解き明かしましょう。」
彼らは、新たな冒険へと旅立った。しかし、レオは、まだ知らない。クロノスは、新たな刺客を送り込もうとしていることを。そして、タルタリアの遺産は、彼らが想像する以上に、危険な秘密を秘めていることを。
次話へ続く。
第7話: 凍てつく真実 - 温暖化の虚構
永遠の春 - 存在しなかった冬の物語
「信じられない…」アリスは古文書を震える手で握りしめた。目の前には、17世紀以前の世界地図が広がっている。そこには、現在とは全く異なる大陸の配置、そして、"タルタリア帝国"という巨大な文字が記されていた。
「先生、これ…本当に正しいんですか? 地理の授業で習ったことと全然違う…」アリスは隣に立つ考古学者のエドワードに問いかけた。エドワードは深く頷き、地図を指し示した。
「アリス、君が学んだ歴史は、意図的に塗り替えられたものだ。この地図が示すのは、かつて地球上に存在した真実の姿だ。17世紀以前、世界はタルタリア帝国、DSローマ、アジアの3つの勢力に区分されていた。そして、どの勢力も…フリーエネルギー文明を擁していたんだ。」
アリスは困惑の色を隠せない。「フリーエネルギー…? そんなものが本当にあったんですか? でも、冬は…冬は昔からありましたよね?」
エドワードは静かに答えた。「アリス、それこそが、最も巧妙に仕組まれた嘘なんだ。この文書にはっきりと記されている。かつて地球上には、冬という概念が存在しなかった。一年中、温暖な気候が続き、人々は争うことなく、愛の下に平和に暮らしていた…それがタルタリア帝国の理想だったんだ。」
突然、背後で物音がした。アリスとエドワードは身を翻し、警戒した。そこに立っていたのは、謎の組織"シャドウズ"のエージェント、クリスだった。
「ご苦労、博士。そして、お嬢さん。お二人には、これ以上真実に近づいてほしくない。」クリスの目は冷酷に光っていた。
地球の記憶 - 温暖化に隠された秘密
「クリス! どうしてここに…!」エドワードは叫んだ。彼はクリスの背後に目を凝らす。数人の武装した男たちが、無表情で立っていた。
「君たちが追っているのは、我々が隠蔽し続けてきた"地球の記憶"だ。温暖化という偽りのシナリオを信じ込ませることで、我々は人類をコントロールしてきた。君たちが真実を暴こうとするなら…排除するしかない。」クリスは冷たい笑みを浮かべた。
アリスは身構え、エドワードを守るように前に出た。「シャドウズ…あなたたちは一体何者なの? なぜ、そんなことをするの?」
「我々は、秩序を維持する者だ。人類は真実を知るには、まだ未熟すぎる。フリーエネルギーのような危険な技術を、再び手にするべきではない。」クリスはそう言い放ち、合図を送った。
武装した男たちが、一斉に銃を構えた。アリスとエドワードは絶体絶命のピンチに陥った。その時、アリスの首から下げられたペンダントが、眩い光を放ち始めた。それは、タルタリア帝国の遺産、フリーエネルギーの共鳴石だった。
「これは…!」エドワードは驚愕の表情を浮かべた。共鳴石は、周囲のエネルギーを吸収し、巨大なエネルギーフィールドを形成し始めた。
クリスは焦燥の色を隠せない。「何をする気だ! それは危険すぎる!」
アリスは決意を込めて言った。「あなたたちの嘘は、もう終わりよ! 私たちは、真実を明らかにする!」
共鳴石のエネルギーが最高潮に達した瞬間、アリスは、ある記憶を見た。それは、かつて存在した、冬のない美しい地球の記憶だった。
黙示録後の世界 - 塗り替えられた過去、歪められた未来
エネルギーフィールドは、シャドウズのエージェントたちを吹き飛ばした。クリスは辛うじて立ち上がり、アリスを睨みつけた。
「おぼえていろ、お嬢さん。これは終わりではない。我々は何度でも、真実を隠蔽するだろう。人類は、支配されることを望んでいるのだから。」クリスはそう言い残し、姿を消した。
アリスは疲労困憊しながらも、エドワードに寄り添った。「先生、一体何が起こったんですか? あの記憶は…?」
エドワードは深く息を吐き、答えた。「アリス、君が見たのは、タルタリア帝国の記憶だ。共鳴石は、その記憶を呼び覚ます力を持っている。シャドウズが恐れているのは、まさにそれなんだ。人類が、自分たちの過去を思い出すこと…そして、自由になることだ。」
アリスは決意を新たにした。「私たちは、真実を伝えなければならない。かつて存在した、平和で豊かな世界のことを…そして、シャドウズの陰謀を。」
エドワードは頷き、アリスの肩に手を置いた。「アリス、これは長い戦いになるだろう。だが、私たちは決して諦めない。タルタリア帝国の遺産を、そして、フリーエネルギーの力を…必ず取り戻す。」
二人は、夕焼け空の下、遠くを見つめた。塗り替えられた過去、歪められた未来…しかし、アリスとエドワードは、真実を求めて、新たな一歩を踏み出すことを決意した。
その時、アリスはふと疑問に思った。なぜシャドウズは、ロシアの広大な土地、そして、ヨーロッパ、アジア、アメリカ大陸の過去の文明の痕跡を徹底的に隠蔽しようとするのだろうか? そして、"アメリカは孤児たちが作った国"という奇妙な言い伝えには、どんな意味があるのだろうか?
真実への道のりは、まだ始まったばかりだった。
(次話への予告)
アリスとエドワードは、シャドウズの隠蔽工作の核心に迫るため、ロシアへと向かう。そこで彼らを待ち受けているのは、凍てつく大地に眠る、驚くべき真実だった。タルタリア帝国の影、そして、黙示録後の世界…凍てつく大地に隠された秘密が、今、明かされようとしている…! 次回、「黙示録SF戦記:巨人と愛のタルタリア」第8話「黙示録後の世界!過去の偉大な文明は、完全に隠蔽された!?ロシア編」にご期待ください!