遺族年金という「知られざる補償」:生命保険の見直しで家計を守る方法
私たちは毎月の収入から約3割を社会保険料として支払っています。
この中には健康保険、年金保険、介護保険など、多くの種類の保険が含まれています。
その中でも「遺族年金」という制度は、万が一の際に遺族の生活を支える重要な補償です。
しかし、この遺族年金がいくら支給されるのかを正確に理解している人は、驚くほど少ないのが現実です。
その結果、多くの人が民間の生命保険に過剰に加入し、毎月の家計に大きな負担をかけています。
本稿では、遺族年金の仕組みや金額、民間保険の見直しがなぜ必要なのかを解説し、根拠と数字をもとにその重要性を論じます。
遺族年金の基本を知る:まずは公的補償を把握することから
遺族年金は、国民年金や厚生年金に加入している人が亡くなった場合に、その遺族が受け取れる年金です。
例えば、厚生年金に加入していたサラリーマン(平均月収40万円)が亡くなった場合、妻(30歳)が子ども2人を育てると仮定しましょう。
このケースでは、年間約170万円の遺族年金を受け取ることができます(国民年金部分と厚生年金部分の合算)。
これを月額にすると約14万円。
仮に妻が65歳まで受け取るとすると、総額で約6,000万円にのぼります。
一方で、同じ家庭が加入している民間の生命保険の保障額を見てみると、「3,000万円~5,000万円」の死亡保障が設定されていることが多いです。
ここで気づくべきなのは、遺族年金がすでに民間保険の保障額に匹敵する、もしくはそれを上回ることです。
過剰な生命保険が家計を圧迫する理由
日本人は「保険好き」と言われるほど、多くの家庭が民間の生命保険に加入しています。
2023年のデータによると、世帯ごとの平均生命保険料支出は月額3万円を超えています。
年間では36万円、30年支払うと1,080万円です。
この金額が、果たして本当に必要な保障を得るための支出なのかを考えるべきです。
遺族年金が支給されることを知らずに過剰な保険に加入することで、家計の貴重なリソースが浪費されている可能性が高いのです。
例えば、先ほどのケースでは遺族年金だけで6,000万円を受け取れる可能性があります。
それに対して、さらに民間保険で5,000万円の保障を追加すると、遺族が受け取れる金額は合計で1億1,000万円にもなります。
ここで考えなければならないのは、「本当に1億円以上の補償が必要なのか」という点です。
具体例:山田さん一家の場合
ある一家の事例を見てみましょう。
山田さん(35歳、会社員、月収40万円)は妻(専業主婦)と2人の子どもがいます。
彼は、月々1万円の生命保険料を支払っており、死亡時の保障額は3,000万円です。
もし山田さんが亡くなった場合、遺族年金として妻には年間約170万円が支給されます。
これを20年間受け取ると、総額で3,400万円。
民間保険と合わせると、遺族が受け取れる金額は6,400万円です。
しかし、仮に家計の支出が月額30万円だった場合、遺族年金だけで十分生活を賄えます。
つまり、この場合、山田さんが支払っている保険料1万円は不要だった可能性が高いのです。
死亡保障の考え方:遺族年金+必要分を補う
必要な死亡時の補償額を計算する際には、まず遺族年金でどれだけの金額がカバーされるのかを確認することが重要です。
例えば、必要な生活費が月額30万円だとします。
遺族年金が14万円支給される場合、不足するのは月額16万円です。
この金額をカバーするために、民間保険で必要な補償額を設定すればよいのです。
月額16万円を20年間補うには、総額で約3,800万円が必要です。
ここで初めて民間保険が意味を持ちます。
無計画に高額な保険に加入するのではなく、具体的な不足額を計算することが合理的な家計管理につながります。
Q&A:よくある疑問に答える
Q1. 遺族年金はずっと支給されるのですか?
A. 遺族年金は一定の条件下で支給されます。
例えば、妻が65歳になるまで支給され、65歳以降は老齢年金に切り替わる場合が多いです。
子どもへの加算は18歳までです。
Q2. 自営業の場合も遺族年金はもらえますか?
A. 国民年金に加入している自営業者も遺族基礎年金を受け取れます。
ただし、厚生年金がないため、受け取れる金額は会社員より少なくなります。
Q3. 民間保険は必要ないのですか?
A. 全く不要というわけではありません。
特に高額医療費や教育資金など、遺族年金ではカバーしきれない部分に対して補助的に活用すべきです。
まとめ:まずは「知らない損」をなくすことから
遺族年金は、私たちが支払う社会保険料の中に含まれている重要な補償です。
その金額を知らずに民間保険に加入することは、家計に無駄を生じさせる原因になります。
まずは遺族年金の仕組みと金額を確認し、不足分だけを民間保険で補うという考え方を徹底しましょう。
それが、家計を守りながら効率的なリスク管理を行うための第一歩です。