産後のお母さんと数字
授乳前後に赤ちゃんの体重を測って
母乳を何g飲めたか確認することを
助産師は『母測』と呼んでいます。
私が学生の頃は、
3時間おきの授乳の時に、
母測をして、
足りない分だけミルクを飲ませる、
というやり方の病院で実習していました。
2000年以降、BFH(赤ちゃんにやさしい病院)の認定をとるべく、
母乳主流を目指した病院が増えたように思います。
しかし、入院中に、
母測をする助産師もまだおり、
母測を経験したママは
母測の経験が脳にインプットされます。
「4gしか増えてないね」
「吸ってたのにね」
「おかしいね」
おっぱいへの信頼が揺らぎます。
なので私は母測を極力しないようにしています。
訪問で、昼間にママと一緒に母測をしてみて、例えば18gだったとする。
でも、夜中や朝は母乳分泌がいいので、
多分もっと出てるはず。
と、なると、その18gって
あまり参考にならないのです。
夜中は100ml近く出てるかも。
そして、4ヶ月くらいの子はとにかく
真面目に飲まない。
おっぱいを吸ってはママの顔を見てにっこり。
あっちこっちキョロキョロ。
「夜中は半分寝てるので
ゴクゴク飲んでくれます」
そう。
そうなんですよね。
お腹の中に未練を感じて
おっぱいばかり
泣いてばかりいた赤ちゃんも、
4ヶ月になると、
「お母さん」という絶大な信頼を獲得し、
産まれてきたこの世界も
悪くないなぁと思い始めます。
楽しいことがいっぱい。
夜中にまとめて飲む。
昼間はあまり飲んでくれないことがあります。
そして昼は
母乳分泌がグッと減る人も多いです。
数字を見ると、気になっちゃう。
一回18gか。
哺乳瓶にたっぷり入ったミルクを想像したら
とても足りていないように感じる。
なんだかかわいそう。
だから一日中泣いてるんじゃないか。
母乳の分かりにくさに
なんだか途方もなく不安を感じる。
だから、きっちりし過ぎないことが大切です。
授乳の間隔も
授乳にかける時間も
赤ちゃんの要求と
ママの感覚で決めていきます。
足りているかどうかは、
おしっこうんちの回数と
時々体重測定して判断します。
自分ひとりで判断できない時は、
出産した病院の助産師
区役所の助産師
お住まいの地区の助産師
近くの助産院 など
で相談しましょう。
完母希望でもミルクの力を借りて
いいんですよ。
赤ちゃんがぐんぐん成長したい時期や
ママが自分の身体を維持するだけで
精一杯の時期には
ミルクの力を借りよう。
赤ちゃんが動きたい遊びたい時期には
母乳だけでも足りるかも。
ママが元気になったら
母乳の量は増えるかも。
その後、ミルクはいくらでも減らせます。
離乳食になればミルクなしにできることもあります。
⏳
母乳は一回の授乳で、
前乳→中乳→後乳と
成分が変化します。
前乳: 乳糖が多い。さっぱり。
中乳: 甘味が薄い。たんぱく質の濃度が高い。
後乳: 脂肪の濃度が上がる。こってり。
赤ちゃんは時間をかけて
味の変化を楽しみます。
となると、タイマー授乳ってどうかな?
乳腺炎になりやすい人は、
1回の授乳でバランスよく吸ってもらいたいのでタイマーをかける必要もあるかもしれません。
特に理由なく
入院中の流れでタイマー授乳を続けてきてしまった人は、
可能ならこの機会に赤ちゃんに任せてみてください。
特にトラブルが起きにくいママなら、
一日の中で、
左右のバランスがとれてれば大丈夫。
さっき右吸ったから、今度左にしよう。
そんな感じでOKです。
⏳
いつも時計をちらちら。
赤ちゃんがふにゃと言えば、
作業をやめて対応する。
お母さんの緊張感は、
正解を見つけたいお母さんの焦る気持ちと
医療者の指導が相まって
作り上げてしまったのかもしれない。
おっぱいを欲しそうにしたら吸わせる。
単純な気持ちでやろう。
繰り返そう。
日々を積み重ねよう。
はじめからいろいろなことが分からなくていい。
まずは赤ちゃんに合わせること。
検索するのはそれから。
検索したら、
実験のように楽しく試してみよう。
合わなければ
ぽんぽん捨てよう。
正しい方法は、
私と赤ちゃんをニコニコさせるもの。
それだけ選んでいこう。
あなたの中から湧き出たもの、
それが正解。