シャオレイ誕生に感謝の日のこと
シャオレイ、今日から個室暮らし。
上野の双子のパンダ、シャオシャオとレイレイは最近は80キロ近い体重でぶつかり合うので、ついに別居となった。
姉のシャンシャンは二歳前に個室暮らしになっているので、それより1年もほかの同類がそばにいたわけで、よかったんじゃないかと思う。
この双子の生まれた日を覚えている。
私は大動脈弁二尖弁という生まれつきの弁の形成不全みたいなものがあって、40代で「心雑音がある」「弁が少し緩いみたい」と言われ、50代で「心臓の精密検査をお勧めします」と言われ、心臓専門病院で造影剤検査をして「大動脈弁二尖弁」という診断がおりた。
このときまで弁がどういう形をしているかなんて考えたことはなかったのだけど、模型で説明されてベンツマークみたいにみっつに分かれているのが通常で、私のは真ん中に一つ切れ目があるだけということがわかった。。
そりゃ血流も悪くなるわな。
最終的には置換手術しかないけど、当面は経過フォローを数年おきにということだった。
あのときの老医師の「あなたの心臓に悪いことろがないことを調べましょう」と言ってくれた優しさと置いてあったチョッパーのことは忘れられない。
造影剤、かなり気持ち悪くなることも。
そして数年後、私は転居し、そこで行った開業したてのクリニックの先生が循環内科を専門とした人だった。
インフルエンザの予防接種を受けに行ったのだが、聴診器をあてるなり「なにか心臓で言われたことないですか?」だったのでかくかくしかじかとお話しする。
すると「うちでエコーもできますからフォローしませんか」と言ってくれたので渡りに船。
そして2021年。世間はまさかのコロナ禍で延期された東京五輪をこの年はバブル方式でやるという夏。
それまでも何回か「もう手術していいと思いますよ」「うーむ」「もう少し様子見ますか」を繰り返し、
どうせやるなら夏の方が太陽がいっぱいでいいな、と受けた6月の診察のエコーを診た先生が「手術しましょう」ときっぱり仰った。私も「はい」と返事した。驚いたことに先生は「すみません」と頭を下げられたのだ。えー、先生のせいじゃないのに。私はこの先生のこういう心意気が好きだ。
先生がきっぱり言うなら、きっぱり従おう。
病院はどこになるのか尋ねたら「同級生に循環外科医がいます」ということで都内のT病院に。
夫への説明はどうせ私がしたら「どういうこと」「なんで」でめんどいので、先生に家族への説明をお願いし、夫には帰りに寄るように連絡した。
すぐ夫はT病院を予約して、初診の日が6月23日だった。
手術を受けることは決心してたので診察で「レベル5(1→5で重い)だから手術ですね」と言われても驚かなかったが、そこから次々検査の指示がでて、それをこなすのに一日かかりそうだった。
なれない言葉を浴びてぐったりして待合室でぼーっとしてたときに入ったニュース。
それが
「上野動物園のジャイアントパンダのシンシンが双子を出産しました」だった。
なんて素敵なニュースだろう!
無事に赤ちゃんが生まれるだけでも嬉しいのに、しかも双子!!
この子たちと一緒に術後も生きていくんだ、
まずはこの子たちが公開されるまでに元気になろう、
どよんとしていた気分が一気に上向きになった。
あれから2年10ヶ月。
まだシンシンと同居中に寝てる双子を観ることができた。
もう一度くらい行きたいなと思ってたけど急なニュースで叶わなかったが、
それぞれの部屋にいるのだから、また成長ぶりを観に行こう。
みんな健やか。それが何より。
シャオレイは自分たちの誕生がどれだけ人を励まし慰めたか知るまい。
人間の赤ちゃんもそう。
生まれるだけでいい、生まれたら育つだけでいい、生きてるだけでありがとう。