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小説 神とシャイガイ:狂気の鹿神と不死身の爬虫類の黙示録


第1話: 異常存在との遭遇

平穏な日常の崩壊 - 如月ハニーの通う学園に突如現れた歪み

「きゃーっ!」

春爛漫の桜並木が続く、私立聖チャペル学園。昼休みの賑やかな声が響く中、突如、その風景は歪み始めた。

「一体、何なのよこれ!?」

赤髪をポニーテールにした少女、如月ハニーは驚愕の声を上げた。空に、まるで油絵が溶け出したような、黒いシミが広がっていく。それはどんどん大きくなり、校舎の一部を飲み込み始めた。

「ハニー、危ない!」

親友の早見青児がハニーの手を引いて避難する。黒いシミに触れたものは、まるで砂のように崩れ去っていく。

「青児、一体何が…」

ハニーの言葉は、悲鳴によって遮られた。黒いシミの中から、巨大な手が現れたのだ。それは無機質なコンクリートを握りつぶし、けたたましい音を立てて崩壊させていく。

神の啓示 - SCP-343との出会い、「選ばれし者」の使命

人々がパニックに陥り、阿鼻叫喚が響き渡る中、ハニーは不思議な光景を目にした。崩壊した校舎の隅に、穏やかな笑みをたたえた年配の男性が立っていたのだ。質素だが清潔感のある服装で、まるでそこが戦場であることを感じさせないほど落ち着いている。

「おじいさん、危ない!」

ハニーは叫んだが、男性は微動だにしない。それどころか、優しい眼差しでハニーを見つめ、微笑みかけた。

「私はただここにいるだけだよ。そして、君は選ばれし者だ」

男性は、まるでささやくように言った。その声は不思議な力を持っており、ハニーの心のざわめきを鎮めた。

「選ばれし者…?一体何のことなの?」

ハニーが問いかけると、男性は空を指差した。黒いシミはさらに広がり、学園全体を覆い尽くそうとしていた。

「この世界の均衡が崩れかけている。君には、それを正す力がある。恐れずに、己の力を信じなさい」

男性はそう言うと、ハニーに何かを悟らせるような、深遠な眼差しを向けた。

始まりの叫び - シャイガイの絶叫、逃げ惑う人々

その時、学園全体を震わせるような、悲痛な叫び声が響き渡った。

「ヒィィ…ギャアアアアアアア!」

その声は、人々の恐怖を煽り立て、逃げ惑う人々はさらに混乱を深めた。ハニーは声のする方向を見た。黒いシミの中から、異形の影が現れようとしていた。極度に痩せ細り、体毛のない人型の生物。顔は何かで覆われていて、表情は見えない。ただ、その絶叫だけが、人々の心を蝕んでいく。

「あれは…一体…?」

ハニーは言葉を失った。恐怖と同時に、言いようのない悲しみを感じたのだ。あの叫び声は、まるで世界の苦しみを代弁しているかのようだった。

その時、男性がハニーに近づき、静かに言った。

「あれは、シャイガイ。その姿を見た者は、決して逃れることはできない。だが、君なら…君なら、きっと何かできるはずだ」

ハニーは決意を新たにした。恐怖に震える足を踏みしめ、異形の影を見据える。

「私が…私が、みんなを守るんだ!」

その時、ハニーの胸に、熱いものが込み上げてきた。それは、まだ見ぬ力への予感だった。

第1話 完


続きは、シャイガイから逃れるための決死行が始まり、ハニーが初めてキューティーハニーに変身する第2話へ!果たしてハニーは、シャイガイの恐怖から人々を守ることができるのか!?

第2話: 迫りくる恐怖、シャイガイの影

監視カメラの映像 - シャイガイを目撃した者の記録

薄暗い研究室。無数のモニターが壁一面に並び、不気味な光を放っている。それぞれの画面には、ノイズの走る監視カメラの映像が映し出されていた。研究員たちは、息を詰めて一つのモニターを見つめていた。そこには、信じられない光景が記録されていたのだ。

映像は、数日前、郊外のトンネルで撮影されたものだった。一台の車がトンネルを通過する。何気ない風景。しかし、次の瞬間、映像に異変が起こる。トンネルの奥から、異様に痩せ細った人影が姿を現したのだ。

「ひ…ひぃ…」

モニターから聞こえるのは、悲痛なうめき声。シャイガイだ。その姿を目撃した運転手は、一瞬、理解が追いつかなかったのだろう。しかし、すぐに異様な雰囲気を察知し、車を急発進させた。

だが、シャイガイの速度は、常識を超えていた。まるでテレポーテーションのように、一瞬にして車に追いつき、その細い腕で車体を掴んだのだ。映像はそこで途絶える。悲鳴と金属が軋む音が最後に記録されていた。

「…生存者は?」研究室の長が、低い声で尋ねた。

「…残念ながら、いません」一人の研究員が、沈痛な面持ちで答えた。「映像を分析した結果、シャイガイは目撃者を…徹底的に破壊しました」

部屋に重苦しい沈黙が広がる。シャイガイを目撃した者の末路。それは、狂気に満ちた破壊だった。

逃走劇の幕開け - シャイガイから逃れるための決死行

その頃、如月ハニーは、学園からの帰り道を急いでいた。突然、携帯電話が鳴り響く。

「ハニー!大変なの!」

電話の相手は、ハニーの親友、早見青児だった。青児の声は、尋常ではないほど震えていた。

「一体どうしたの、青児?」ハニーは、不安を覚えながら問いかけた。

「…シャイガイだ!シャイガイが街に現れたんだ!」青児は、必死の形相で叫んだ。「さっき、ニュースで見た!絶対に、顔を見ちゃダメだ!すぐに逃げて!」

ハニーは、青児の言葉に息を呑んだ。シャイガイ…。神から聞かされた、あの恐ろしい存在が、ついに現実のものとなったのだ。

「わかった!青児も気をつけて!」

電話を切ったハニーは、すぐに走り出した。人混みを避け、裏路地を駆け抜ける。背後から、人々の悲鳴が聞こえてくる。シャイガイの絶叫が、街中に響き渡っていた。

「ギャアアアア!」

ハニーは、必死に逃げながら考えた。このまま逃げても、いつかは追いつかれるかもしれない。神は言った。「選ばれし者」。自分には、何かできることがあるはずだ。

ハニー、変身! - キューティーハニー、初めての戦い

「…やるしかない!」

覚悟を決めたハニーは、人けのない場所を見つけ、立ち止まった。そして、胸に手を当て、叫んだ。

「ハニーフラッシュ!」

まばゆい光がハニーを包み込む。そして、光が消えたとき、そこに立っていたのは、赤髪の美少女戦士、キューティーハニーだった。

「よし!行くぞ!」

ハニーは、シャイガイの叫びが聞こえる方向へ、走り出した。迫りくる恐怖。初めての戦い。しかし、ハニーの心には、強い決意が宿っていた。

街の広場に出ると、そこは地獄絵図と化していた。シャイガイは、その異様な姿で、人々を追いかけ、破壊の限りを尽くしていた。逃げ惑う人々。崩れ落ちる建物。恐怖と絶望が、街全体を覆っていた。

「シャイガイ!」

ハニーは、シャイガイに向かって叫んだ。シャイガイは、その声に反応し、ゆっくりとハニーの方を向いた。その顔は、隠れていて見えない。しかし、ハニーは、その奥に、深い悲しみを感じた。

「…私には、あなたを止める義務がある!」

ハニーは、決意を込めて叫んだ。そして、シャイガイに向かって、飛び込んだ。キューティーハニーとシャイガイ。狂気と正義の戦いが、今、幕を開ける。

次話、第3話「神と鹿と少女」にご期待ください! ハニーはシャイガイを止められるのか?そして、神が導く場所とは?

第3話: 神と鹿と少女

導き - 神の言葉に従い、鹿神様のもとへ

「あの叫び声…シャイガイの暴走は止まらないみたいだね」

ハニーは、神(SCP-343)の待つ教会から飛び出し、街の惨状を見下ろしていた。黒煙が立ち上り、人々の悲鳴が響き渡る。

神は、教会の扉に寄りかかり、いつもの穏やかな笑顔を浮かべていた。「心配することはないよ、ハニー。君ならできる。私はただここにいるだけだよ」

ハニーは振り返り、神に問いかけた。「でも…どうすればいいの?あんな怪物、どうやって倒せば…」

神は指を天に向けた。「君には、まだ眠っている力がある。その力を目覚めさせるには、北にある古代の聖地へ行く必要がある。そこにいる鹿神様(SCP-2845)が、君に力を与えてくれるだろう」

「鹿神様…?」ハニーは首を傾げた。「どんな神様なの?」

「言葉では説明できない存在だよ。ただ…彼に会えば、わかるさ。君の心に響くはずだ。信じて、ハニー。君は選ばれし者だ」

ハニーは決意を込めて頷いた。「わかった!鹿神様のところへ行く!みんなを守るために!」

ハニーは神に別れを告げ、北へ向かって走り出した。風を切る音、足元の砂利の音。不安と決意が入り混じった感情が、ハニーの胸に渦巻いていた。
「ハニーフラッシュ!」
ハニーはキューティーハニーに変身し、空へと飛び立った。

儀式 - 鹿神様の力、物質変換の神秘

北の聖地に到着したハニーは、息を呑んだ。そこにいたのは、想像を絶する巨大な鹿の姿をした神だった。首の先端にヒトの顔を持ち、幅4.8メートルの白黒の水玉模様の枝角を天に突き立てている。鹿神様(SCP-2845)は、荘厳な雰囲気を纏い、ハニーを静かに見下ろしていた。

ハニーは緊張しながらも、鹿神様に向かって話しかけた。「あ、あの…私は如月ハニー…キューティーハニーです。神様から、あなた様の力を借りるように言われました…」

鹿神様は言葉を発しない。しかし、その存在自体が、一種の儀式のように感じられた。鹿神様の周囲の空気が歪み、光が屈折する。そして、鹿神様の巨大な枝角から、眩い光が放たれた。

光はハニーを包み込み、ハニーの意識は遠のいていく。様々なイメージが脳裏を駆け巡った。古代の森、星空、そして、すべての物質が変化していく光景…。

ハニーが意識を取り戻すと、鹿神様の姿は変わらず、そこに鎮座していた。しかし、ハニー自身に、変化が起きていた。身体の中に、今まで感じたことのない、強大な力が満ち溢れている。

新たな力 - ハニー、鹿神様の力を得る

「これが、鹿神様の力…」ハニーは自分の手を握りしめた。力がみなぎってくるのを感じる。

その時、遠くから、あの絶叫が聞こえてきた。「ギャアアアアア!」

シャイガイ(SCP-096)の怒りの咆哮だ。街の破壊は、まだ終わっていない。

ハニーは覚悟を決めた。「行かなくちゃ!みんなを守るために!」

しかし、その時、ハニーの目の前に、鹿神様が作り出したと思われる、不思議な形状の武器が現れた。それは、光を帯びた杖のようなもので、どこか鹿の角を模しているようだった。

ハニーはその杖を手に取り、鹿神様に感謝を伝えた。「ありがとう、鹿神様!この力を、みんなのために使います!」

ハニーは、再びキューティーハニーに変身し、シャイガイのいる街へと飛び立った。

「今度こそ、決着をつけるんだ!」

ハニーの目には、強い光が宿っていた。鹿神様から得た新たな力、そして、守りたい人々の笑顔。そのすべてを胸に、キューティーハニーは、狂奔するシャイガイとの、最後の戦いへと向かうのだった。

しかし、その時、鹿神様の瞳が、かすかに揺らいだ。その視線の先には、空に現れた、微かな歪みが…

「ハニーフラッシュ!」

ハニーの叫びが、静寂を切り裂いた。

次回、第4話「狂奔と破壊」にご期待ください!

第4話: 狂奔と破壊

シャイガイの暴走 - 怒り狂うシャイガイ、街を破壊

けたたましいサイレンが鳴り響く。避難を呼びかけるアナウンスも、今はただのノイズだ。街は、阿鼻叫喚の地獄絵図と化していた。

「ギャアアアアア!」

シャイガイの絶叫が、鼓膜を破るかのように響き渡る。その姿を目にした者はいないはずなのに、奴は怒り狂い、破壊の限りを尽くしていた。コンクリートの壁は紙のように引き裂かれ、鉄骨はねじ曲げられ、まるで巨大な獣が暴れまわっているかのようだ。

「くそっ、どうしてこんなことに…!」

瓦礫の陰に身を隠しながら、如月ハニーは悔しげに唇を噛み締めた。神様(SCP-343)に鹿神様(SCP-2845)の力を授けてもらったとはいえ、この圧倒的な破壊力の前では、無力感に苛まれる。

(私が、もっと早く動いていれば…!)

ハニーは、避難の遅れた子供を庇い、倒壊しかけた壁の下敷きになりそうになった。

「危ない!」

間一髪、ハニーは子供を抱きかかえ、爆風から逃れた。しかし、その衝撃で、ハニーの変身ブローチがわずかに傷ついてしまう。

「ハニーフラッシュ!」

気を取り直し、ハニーは再び変身を試みる。しかし、ブローチの傷が原因か、変身が不安定で、力が十分に発揮できない。

「ぐっ…!」

その隙を突いて、シャイガイがハニーに向かって突進してきた。

追跡 - シャイガイを追うハニー、迫りくる危機

「させるか!」

辛うじて危機を脱したハニーは、変身を維持したまま、シャイガイを追跡する。

「一体、何が原因でこんなに…!」

ハニーは、シャイガイの暴走の原因を探ろうとしていた。鹿神様の力は、物質を変換・再構築できる。もしかしたら、シャイガイの怒りを鎮めることができるかもしれない。

しかし、シャイガイの速度は想像以上だった。瓦礫の山をものともせず、文字通り、街を蹂躙していく。

「ひぃぃ…」

時折、シャイガイの口から漏れるのは、悲痛な泣き声。怒り狂っているように見えて、その奥には、深い悲しみが隠されているようだった。

その時、ハニーはふと、神様の言葉を思い出した。

「私はただここにいるだけだよ。そして、全てを見ている…」

神様は、シャイガイの過去を知っているのかもしれない。ハニーは、神様の元へ向かうことを決意する。

「シャイガイ…!必ず、あなたを止めてみせる!」

ハニーは、シャイガイを追跡しながら、神様の居場所を探し始めた。しかし、その背後には、更なる危機が迫っていた。

瓦礫の中から、巨大な影が現れたのだ。

「お前たち人間は、皆殺しだ!」

それは、不死身の爬虫類、SCP-682だった。

孤独な叫び - シャイガイの過去、悲しみの理由

(回想)

白く無機質な部屋。そこに、一人の研究員がいた。彼は、シャイガイ(SCP-096)の観察を命じられていた。

「…今日も、変化なし、か」

モニターに映し出されるのは、顔を隠し、常にうずくまっているシャイガイの姿。彼は、何を見ているのだろうか。何を考えているのだろうか。

研究員は、好奇心に駆られ、シャイガイの過去を調べ始めた。しかし、記録はほとんど残っていない。ただ、彼が「極めて繊細で、刺激に弱い」という情報だけが、目に留まった。

ある日、研究員は、うっかりシャイガイの顔写真を見てしまった。

その瞬間、彼の世界は一変した。

(回想終わり)

現在のシャイガイは、ただ破壊を繰り返すだけの怪物ではない。かつて、誰かの好奇心によって、深い絶望に突き落とされた、悲しい存在なのだ。

その事実に気づいたハニーは、シャイガイを止めるための、新たな決意を固めた。

(私は、あなたを救ってみせる…!たとえ、どんな犠牲を払ってでも!)

しかし、SCP-682の出現によって、ハニーは絶体絶命の状況に陥っていた。

果たして、ハニーはシャイガイを救うことができるのか?そして、SCP-682の目的とは一体何なのか?

次回、神とシャイガイ:狂気の鹿神と不死身の爬虫類の黙示録 第5話「決戦前夜」!

第5話: 決戦前夜

神の助言 - SCP-343、ハニーに勝利のヒントを授ける

夕焼けが空を赤く染め上げ始めた頃、ハニーは神と向き合っていた。廃墟となった公園の一角、人々の喧騒とは無縁の場所で、神はいつもの穏やかな笑みを浮かべていた。

「ハニー、君は素晴らしい力を持っている。でも、力だけでは勝てない時もあるんだよ」

ハニーは真剣な眼差しで神を見つめ返した。「どうすればいいの? あのシャイガイ、止められる気がしない…」

「シャイガイは悲しい存在だ。彼の怒りの根源は、孤独と絶望にある。力でねじ伏せるのではなく、彼の心の奥底にある悲しみに寄り添うことができれば…」神は言葉を区切り、優しく微笑んだ。「私はただここにいるだけだよ。でも、君ならできると信じている」

「悲しみに寄り添う…ですか? でも、あんなに暴れているシャイガイに、どうやって…」ハニーは困惑した表情を浮かべた。

神は指先で空を指し示した。「彼の過去を見てごらん。何が彼をあそこまで追い詰めたのか。答えは君の心の中にあるはずだよ」

その時、ハニーの脳裏にシャイガイが破壊した街の光景が蘇った。同時に、シャイガイの孤独な叫び声が聞こえたような気がした。

「過去…そうか…」ハニーは呟き、決意を新たに神に深く頭を下げた。「ありがとうございます、神様。私、頑張ってみます!」

鹿神様の沈黙 - 鹿神様、静かにエネルギーを蓄積する

神との会話を終えたハニーは、急ぎ廃墟の奥へと向かった。そこには、巨大な鹿の姿をした鹿神様が静かに佇んでいた。その体からは、先日の儀式の時とは比べ物にならないほどの、圧倒的なエネルギーが感じられた。

鹿神様は言葉を発しない。しかし、ハニーにはその意志が伝わってきた。それは、明日への戦いのために、自らの力を最大限に高めようとしている、という強い決意だった。

ハニーは鹿神様の前に跪き、静かに目を閉じた。鹿神様から放たれるエネルギーが、ハニーの体を包み込むように優しく浸透していく。まるで、鹿神様がハニーに力を分け与えているかのようだった。

(ありがとう、鹿神様…)

覚悟 - ハニー、明日への決意を固める

夜空には満月が輝き、静寂が街を包み込んでいた。ハニーは街を見下ろせる丘の上に立ち、深呼吸をした。シャイガイの暴走によって破壊された街並みは、まだ痛々しい傷跡を残していた。

「明日…必ずシャイガイを止めなきゃ」

ハニーは心の中で呟いた。それは、自分自身に言い聞かせるような、強い決意のこもった言葉だった。

(神様が言っていた、シャイガイの悲しみに寄り添う…一体どうすれば…)

ハニーはこれまでのシャイガイとの戦いを振り返った。彼の絶望的な叫び声、破壊された街並み、そして、何よりもハニーの心に突き刺さったのは、シャイガイの深い孤独だった。

(きっと、シャイガイは誰かに助けてほしかったんだ…誰かに、自分の苦しみを理解してほしかったんだ…)

ハニーは拳を握りしめた。「私には、力がある。そして、何よりも、シャイガイの悲しみを理解したいという気持ちがある。きっと、できる…!」

その時、ハニーの胸に、不思議な光が灯った。それは、鹿神様から受け継いだ力と、ハニー自身の正義感が融合した、希望の光だった。

「ハニーフラッシュ!」

ハニーは静かに叫び、夜空を見上げた。明日、彼女は希望と絶望の狭間で、壮絶な戦いに挑むことになるだろう。しかし、ハニーは恐れていなかった。彼女の胸には、明日への強い決意が燃え盛っていた。


次話、第6話「希望と絶望の狭間」にご期待ください! キューティーハニー対シャイガイ、ついに決着!? そして、ハニーが見つけるシャイガイの真実とは…!?

第6話: 希望と絶望の狭間

キューティーハニー対シャイガイ - 壮絶な戦いの幕開け

街は瓦礫の山と化していた。かつて賑わっていた通りは、シャイガイの暴走によって無残な姿を晒している。ハニーは、変わり果てた光景を前に、怒りと悲しみに震えていた。

「許さない…絶対に、許さないんだから!」

ハニーは空高く舞い上がり、シャイガイを捉えた。その姿は、怒りの炎を纏った戦乙女そのもの。しかし、シャイガイの狂気は、ハニーの想像を遥かに超えていた。

「ギャアアアアア!」

シャイガイの絶叫が、街全体を揺るがす。その声は、ただの悲鳴ではなく、積年の苦しみと絶望が凝縮された慟哭だった。シャイガイは、目に映るもの全てを破壊し尽くさんとばかりに、無差別に暴れ回る。

ハニーは、シャイガイの攻撃をギリギリで回避しながら、攻撃のチャンスを窺う。

「ハニーフラッシュ!」

ハニーは、ミサイルハニーに変身し、シャイガイに向けて無数のミサイルを発射する。だが、シャイガイは、その全てをものともせず、突進してくる。ミサイルは、シャイガイの体を捉えることなく、爆発の衝撃だけが、ハニーを襲う。

「くっ…なんてパワーなの…!」

ハニーは、体勢を立て直す間もなく、シャイガイに掴みかかられる。シャイガイの爪が、ハニーの装甲を抉り、皮膚を切り裂く。

「ひっ…!」

ハニーは、激痛に顔を歪めながらも、必死に抵抗する。

「ダメだ…こんなところで、負けるわけにはいかないんだから!」

その時、ハニーの脳裏に、神の言葉が蘇る。「勝利のヒントは、相手の弱点を見抜くことだよ。そして、慈悲の心を持つことだ」

ハニーは、シャイガイの瞳を見つめた。そこには、狂気と絶望だけではなく、深い悲しみが宿っていた。

傷だらけの勝利 - 追い詰められたハニー、最後の賭け

シャイガイの猛攻に、ハニーは次第に追い詰められていく。街はさらに破壊され、もはや原型をとどめていない。ハニーの体も、満身創痍だった。

「ハァ…ハァ…もう…ダメかも…」

ハニーは、膝をつき、息を切らす。シャイガイは、そんなハニーを見下ろし、今まさに、止めを刺そうとする。

その時、ハニーの胸に、鹿神様の力が宿ったペンダントが、眩い光を放ち始める。

「鹿神様の…力…?」

ハニーは、最後の力を振り絞り、立ち上がる。その体は、鹿神様の力によって、新たな姿へと変貌を遂げようとしていた。

「これが…最後の…賭けだもん!」

ハニーは、全身から溢れ出すエネルギーを一点に集中させ、シャイガイに向けて放つ。

「ハニー…鹿神様…フラッシュ!」

それは、ハニーと鹿神様の力が融合した、最強の必殺技だった。光の奔流が、シャイガイを飲み込み、激しい爆発が起こる。

爆発の後、そこには、満身創痍のハニーと、静かに佇むシャイガイの姿があった。

シャイガイの最期 - 悲しみの中で消えゆくシャイガイ

シャイガイは、その身に受けたダメージによって、もはや動くことすらできなかった。その瞳には、狂気ではなく、静かな諦めが宿っていた。

ハニーは、シャイガイに近づき、そっと手を差し伸べる。

「もう…いいんだよ…」

ハニーの言葉に、シャイガイは小さく震えた。そして、かすれた声で、何かを呟く。それは、誰にも聞き取れない、小さな、小さな声だった。

次の瞬間、シャイガイの体は、光の粒子となって消え始めた。それは、まるで、長年の苦しみから解放された魂が、天へと昇っていくかのようだった。

ハニーは、シャイガイが消えゆく姿を、涙で見送った。

「さよなら…シャイガイ…」

シャイガイが完全に消滅した後、静寂が訪れた。街は、依然として破壊されたままだが、そこには、確かに希望の光が灯っていた。

ハニーは、瓦礫の中に佇み、静かに空を見上げた。

その時、穏やかな声が、ハニーの耳に届く。

「おや、随分と疲れているようだね。私はただここにいるだけだよ」

見ると、そこには、いつものように穏やかな笑みをたたえた神の姿があった。

「神様…」

「君は、本当によくやった。だが、物語は、まだ終わらない」

神の言葉に、ハニーは顔を上げた。その瞳には、新たな決意が宿っていた。

「…分かってる。私は、これからも、みんなを守るために戦うんだから!」

第6話 完

第7話へ続く! 瓦礫の中から現れる、新たな脅威! そして、神の言葉の意味とは…!?

第7話: そして、未来へ

終わりの始まり - 平穏を取り戻した街、しかし…

街は静けさを取り戻していた。瓦礫は片付けられ、崩れた建物は修復され始めている。それでも、人々の心には深い傷跡が残っていた。シャイガイの恐怖、破壊された日常。まるで悪夢を見たかのように、人々は互いに顔を見合わせ、安堵と不安が入り混じった表情を浮かべていた。

如月ハニーは、夕焼け空の下、瓦礫の撤去作業を見守っていた。キューティーハニーとしての戦闘形態を解除し、いつもの赤髪の女子高生の姿に戻っている。その表情は、勝利の喜びに満ちているわけではなかった。シャイガイの悲しみを、その最期の叫びを、彼女はまだ忘れることができないでいた。

「終わった…のかな?」

ハニーはぽつりと呟いた。その声には、安堵と同時に拭いきれない不安が滲み出ていた。

その時、背後から優しい声が聞こえた。

「終わったのは、一つの物語だよ、ハニー」

振り返ると、そこに立っていたのは、穏やかな笑みをたたえた老人だった。SCP-343、神だ。今日の彼は、近所のおじいちゃんのような、より親しみやすい姿に見えた。

神の微笑み - SCP-343の言葉、「物語は終わらない」

「私はただここにいるだけだよ」

神はいつものように、微笑みながらそう言った。

「シャイガイは…もう苦しまなくて済むのね?」

ハニーは不安げに尋ねた。

神は静かに頷いた。「彼の魂は解放された。だが、世界には、まだ多くの苦しみがある。多くの歪みが、お前を待っている」

ハニーはハッとした。「歪み…?」

「そうだ。シャイガイのような存在だけが、世界の歪みではない。もっと深く、もっと複雑な…例えば、己の存在意義を疑い、狂気に蝕まれるもの…」

神は遠くを見つめながら、重々しく言葉を紡いだ。

その時、空に黒い亀裂が走った。雷鳴のような轟音が響き渡り、空間が歪み始める。

人々は悲鳴を上げ、再び恐怖に怯えた。ハニーは、身構え、叫んだ。

「一体何が…!?」

亀裂の中から、聞こえてきたのは、狂気に満ちた声だった。

「私は…存在しているのか?それとも、ただの…幻影…なのか…?」

その声は、まるで何重にも重なり、分裂しているかのように聞こえた。

新たな誓い - ハニー、新たな脅威に立ち向かうことを誓う

亀裂から現れたのは、異様なオーラを放つ存在だった。それはSCP-3812。混乱と狂気に苛まれ、自己の存在意義を問い続ける男だ。

「私は…誰だ…?」

3812は虚空を見つめ、自問自答を繰り返す。その存在自体が、周囲の空間を歪ませ、不安定なものにしている。

その直後、地鳴りが起こり、別の場所から轟音が響き渡った。「お前たち人間ども!皆殺しにしてくれる!」

声の主はSCP-682、不死身の爬虫類だ。激しい怒りを露わにし、ハニーたちに向かって突進してくる。

街は再び混乱に陥った。避難する人々、恐怖に怯える顔。そして、ハニーの耳には、神の声が響いていた。

「物語は終わらない。ハニー、お前の戦いは、まだ始まったばかりだ」

ハニーは決意を新たにした。キューティーハニーへと変身を遂げ、力強く叫ぶ。

「ハニーフラッシュ!」

赤髪の美少女は、迫りくる二つの脅威に、勇敢に立ち向かうことを誓った。

しかし、その背後では、巨大な鹿の影が静かに佇んでいた。鹿神様は、無言のまま、その異変を監視している。白黒の水玉模様の枝角が、不気味に光を反射していた。彼の目的は一体何なのか…?

新たな敵、深まる謎。キューティーハニーの新たな戦いが、今、幕を開ける!

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