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「指数は生き物」——変わる世界、変わる勝者

「アメリカ株は最強、この流れはきっと続く」

そんなふうに考えていませんか?

実際、今の世界の株式市場はアメリカ企業が圧倒的な存在感を放っています。

オルカンが連動を目指すMSCI ACWI指数でも、2025年1月末時点でアメリカ株の比率は約66%。

世界の3分の2がアメリカ企業なのです。

「やっぱり米国株一択じゃない?」

そう思うのも無理はありません。

でも——。

この状況は、永遠に続くでしょうか?

過去を振り返ると、いつの時代も「今の勝者」が次の時代も勝ち続けたわけではありません。

市場は変わる。

指数も変わる。

指数は生き物なのです。

そして、あなたの資産もその変化の影響を受けることになります。

今回は、この「指数の変化」を掘り下げ、「なぜ全世界株式が合理的なのか」を見ていきましょう。

15年間で、世界の顔ぶれはどう変わった?


まず、具体的な数字を見てみましょう。

オルカンが投資対象とするMSCI ACWIの国別構成比率を、2009年と2025年で比較してみます。

● 2009年6月末時点
• アメリカ:約42%
• 日本:約10%
• イギリス:約8%
• フランス:約4%
• 中国:約2%

● 2025年1月末時点
• アメリカ:約66%
• 日本:約4.7%
• イギリス:約3.5%
• フランス:約2.9%
• 中国:約3%

どうでしょう?

この15年間で、アメリカの存在感が圧倒的に強まった一方、日本やヨーロッパの比率は軒並み縮小しています。

2009年、世界第2位の比率だった日本は、今や5%を切りました。

「日本株は終わった」——そう感じる人もいるかもしれません。

でも、これこそが指数の「生き物らしさ」。

世界経済の変化をそのまま反映しているのです。

「アメリカ一強」を生んだのは、あの企業たち


では、なぜここまでアメリカの比率が上がったのでしょうか?

その答えは、誰もが知る巨大企業たちにあります。

GAFAM(Google、Apple、Facebook、Amazon、Microsoft)。

そして、近年ではエヌビディアやテスラなどが、株式市場を牽引してきました。

例えば、2009年時点でのGAFAMの時価総額合計は、約4000億ドルでした。

それが2025年には、10兆ドル超に膨れ上がっています。

たった15年で、25倍以上。

その成長スピードは圧巻です。

一方、日本企業はどうでしょうか。

かつて世界を席巻したトヨタやソニーも、今では時価総額ランキングの上位にはほとんど見られません。

世界の資本は、成長が見込める企業へと自然と流れます。

その結果、アメリカの比率は自然と高まり、日本は相対的に存在感を失ったのです。

これが、指数が「生き物」と呼ばれる所以。

放っておいても、強い企業・強い国に資産が流れ込む仕組みが出来上がっているのです。

「今の勝者」に賭けるリスク


このデータを見れば、「じゃあアメリカ株だけでいいじゃん」と思う人もいるでしょう。

でも、ちょっと待ってください。

かつて、今のアメリカのように「一強」と言われた国があったことを、覚えていますか?

——日本です。

1989年、日経平均株価は史上最高値を記録し、世界時価総額ランキングの上位を日本企業が独占していました。

MSCI ACWIにおける日本の組み入れ比率は、当時40%以上。

当時の投資家たちはこう考えていました。

「日本経済は世界最強、この流れはずっと続く」

でも、その後どうなったでしょうか。

バブル崩壊、長期デフレ、経済停滞。

その結果、日本株の世界市場における存在感は、35年で約90%も縮小しました。

もし、1989年に「日本株一択」で投資していた人がいたら?

その後の世界的な株式市場の成長の恩恵を、ほとんど受けられなかったでしょう。

これは、日本に限った話ではありません。

かつてはイギリスやドイツが世界経済の中心だった時代もあります。

しかし、時代は変わり、覇権国も移り変わっていきました。

「今の勝者」が未来も勝者である保証は、どこにもない。

これが、投資の世界で忘れてはならない大前提です。

全世界株式が合理的な理由


では、どうすればいいのでしょうか?

「次の覇権国を予測できればいい」

確かにそれができれば理想的ですが、実際にはほぼ不可能です。

投資の世界には「予測不能な出来事」がつきもの。

リーマン・ショックやコロナショックのような危機、想定外の企業の台頭など、未来は常に不確実です。

だからこそ、最初から「どの国が勝つか」を当てようとせず、全ての国に分散投資しておくのが最も合理的なのです。

全世界株式に連動するオルカンのようなファンドは、世界の変化に合わせて自動的にポートフォリオが調整されます。

もしアメリカが衰退し、インドや東南アジアが成長すれば、その比率が自然と増える。

逆に、今後もアメリカが強ければ、その恩恵もそのまま受けられる。

未来を予測する必要はありません。

「指数」という生き物に、ただ乗るだけでいい。

指数は生き物。

投資はシンプルに。

投資で成功する秘訣は、未来を予測することではありません。

「変化に適応すること」です。

その意味で、全世界株式は投資の最適解と言えるでしょう。

指数は、時代とともに勝者を入れ替えます。

日本のように一時は世界の覇者だった国が衰退することもあれば、無名だった企業が市場を席巻することもある。

でも、全世界株式なら、そんな変化にも自然と対応できる。

「今の勝者」に賭けるのではなく、「未来の勝者を自動で取り込む」。

それが、長期投資で最も大切な視点です。

さて、あなたはどちらを選びますか?

未来を予測して賭けるか。

それとも、変化に乗って生き残るか。

— 指数は生き物。あなたの投資もまた、生き方を映し出す。

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