ドラフト指名を振り返る(パ・リーグ)
10月24日に開催されたプロ野球ドラフト会議。前回投稿ではセ・リーグの指名について考察していきましたが、今回はパ・リーグ各球団の指名について考察していきます。
・埼玉西武 評価:B
今季ペナントレースにおいては歴史的貧打もあってダントツの最下位。そのため強打の野手が補強ポイントと言われていました。その中で初回入札をしたのが宗山選手(明治大学)。強打というよりは守備面を評価されていた選手ですので、初回入札には正直驚きました。ただチーム全体の補強ポイントを見ると、年齢のあがってきた源田選手の後釜候補を獲得したいところ。そのように考えると宗山選手指名も妥当な指名であると言えます。結果クジを外したものの次に指名したのが石塚選手(花咲徳栄)。打力が魅力の高校No1遊撃手ということもあり、金丸投手を外した巨人と競合。ここでもクジを外し、外れ外れ1位にて誰を指名するのかと注目していたところ、斎藤選手(金沢高)を指名。競合がなかったことから選択確定となり、ようやく1位指名が確定しました。斎藤選手ですが、将来間違いなくプロで遊撃を守れる選手と高く評価していました。打撃面はまだですが、守備力と運動センスは正直クジで外した石塚選手よりもかなり上です。育成に3~4年はかかると考えますが、そのころ源田選手は34歳~35歳。遊撃手では厳しくなる年齢ということもあり、うまく世代交代ができるのではないでしょうか。また2位では1位指名があってもおかしくない渡部選手(大阪商業大学)を獲得。これは推測ですが、同じくクジを外したソフトバンクが斎藤選手に外れ外れ1位入札の可能性があることから斎藤選手を1位指名し、ウェーバー方式となる13番目の指名で渡部選手を指名。結果としてソフトバンクは村上投手(神戸弘陵高)を入札しましたが、指名順を考えることで、斎藤選手と1位指名でもおかしくなかった渡部選手両方獲得できた点について、ドラフト巧者ぶりを示せたのではないでしょうか。クジを外したものの、残っている選手と指名順を活かし、うまくリカバリーできたという印象です。3位においては将来の先発候補である狩生投手(佐伯鶴城高)を獲得。野手指名に極端に偏らず、将来を考えて高校生投手指名は好感が持てます。4位で台湾出身の林選手(日本経済大)を指名。長打力が魅力の外野手で、いかにも西武が好みそうなタイプの選手。即戦力ではありませんが、山川選手などこのタイプの選手の育成実績がるため、西武ならではの指名ではないでしょうか。将来を見据え、5位指名で篠原選手(福井工大福井高)、6位で龍山選手(エナジックスポーツ高)と高校生バッテリーを指名。即戦力だけではなく、きちんと育成をしていくという姿勢を感じられます。7位指名の古賀選手(千曲川硬式野球クラブ)については全く知らない選手だったのですが、日本経済大出身の選手で、長打が魅力の三塁手とのこと。こういった全国的に知られていない選手を発掘する指名も西武らしいと感じます。
ここまで西武の指名を振り返りました。結果としては源田選手の後継、強打の野手と指名ポイントを充足させ、将来へ向けた育成も行う姿勢を感じる指名は好感が持てます。外野から色々言われたと思いますが、補強ポイントを的確に補強した指名は、さすがドラフト巧者と言えるのではないでしょうか。
・オリックス 評価:C
ドラフト会議開催前から言われていたオリックスの補強ポイントですが、強打の外野手と言われていました。得点力不足もあり5位に沈んだことから打てる野手を補強することは最大の課題。金丸投手(関西大)が地元というこもあり指名を希望したいるとの報道もありましたが、日本代表で4番を務めた西川選手(青学大)を指名しました。ロッテも指名したことから競合となり、クジを外したことから外れ1位で指名したのが麦谷選手(富士大)。強打の外野手はその通りなのですが、最大の特徴は50メートル5秒8を誇る脚力。遠投110メートル、逆方向にも大きな当たりを打てる打力と、走攻守三拍子揃ったリードオフマンタイプの選手です。中軸タイプではありませんが、打力のある外野手という点において、補強ポイントと一致します。能力の高い選手ですのでプロのスピードに慣れれば、早い段階から出てくる選手ではないでしょうか。2位指名において寺西投手(日体大)を指名。山本投手の抜けた穴を埋めるべく、先発候補としての指名でしょう。高校時代は奥川投手(ヤクルト)の控え投手でした。懸念材料は高校から常に故障と戦ってきた選手でであること、故障もあり大学での実績が1年程度しかないこととなります。3位指名の山口投手(仙台育英高)ですが、全国では目立った成績は残していないのですが、193センチと長身から投げ込む140キロ後半のストレートについて評価の高い選手。ここ数年続いている育成路線での指名でしょう。筆者的に驚いたのは4位指名した山中選手(三菱重工East)を捕手で指名したこと。左打ちの外野手、タイプとしては中距離打者であるという評価で、他チームは見ていたと考えます。大学時代は捕手であったわけですが、大学4年時にコンバートされているため、どのポイントを見て捕手指名を決めたのか気になります。指名後の挨拶を見ると、可能性としての指名だったようですが、それであれば外野手指名で挨拶時に捕手もというのが妥当ではないのかと感じます。5位指名は東山投手(ENEOS)で6位指名は片山選手(NTT東日本)。両投手ともオーソドックスな右投手であり、空振りがとれるストレートを持ち、変化球も多彩。恐らく即戦力の中継ぎ投手という評価での指名でしょう。オリックスはな下位指名の社会人投手の見極めに定評があることから、1年目から中継ぎなどのリリーフで活躍してくれるのではないでしょうか。
ここまでオリックスの指名を振り返りました。オリックスの指名としては、西川選手のくじは外したものの、それ以降の指名はほぼ予定通りだったのではないでしょうか。ただ不可解なのは6位片山選手指名時における20分におよぶ指名中断。NPB関係者が何やら説明して結果として取り下げしたとみられるため、何が起こっていたのか気になります。この点においては後日検証してみたいと考えております。
・東北楽天 評価:A
楽天は指名前から「即戦力選手を指名」という方針を打ちだしておりました。結果としてはその通りの指名となったのではないでしょうか。1位指名において、5球団競合した宗山選手を引き当てる幸運。10年遊撃手に困らないとされる逸材で、今ドラフト最大の目玉選手。正直これだけでA評価は確定となります。守備位置においても、村林選手はユーティリティプレーヤーであることから遊撃手に拘る必要もないため、動かすことも容易でしょう。順調にキャンプを過ごせれば、遊撃手で開幕スタメンで出場できるものと考えます。打力は正直そこまででもないのですが、プロで場数をこなせばそれなりに打てるようにはなる選手。育成ではなく実戦にてレベルアップして欲しい選手です。2位指名の徳山投手(IPU)ですが、故障さえなければ外れ1位くらいの評価を受けていた投手。ただ3年時における左肘の怪我の影響から4年春に登板なし。秋は登板しているものの、本来の実力を発揮できていないこと、無理して投げているようであれば入団即肘のトミージョン手術の懸念があることから、状態面を考え評価を下げた球団もあったはずです。その中で敢然と2位指名。状態面において問題なしと確証を掴んでの指名であれば、会心の指名となります。3位においては中込投手(四国リーグ・徳島)を指名。サイド気味のフォームから投げ込む即戦力の中継ぎ投手。楽天ですが、このようなサイド気味の投手を好む傾向にあると感じます。4位指名の江原投手(日鉄ステンレス)は故障がちの投手だったのですが、今年に入り補強選手で出場した都市対抗で好投したことにより、注目されたのでしょう。最速153キロのストレートが武器のリリーフ投手ですので、即戦力中継ぎ投手としての獲得ということでしょう。5位指名の吉納選手ですが、4年秋にかけて結果を残したことから評価のあがった選手。楽天ですが、外野手も手薄ですので即戦力で使える選手ということで指名ということでしょう。長打力もあり脚力も兼ね備えた選手であることから、正直この順位まで残っていた点について、意外に感じました。6位指名の陽選手(BCリーグ・茨城)ですが高卒1年目の遊撃手。高い身体能力や俊足に加え堅実な守備が持ち味の選手。ただ宗山選手の壁は厚いことから、二塁手へのコンバートも考えた指名なのでしょうか。
ここまで楽天の指名を振り返りました。楽天の指名について、独自指名が多いことから指名意図が分かりにくいことが多いのですが、今指名については遊撃手と即戦力投手を獲得したいという意図が明確であったと考えます。その点で言えば宗山選手獲得で満点ドラフトと言えるのではないでしょうか。
・千葉ロッテ 評価:B+
補強ポイントとしてはとにかく野手であり、特に外野手。今年40歳を迎える荻野選手の後が決まらないというのは問題であると考えます。また二遊間についても、友杉選手に次ぐ遊撃手、年齢のあがってきた中村選手の後など課題は山積。野手中心の指名がドラフト前より予想されていました。1位指名は全日本で4番を務めた西川選手(青学大)。オリックスとの競合でしたが、クジを引き当て無事獲得となりました。中軸打者ですが、ソト、ポランコと外国人への依存度が高く、捕手である佐藤選手あたりが中軸を打たなくてはいけないという所に、選手層の薄さを感じます。西川選手が加入すれば外国人と並ぶ打順で中軸打者として期待できることから、会心の指名であったのではないでしょうか。2位指名は社会人の二塁手である池田選手(ヤマハ)。高値掴みという声も聞こえますが、正直現在の陣容を考えるとやむを得ないのではないでしょうか。小柄ながらも広角に鋭い打球を放つ選手。打順は下位になるとは思いますが、開幕スタメンもありえるのではないでしょうか。3位指名は一條投手(東洋大)。高校の頃からドラフト候補とされていましたが、正直大学ではあまり投げていなかったこともあり、この順位で指名されるのには驚きました。最速150キロの中継ぎタイプの投手ですが、プロで投げるには少々時間がかかるのではと見ています。4位指名の坂井投手(関東一高)は甲子園でも登板した最速150キロ投手。球の速さを活かしたリリーフ投手というのが完成形イメージでしょうか。5位指名の廣池投手(東海大九州キャンパス)は高校2年時に投手転向し、大学にて急成長した投手。ダイナミックなフォームから150キロ台のストレートを投げ込む投手ですが、まだ成長中というイメージ。大学生ではありますが即戦力ではなく、2~3年後を見据えた指名ではないでしょうか。6位の立松選手(日本生命)は指名時入団を迷うといった発言もありましたが、タイプとしては強打の一塁手ですが元は捕手。打撃を活かすためにコンバートされた経緯があります。ロッテも打力を評価しての指名と考えますが、守備位置をどうするのか注目したい選手です。
ここまでロッテの指名を振り返りました。野手は即使える選手を指名するものの、投手は時間がかかるも素質の高い選手を獲得するという方針が見えます。正直指名はチームに不足する要素を穴埋めするという意図が高かったと感じますが、狙った選手は順調に獲得できたように感じます。
・北海道日本ハム 評価:B
今季若手選手の躍進もあり、ペナントレース2位まで順位を上げ、CSにも出場。その中で補強ポイントとなるのは水野選手の成績が安定しない遊撃手。元々世代No1の選手を指名する方針もあるため、早い段階から宗山選手(明大)指名が予想されていました。当日は予想通り宗山選手指名もクジを外しました。そのため投打二刀流で注目を集めていた柴田選手(福岡大大濠高)を指名。ソフトバンクと重複するも無事引き当て獲得できました。柴田選手ですが、正直未完の大器という印象。筆者的には打者と見ていますが、おそらく二刀流で育成するものと思われます。ポテンシャルだけでの指名ですので時間は正直かかります。ただ大谷選手を育成したノウハウがあるため、二刀流でも育成は可能と考えます。その意味においては柴田選手はいい球団に指名されたのではないでしょうか。2位指名は大型左腕投手である藤田投手(東海大相模高)。3年生になって夏にかけて球速が10キロあがるなど、今が成長期の選手といえるでしょう。このような未完の大器タイプの選手は大学だと埋没しかねないため、高卒でのプロ入りは正解と考えます。時間はかかるでしょうが、順調に成長した時どのような投手になっているのか前例がないため期待したところです。浅利投手(明大)ですが、正直この順位で指名されるのかと驚きを感じました。球速は最速153キロで、大学では主に救援で起用されていました。現在は救援で起用されていますが、ポテンシャルは高い投手ですのでプロで成長できれば、先発での起用も見えてくるのではないでしょうか。正直ポテンシャル重視での指名と考えられることから、実際に一軍で投げるには早くて1年くらいはかかるのではないかと考えます。4位指名の清水投手(前橋商)ですが、ポテンシャルだけで見れば世代屈指の投手。最速は149キロですが、まだ伸びると見ています。ただ体つくりから初めてプロとしての投球を身につけるには早くても3年はかかるとみています。未完の大器ということもあり、大きく育って欲しい投手です。5位指名山縣選手(早大)は守備面だけを見れば宗山選手に引けを取らないと早大小宮山監督が評した選手。打力は非力ですが高格にはじき返す技術はあり、犠打といった小技も巧み。プロでは2番や9番といった打順を担うのではないでしょうか。ちなみに早大学院出身という文武両道の選手でもあります。6位指名山城投手(法大)はリーグでは1勝も150キロのストレートと大きく変化するスライダーで注目を集めていた投手。正直完成度が低いためどのような起用方法になるのか見えないのですが、高いレベルで期待したい投手です。
ここまで日本ハムの指名を見てきました。とにかく言えることはポテンシャルに全振りした指名であるということ。来年の即戦力となるのは山縣選手だけで、あとは育成に数年を要する選手ばかりと言えます。育成手腕が問われるのと評価は数年先になること、仮に期待通りに成長したと仮定した場合いい意味でとんでもない指名になると言えるのではないでしょうか。
・福岡ソフトバンク 評価:C
ソフトバンクの補強ポイントは年齢のあがってきた今宮選手の後釜と先発で使える投手。その狙いもあってか宗山選手に入札するもクジを外し柴田選手も競合でクジを外したことから村上投手(神戸広陵高)を指名。投手転向2年あまりでありながら最速152キロを計測した投手。まだ線も細く投手として学ぶことも多い選手ですが、それだけ伸びしろも大きいということ。時間はかかると思われますが、うまく育成できれば世代を代表する投手になれる可能性を秘めています。ただ懸念はソフトバンクの育成方法。基本的に自分から出てくる選手を起用することが多いため、きちんと球団がプログラムを作成し育成しないと、大成できない可能性もあります。2位指名は庄子選手(神奈川大)。50メートル5秒5と俊足が武器な遊撃手であり、脚力だけであれば開幕一軍もある選手。課題は非力な打撃だったのですが、秋にかけて改善されてきたことからこの順位での指名でしょう。またソフトバンクの補強ポイントとして遊撃手があるわけですが、確実に2位でとれる選手としてリストアップしていたものと思われます。肩も強いため遊撃手でもいいのですが、外野手とみても面白い選手です。3位指名安徳投手(富士大)は最速152キロを誇る右投手。大学では空振りのとれるストレートを活かすため、主に救援で起用されていました。プロにおいても中継ぎでの起用が予想されますが、変化球も多彩であることから先発起用もあり得る投手と見ています。4位指名宇野選手(早実高)は高校通算64発のスラッガー。高校では遊撃手でしたが守備に課題があること、スローイングに課題があることも考えるとコンバートが有力ではないでしょうか。二塁が守れればベストでありますが、1塁や外野の可能性もあると見ています。とにかく持ち味は打撃、それも長打力ですのでそこを活かす育成が求められます。5位指名石見選手は強打の三塁手。外野も守ることがあったはずですので、両にらみでの育成が予想されます。6位指名は岩崎投手(東洋大)。最速153キロのストレートが持ち味の投手ですが、正直大学でもそれなりに打たれていたことから、支配下指名は微妙と見ていました。球の力があることから、プロにおいては中継ぎでの起用を視野に入れた指名ではないでしょうか。
ここまでパリーグ支配下におけるドラフト指名を検証してきました。どの球団も補強ポイントがあり、そこを的確に指名できている印象を受けます。5球団競合である宗山選手を獲得できた楽天は満点、クジを2回外すも補強ポイントである1位クラスの選手2名獲得できた西武の指名が高めの評価としてあります。ロッテは西川選手を獲得できたものの、補強ポイントの指名を優先した結果、少々高値つかみの感もあるため若干評価を下げています。難しいのが日本ハムの指名で評価をBとしましたが、育成状況によってはS評価からE評価もありえる指名と評価しています。ただ、セリーグの際も書きましたが、あくまでもドラフト指名はプロ野球選手のスタートラインであるということ。ここからの選手の努力であり、球団の育成が真のドラフト指名評価となるということでしょう。