人は簡単すぎると不安を抱く
投資の世界では、実に不思議な現象が起こることが多いです。
一番シンプルな方法が実は一番効果的なのに、それがあまりにも「簡単すぎる」ために人々は逆にそれを避けてしまうのです。
これは、料理のレシピで「たったの3つの材料でできる完璧なカレー」と言われたら、「いや、もっと隠し味とかあるはずだ!」と疑うようなものです。
今回は、そんな「簡単すぎる」けど実は非常に強力な投資方法について話していきます。
それは、広く分散された低コストのインデックス・ファンドに積立投資すること。
これだけで80点以上はとれるのに、なぜ多くの人がこの方法を避けてしまうのか、またその結果どうなるのかを見ていきましょう。
インデックス・ファンドってそもそも何?
まず、「インデックス・ファンド」とは何かを簡単に説明します。
インデックス・ファンドとは、市場全体(または特定の市場セグメント)に連動するように設計された投資信託の一種です。
たとえば、日経平均やS&P500といった株価指数に連動するファンドがこれにあたります。
要するに、市場全体の動きに乗っかって資産を増やそう、というものです。
この方法の魅力は、そのシンプルさと低コストです。
個別の株や債券を選ばなくても、全体に投資するだけで市場の成長を享受できるのです。
シンプルなのに強力な理由
さて、なぜこれが強力なのか?
それは、歴史的に見て市場全体は長期的に成長する傾向があるからです。
たとえば、米国のS&P500は過去数十年間、年平均で7%から10%のリターンを生み出してきました。
もちろん、短期的には市場が下がることもありますが、長期的には経済が成長し、それに伴って株式市場も上昇します。
複利効果もこの方法の味方です。
「雪だるま式」という言葉があるように、利子に利子がついていくと、最初は小さな投資額でも長い時間をかけると驚くほど大きな金額に膨らみます。
バフェットは「投資で成功するには、時間と忍耐が何より大事だ」とよく言います。
インデックス・ファンドへの定期積立は、まさにその言葉を具現化した方法なのです。
なぜ人々は「簡単すぎる」と感じるのか?
それにもかかわらず、多くの人がこの方法を軽視してしまいます。
その理由は、簡単すぎると「なんか怪しい」と感じるからです。
人は、難しいことに価値を見出しやすいという傾向があります。
たとえば、大学入試で難解な数式を解くより、教科書通りの簡単な問題を解くことが「足りないんじゃないか」と感じることがありますよね。
同じように、投資でも「これだけで本当にうまくいくの?」と思ってしまうのです。
また、「短期で大儲けできるかも」という誘惑も大きな要因です。
ニュースで「この銘柄が急騰!」とか「〇〇円が一晩で数倍に!」といった話を聞くと、どうしてもそちらに目がいってしまいます。
でも、ここで思い出してほしいのが、短期的な利益を狙うことはほとんどの場合ギャンブルに近いということです。
市場の動きを完璧に予測することは不可能に近く、多くの人が挑戦しても失敗に終わることが多いです。
実際、ある調査によると、個別株に投資して市場平均を上回るリターンを得られる確率は、1年でおよそ20%しかありません。
そして、その確率は時間が経つにつれてどんどん下がっていきます。
データによると
次に、データを見てみましょう。
バンガードの調査によると、過去30年間にわたって個別株投資を行った投資家の平均リターンは、年率約4%でした。
一方、同期間にインデックス・ファンドに投資した場合、年率約9%のリターンを得られたというデータがあります。
たかが数%の差と思うかもしれませんが、複利の効果でこの差は30年後には数倍の差を生み出します。
たとえば、100万円を年率4%で運用した場合、30年後には約324万円になります。
一方、9%で運用した場合は、同じ100万円が約1,325万円になります。
このように、長期的な視点で見ると、低コストで広く分散されたインデックス・ファンドへの投資がいかに強力かがわかります。
よくある反論に答える
「でも、インデックス・ファンドに投資するだけじゃつまらない!」という意見もあります。
確かに、インデックス・ファンドは刺激的ではありません。
個別銘柄を選んで、短期間で大きなリターンを得るスリルはありません。
でも、投資で最も大事なのは「退屈さ」かもしれません。
なぜなら、感情が介入する投資はリスクを高めるからです。
「感情的な投資は失敗の元」とよく言われますが、実際に多くの投資家が感情に左右されて損をしています。
市場が下がると慌てて売り、市場が上がると焦って買う。
その結果、低く売って高く買ってしまうのです。
インデックス・ファンドに定期的に積み立てる方法は、そんな感情のブレを防いでくれます。
事例の紹介
最後に、一つの実例を紹介しましょう。
世界有数の投資家、ウォーレン・バフェットも生前に「自分が死んだら、資産の90%はインデックス・ファンドに投資してほしい」と遺言を残しています。
彼ほどの投資の天才が、なぜインデックス・ファンドを勧めるのでしょうか?
それは、長期的な市場の成長を最も簡単に享受できる方法だからです。
バフェットはこれを「負けにくい戦略」と呼びます。
一時的に市場が下がったとしても、広く分散されているため、ある程度のリスクヘッジができるのです。
まとめ
投資で成功するために、何か特別なスキルや知識が必要だと思いがちですが、実際はそうではありません。
広く分散された低コストのインデックス・ファンドに積立投資するだけで、80点以上は取れるのです。
もちろん、「これだけでいいの?」という気持ちはわかります。
でも、他に何か特別なことをしようとして失敗するくらいなら、シンプルな方法に徹した方がいいのです。
投資はシンプルであればあるほど、成功しやすいのです。
やはり、最良のカレーは、余計な隠し味を入れず、基本の3つの材料で作るのが一番美味しいのかもしれませんね。