THE FIRST SLAM DUNK ネタバレ感想
スラムダンク感想のネタバレ感想です。
今後見る予定のある人は前情報なしに是非見てほしい。
そのうえで感想を教えてほしい。
正直、今作を観た自分は感情がぐちゃぐちゃになっている。
観てよかったのだけど、色々ぐるぐるしている。
私はスラムダンクに影響を受けた兄の影響を受けてバスケにのめり込み、学生生活はもちろん社会人になってからも定期的にプレーするほどハマっている。NBAの情報もチェックしているし、趣味がバスケと言えるくらいなので、スラムダンクへの思い入れも強い。正直声優交代劇にはかなり相当すんごくショックをうけた。思い入れが強い中で、結果鑑賞してよかったのだけど、とにかく感情が濁流になって渦巻いている。
ここから先はネタバレを含むので、ご注意下さい。
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まず今回の主人公は桜木花道ではありません。宮城リョータです。山王戦を中心に宮城リョータという人物にフォーカスして掘り下げていくストーリーです。
元々新声優の紹介の順番が
PG宮城
SG三井
SF流川
PF桜木
C赤木
だったことに多少の違和感を感じてはいたんだけども、実はこれポジションの順番なので、バスケ経験者からすると納得の紹介順なんです。今回のディザスターも実は宮城が真ん中にいた。
これも、ポイントガードは真ん中を護る事が多く、センターの赤木が後ろの真ん中にいるのは絵面的によくある納得の構図なので、全く違和感は感じでいなかったのですが、井上先生に上手いこと騙されました。
そして物議を醸し出した声優交代劇も、今回のストーリーにするのであれば絶対に旧作の声優は使えなかった。前作のイメージを持ってくると崩壊してしまうほど、今作は全体のテーマを変えてきている。それくらいスラムダンクでありながら、スラムダンクではない作品だった。
沖縄でバスケをしているリョータの幼少期からストーリーは始まる。三人兄弟の真ん中で、早くに父を亡くした傷心の中、心の拠り所としていた兄ソータとバスケをする日々。だがそのソータも事故で亡くしてしまう。バスケの上手かった死んだ兄と常に比較されながら生きてきた。そんな息子を不憫に思い沖縄を離れて神奈川に引っ越すことに母は決めるが、早くに旦那と子供を無くしているためリョータの母も癒せない喪失感があり、次第にリョータとの関係は疎遠になっていく。どこか自分に自信がないまま新天地に馴染めず、それでもバスケにのめり込むリョータの荒れた学生生活。
実は宮城リョータは、城北のスタメンの中で一番出番が少ない選手。小柄でスピードとテクニックで、敵陣を切り裂くのは非常に痛快なプレースタイルだが、敵の主戦力である翔陽の藤真や海南の牧、山王の深津など全国でも通用する選手にマッチアップする事が多く、作品上やられ役になる事も少なくなかった。3Pの三井やセルフィッシュなエース流川、神奈川No1センター赤木と主人公桜木花道とくると、どうして出番が少ない。こればかりもうしょうがない。ただ競技経験者は宮城が如何に凄いかわかっているし、なんならもっと活躍しているシーンが見たいとも思っていた。
その上での今作の感想を私はどう書いていいかわからない。
映像はどうだった?と言われれば最高だった。作画は完全に今の井上先生の絵になっているので、花道のリーゼントの雰囲気が昔と違ったりと新鮮。CGは思った以上に違和感はなかったし、汗などカッコいい絵になっていた。何より非常に高いレベルでバスケットボールの試合を再現していた。
専門用語で言うと、ローポストでしっかりスタックしてフリーの三井が3P打っているし、DFもしっかりディナイしているし、各選手の動きが完全に競技者のそれだった。とにかく再現度が高くて驚いた。幼少期のリョータのドリブルも小学生に有りがちな大きなボールをコントロール出来ない縦気味なドリブル。そこまで再現するかというリアリティ。
音楽も最高だった。敢えてBGMカットして試合音だけにしたり、要所要所でメリハリのあるカッコいいBGM流れるし、10-FEETも初めは懐疑的だったのだが、エンディングとして改めて聞くと、今作のスラムダンクにぴったりな楽曲になっていた。
また試合が中心なので、会話劇がそこまで多くない。だから声優変更による違和感もかなり感じづらかった。というか、前回の声優を使うと雰囲気が全部ぶっ壊れるので、今作の声優だからこそ今作のムードにあっているのは間違いない。
試合の展開も原作通り最高で、何度も読んだはずなのにあの試合終盤のヒリつく感じは堪らなかった。特に井上雄彦先生の表現として後世に非常に影響を与えている、効果音も含めた全ての音を排除して、絵だけで疾走感を作り出すあの神演出は、映像でも成功している。もし山王戦ならあの場面をどう魅せるのワクワクしていたが、想像より遥かに良かった。そうなのだ。映像演出音楽とどれもバスケの試合として最高だったのだ。
でも、この映画を面白かったと聞かれると私は回答に困る。正確に言うなら、面白い面白くないではなく、見たかったかどうかという話である。
ストレートに言うなら、宮城リョータの過去を私が知りたくなかった。全国の舞台である広島行きの前日でも母親との確執はあり、死んだ兄の代わりになれない喪失感を感じる、劣等感のある彼を見たくなかった。
私が彼のセリフの中でも特に好きなの原作シーンは『流れは自分たちでもってくるもんだろがよ』と上級生である主将赤木と三井に毅然と檄を飛ばすところだ。PGとして流れを引き寄せるために心の折れかかっている仲間を鼓舞するこのシーンは本当に胸が熱くなる。
ただ、実は劣等感。と言われてしまうとマジか。。。と言う気分だ。宮城は見せ場は少ないが、必ず試合に出続けて、常に冷静にゲームをコントロールすべく試合に向き合っている(豊玉戦除く)
因みに
赤木は怪我
流川三井はガス欠退場
桜木花道は5ファウル退場
と、皆抜けてる
ボコボコにされた山王戦でさえ、いち早く立て直し反撃の狼煙を狙っていた俺たちのりょーちんなのだ。
そのりょーちんが。。。
今作は山王戦の映像化という点で間違いなく成功している。ただ、リョータというキャラクターの深堀のための添え物に山王戦がなってしまったようにも感じる。キャラクターの過去の積み重ねが、王者山王と戦う上で力になっていくことに視聴者は感動するのは間違いない。だから赤木と三井を観ている小暮に感動するし、桜木と流川がパスしたところで胸が熱くなる。
だけど、家族との再生の物語を山王戦のコートに持ち込んで欲しくなかった。
井上雄彦先生の人間ドラマは本当に凄い。特にリアルなんか読んでいると、圧倒的な表現に心を掴まれる。ただ、リアルの重い雰囲気はスラムダンクに必要だったのだろうか。少年たちがこぞってバスケを始めたあのスラムダンク。そう思ってスラムダンクを観に行ったはずがリアルになっていた。君が好きだと叫びたいというあの真っ直ぐなスポーツへの情熱を観に行ったはずが、孤独と喪失感と劣等感に切り替わっていた。なのでそこに疑問がある。これはわざわざスラムダンクでやらなくても良かったのでわ。しかもよりにもよって山王戦。
山王戦は本当に集大成で、スラムダンク31巻ある単行本のうち6巻も使う最終決戦なのだ。なんなら31巻はラスト1分の試合時間を1冊かけてやるくらい濃密な展開。安西先生じゃないけど、全てをこのコートに置いてこようというくらい、全てを注がなくてはいけないものなのだ。
そこにリョータの孤独や迷いが、自分には純度を下げる雑音に見えてしまった。
これは完全に好みと解釈の問題で、映画館を後にしている時に女性二人が『りょーちんカッコいい!』『惚れる!』と言っていて、確かにそう思う人もいるよなと思った。ただ私は上手く納得ができていないのだ。
きっとバスケを観に行くか人間ドラマを観に行くで、全く意見が割れるところだとは思う。
一方、今回の山王戦の試合だけを映像化したら面白かったかと聞かれるとそうでないと思う。映画化にあたってはこの新規エピソードが必要だった。山王戦は集大成過ぎるので、映画でやるには説明臭くなる。それこそ、これまでの積み重ねがない中、単体作品としてはきついエピソードだ。120分の尺の中でドラマとスラムダンクとバスケを融合させるにはこうするのは正解だったと思う。今回は新規視聴者が楽しめるようにするということもかなり意識していたようだし、既存キャラクターの過去の深堀は確かにエピソードとして良かった。ただ私の解釈が合わないだけで。。。過去の暗い話は花道の父親とかみたいにスパイスとしてあれば良いかなと。
ちょこちょこ今作用に原作を修正しているところも多く、三井が過去に宮城と出会っていたり、不良から急に改心して戻ってきたり、魚住が出て来なかったり(観客の中に魚住っぽい影はいた)、原作エピソードの続きにあたる沢北のアメリカも描かれている。まさかリョータもラストシーンでアメリカに渡っていて沢北と対戦するとは思わずかなり驚いた。作者が作っているのでこれは正式なもの認識して良いのか?と混乱しつつ、やはり原作にないエピソードを観れるのは嬉しい。
今作が面白かったか?と聞かれれば、面白かった。
スラムダンクの映像化作品としては?と聞かれると私は解釈が合わない部分もあったが面白かった。山王戦サイコー。
バスケを作品映像化した作品として?はい、サイコー。
なんだよ、俺観て良かったと思ってるじゃん。。。。
因みに余談なんですが、リョータの兄貴のソータが秘密基地にしている場所は井上雄彦先生のピアスという読切作品に出てくるところと全く一緒。
で、どうも調べてみたらピアスの主人公はリョータの過去なのでは説があり、気になって再読。本当は駄目なのですがY⚫︎u⚫︎u⚫︎eに上がっているものを視聴。。。。完全に今回の話とリンクしてるやないか!1998年からリョータの兄貴の設定は存在したのか!?
ジャンプで読切を読んだ時に全くリョータだと思ってなかったな。左耳のピアスはそう言うことか。
あー、バスケしたくなってきた。
最後に、アニメ版で赤木剛憲役を務められた梁田清之さんのご冥福をお祈りします。素晴らしい演技をありがとうございました。
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