
Magazine【全アルバム】Punk期に生まれた最重要バンドかも知れない!?

はい!Magazine(マガジン)です!
私は、このマガジンかザ・ポリスのどちらかが、パンク期に生まれた最重要バンドだと思っています。
ひょっとすると、いや多分、知らない人の方が多いんじゃないかな?
デビューアルバムのリリースは1978年なので、完全にパンク期のバンドの一つですが、登場時点ですでに“PostPunk”と呼ばれていたし、後のバンドマンに与えた影響はSting率いるポリスと並んで、極めて大きいのではないかと思います。この2つのバンドは、年齢も20歳そこそこのパンクバンド達よりも5〜6歳くらい上で、Dr.Feelgoodを代表とする「いわゆるテンポの速いガレージロックンロール」というパンクロックの公式からは大きく逸脱しています。このマガジンの中心人物であり、フロントマンはVo.のHowardDevoteです。Buzzcocksという今で言うBritPOPの先駆けみたいなバンドをこれまたのちのバンドマンたちに大きな影響を与えるピート・シェリーという人と一緒にやっていましたが、ミニアルバム1枚出して脱退し、今回、紹介するバンド、マガジンを作りました。
私がマガジンをめちゃめちゃに好きになったのは、大学でバンドを組んでからです。実は、このバンドの音楽を最初に聞いたファーストアルバムリリース当時は、それほど強いインパクトを受けず、丸々3年ばかりの間、放置プレイしていたと思います。もちろん、高校生の時から知っていて、アルバムも2枚ほど持っていましたが、正直、ちゃんと聴いてはいなかったです・・・「ちょっと小難しいな〜」という感じで...笑 やはり、高校のときですから、バンドの仲間と話題にするパンクバンドはストゥジーズとかハートブレイカーズとかで、テレビジョンとかトーキングヘッズあたりになると、連中はよく知らない人が多かったし、個人的にはプログレばっかりを中心に聴いていたので、「パンク系でちょっと変わった音楽のバンド」くらいの印象しかなかったんです。
ところが、大学でバンドを組んで、オリジナルを主体にしていこうとなったとき、一旦、ちゃんとしっかり聴いてみようとなった途端に、このマガジンというバンドは一気にピストルズを抜いて「パンク期にデビューした最重要バンド」と私の中で地位を築きました!はっきり言って、いわゆるパンクバンドとはもう、「演っていることが違います!」音楽的志向はどちらかというとNY派パンクのテレビジョンあたりの耽美主義ぽいところが近くて、Vo.としてカバーのために聴き取る歌詞の奇妙さというか深さも相まって・・・サウンドとしての知性の高さがすごい感じられるんです。どちらかというと、パンクよりもプログレに近いです。Buzzcocksからはかなり遠いサウンドです!
歌詞だけとっても、It's always raining over the border.........とか、The conspiracy of silence ought to revolutionize my thought....とか、ちょっとバカには書けない!!!バンドサウンドの構造も変わっていて、今となってはギタリスト界の超巨人(たぶん?)となったg.のジョン・マッギオークはいちいちフレーズもコードアプローチも変わっているし、b.のバリー・アダムソンは黒人らしさとはこれです!みたいな感じでフレーズが動き回るし、key.のデイヴ・フォーミュラは弾きまくるのではなく、この時代なのに空間を作っているし、ds.のジョン・ドイルはとても斬新なドラムパーツの組み合わせフレーズをときどき入れてくるし・・・。とにかく、歌詞、コード、リズム、当たり前では決してないアレンジが全楽曲丁寧に練られていて、とても「勉強になる」バンドでした。
では、1枚ずつご紹介しますねー
1作目:Real Life(1978年)

デビューアルバム『リアル・ライフ』です。その最初の音からすでにパンクロックではありません。
この時代においては、完全にノンジャンルの音楽だと思います。プログレとファンクとそしてもちろんパンクを経たメンバーがそれぞれの音の気に入った部分を持ち寄って合わせてみた・・・という感じです。ちなみにすべて、曲づくりはハワード・ディボートが絡んでます。収録曲は
A面
01.Definitive Gaze
02.My Tulpa
03.Shot by Both Sides
04.Recoil
05.Burst
B面
06.Motorcade
07.The Great Beautician in the Sky
08.The Light Pours Out of Me
09.Parade
A面は正直、01以外はパンクぽい曲が続きます。シングルカットされた03と08はハワードディボートの前いたBuzzcocksのピート・シェリーとの共作ですが、08はBuzzcocksの曲調とは全く違う異質な曲です。英国でヒットした03は、まだパンクの息吹が残っていて、その後にレディオヘッドほかかなり多くのバンドにカバーされています。私はこの曲だけはマガジンぽくなくてあまり好きではありません。
このアルバムの必聴曲は01、06、08、09ですね。明るい感じの曲はひとつもありません...笑
2作目:Secondhand Daylight(1979年)

セカンドアルバム『セカンドハンド・デイライト』です。直訳すると「使い古しの日光(または『間接的な日光』)」...もちろん収録曲03の歌詞の中の一節です。
私にとってはMagazineの全5枚のスタジオアルバムの中のベストです。このアルバムの特徴はハワード・ディボートは歌詞以外はほぼ作曲に絡んでいない点です。デビューアルバムの印象では、マガジンはハワード・ディボートのバンドのような印象だったのですが、このセカンドを聴いて、マガジンというバンドは決してハワードのワンマンバンドではなく、全員が同じくらいの存在感と力関係があるバンドだと思いました。
収録曲は
A面
01.Feed the Enemy
02.Rhythm of Cruelty
03.Cut-Out Shapes
04.Talk to the Body
05.I Wanted Your Heart
B面
06.The Thin Air
07.Back to Nature
08.Believe That I Understand
09.Permafrost
01の唐突なハイハットとスネアのコンビネーションは、当時は他のバンドで聴いたことがなく、オリジナル曲のアレンジに頻繁に使いましたね...笑。02はバンドでカバーしました。key.を中心にしたインストの06も、ちょっと古さを感じる音色もありますが、細部までとても練られていて「スキ」のないアルバムだと思います。プログレぽさが増したアルバムです...または「Lowのボウイ」の感じです。
このアルバムの必聴曲は01、02、03、06、07、09ですね。このアルバムにも明るい感じの曲はひとつもありません...笑
3作目:The Correct Use of Soap(1980年)

サードアルバム『コレクトユースオブソープ』です。直訳すると「石鹸の正しい使い方」...変でしょ、いかにもって感じです。
2作目があまりウケなかったんですかね...笑。デビュー作に近い感じでテンポの速い曲が多くなりカバー曲も入ってますが、サウンドの感じは全くデビューアルバムとは違い、先鋭的になってます。一般的な評価としては、このアルバムがマガジンのベストアルバムに挙げられることが多いですね。実際、ほぼ捨て曲がなく、充実したアルバムだと思います。このアルバムを最後に、ジョン・マッギオークは脱退しスジバンに加入しました。収録曲は
A面
01.Because You're Frightened
02.Model Worker
03.I'm a Party
04.You Never Knew Me
05.Philadelphia
B面
06.I Want to Burn Again
07.Thank You
08.Sweetheart Contract
09.Stuck
10.A Song from Under the Floorboards
07はスライ&ザ・ファミリーストーンの名曲ですね。骨格だけを残してスカスカにすると・・・みたいなアレンジをしています。初めて聴いた時にはびっくりしました!ラストを飾る10は元The Smithのモリッシーの名カバーをはじめ、シンプル・マインズなど数多くのカバーがあります。ファンキーな曲調が多いにもかかわらず全編を通して、“乾いたサウンド”になっていて、汗臭さからは程遠いです。
実は私は、このアルバムを聴く度に、「あぁ〜スジバンと同じだ〜」と思います。もちろん、g.のジョンがこのアルバムを最後にスジバンに入ったのでその影響もあるのですが、曲調やアレンジの全てがJuju以降のスジバンのサウンドと直結していると思っています。特に08なんかは、そのままスージーが歌えばスジバンになると思います。ひょっとすると、ジョンがずっと在籍していたら、マガジンはスジバン並みの長寿バンドになっていたかも知れません...笑
このアルバムの必聴曲は01、02、05、06、07、08、10ですね。このアルバムには明るい感じの曲はあります...でも明るくないです笑
4作目:Magic,Murder and The Weather(1981年)

4枚目のアルバム『マジック、マーダー・アンド・ザ・ウェザー』です。ジョンに代わるg.はサードアルバム後のツアーでは元UltravoxのRobin Simonがジョンのフレーズの完璧なコピーを務めました(LIve Albumが名作です)が、本作には参加せず、ハワードの友人のBen Mandelsonという方が参加しています。
このアルバムの録音後、リリース前に、ハワード・ディボートはバンドを「脱退」しています。実際はジョンの代わりを務めるギタリストがなかなか見つからず(それ、当たり前じゃん...汗)ハワードは疲れちゃったそうです。ハワードの脱退を受け、残ったバリーとデイヴとジョン・ドイルはディボートがいないんじゃマガジンじゃなくね?と解散を決めたそうです。すなわち、このアルバムの曲は、その後、2009年にバンドが再結成されるまで、演奏されることはありませんでした。結果的には、このバンドはジョン・マッギオークありきのバンドだったというわけですね・・・納得です!
このアルバムは、g.がジョンではないですが、結構、頑張ってますよ!私はこのアルバムにも漂う“「Lowのボウイ」の感じ”が割と好きです。
収録曲は
A面
01.About the Weather
02.So Lucky
03.The Honeymoon Killers
04.Vigilance
05.Come Alive
B面
06.The Great Man's Secrets
07.This Poison
08.Naked Eye
09.Suburban Rhonda
10.The Garden
01は、唯一、アルバムからシングルカットされましたが、07の方をするべきでしたね...多分、ヒットしたと思います...笑。03はこのタイトルをバンド名にするバンドが現れましたね。そっちも割と面白かったと記憶しています。このアルバムは珍しく明るくノリのいい曲調の曲が多いのですが、ハワードのヴォーカルが“諦め切った”感じがビンビン伝わってきます。はなっからウタのスタイルが特殊なので、わかりづらいですが、多分、実際もあまりやる気はなかったのかも知れないです...笑 でもそこがちょうどよく魅力なのかも知れないです...笑
このアルバムの必聴曲は01、03、06、07、ですね。このアルバムは...明るいですが、地味です笑
5枚目:No Thyself(2009年)

5枚目のアルバム『ノー・ザイセルフ』です。びっくりしました。実に、約30年後の再結成ですよ〜誰が望んでたんだ...爆笑
しかもアルバムカバーを飾っているのは、あのルドンのあまりにも有名な作品ではないですか!?(すみません、私が好きな画家です。)
ジョン・マッギオークは5年前に亡くなり、あのサウンドの要であったb.のバリーも参加していないということで、正直、全く期待していなかったのですが...とても良い作品です!多分、ノスタルジーを意識して、あえてのエフェクターで作られたギターの音色(マガジン時代のジョンというよりはスジバン時代のジョンのギターの音が「まんま」です)とkey.のデイヴの30年前と同じ音で構築されたサウンドに驚かされるのですが、何よりも、曲がいいです! ギタリストはハワードとLuxuriaというバンドを一緒にやっていたノコという人が演奏してますが、この人のプレイがまたいいです!反省しました・・・メンバーがいないという理由で多分、たいしたことないだろうなぁ、という先入観をもつべきではないですね、絶対に!
収録曲は
CDです
01.Do the Meaning
02.Other Thematic Material
03.The Worst of Progress....
04.Hello Mister Curtis (With Apologies)
05.Physics
06.Happening in English
07.Holy Dotage
08.Of Course Howard (1979)
09.Final Analysis Waltz
10.The Burden of a Song
01は、ひねくれた曲構成がいかにもMagazineですね!02はもうジョンを「思い出す」カッティングです・・・っていう具合に全曲解説してしまいそうなくらい全編、マガジンです!音色やアレンジから、狙って私のような「30年前のファン層」向けとして徹底して創られてますね〜。30年前のマガジンのハワードVo./デイヴkey./ジョン・ドイルds.の3人がいてバンド名も30年前と同じとはいえ、完全に時代にあった音で演ったらどうだっただろう???でも確かに、マガジンというバンド名だから、私も、聴いてみる気になったわけだから・・・うーん???とりあえず、私はこのアルバム、マガジンの中ではセカンドに次いで好きなアルバムです!
このアルバムの必聴曲は01、02、04、05、06、07、09、10ですね。このアルバムは曲も粒揃いで、素晴らしいです!
ハワード・ディヴォートは、写真で見てもわかる通り、ハンサムというわけではないし若ハゲだし、動きがかっこいいわけでもないんですが、ネチっとしたヴォーカルで私の好きなブライアン・フェリーやルー・リードの系統です(もっとグチャっとしてます...笑)。
そのネチっとグチャっと具合がよく出ているアルバムが、実はライヴアルバムなんです!
4枚目の前に出たLive Album:Play(1980年)

前述した通り、このライヴアルバムでギターを弾いているのは、ジョンではなく、元UltravoxのRobin Simonです。そう、Ultravoxの永遠の名盤「Systems of Romance」で誰も真似できないかのようなサウンドのギターを“開発”した人です!
(ちなみに私は、この人が全面参加しているJohn Foxxの3枚、「The Garden」「The Golden Section」「In Mysterious Ways」もむちゃくちゃ好きです!)
このアルバムの何がすごいかって、Robinの「ジョン・マッギオーク完コピ具合」がすごいです!メンバーもびっくりしたそうな・・・笑
収録曲
01.Give Me Everything
02.A Song from Under the Floorboards
03.Permafrost
04.The Light Pours Out of Me
05.Model Worker
06.Parade
07.Thank You
08.Because You're Frightened
09.Twenty Years Ago
10.Definitive Gaze
09.を除くと、デビューアルバムと3枚目からの選曲になってますね。
このアルバムもかなり聴き込みました。ライヴで演るにはどうしたら良いか、の具体的な「教則本」です。ライブ盤のこんな感じの聴き方はプログレバンドと全くおんなじですね...笑
マガジンとポリスは、同じ1978年デビューですが、パンクシーンから登場していながら、すでにPostPunk呼ばわりされていたと前述しました。一つは年齢的なものがあったでしょう・・・他のパンクバンドに比べると実年齢がオトナすぎでした。私は当時、この2つのバンドも「パンクバンド」の一派という認識でしたが、ダムドだったかな・・・とにかく、パンクバンドの誰かが、スティングを指して「アイツはBorn in the 50'sって曲作ったけど、ホントに50年代生まれなのか?俺たちはみんな疑っているよ」と発言していて、あ、ちょっと違うって感じがはっきりしているんだ・・・と思いました。まぁ、ハワードとスティングは大学もちゃんと卒業してるし、スティングは教職についていたしね・・・笑
この2つのバンドは、間違いなくその後の英国発生、および一部の米国発生のバンドの指向に影響を与えたと思います。その意味で、パンクの時期にデビューした中では、甲乙つけ難い、最も影響力のある2バンドです。ただし、セールスでは全く正反対の様相、つまり、ポリスは常に売れ(アルバムチャート1位)、マガジンは常に売れず(最高アルバムチャート29位)。もちろん、メジャー道のど真ん中を悠然と歩んだポリスは別格中の別格かも知れませんが、30年経過してもその方法論がまったく色褪せずに、あたかもずっと続けられてきたかのような“誰にも似ていない”サウンドを誇っていることも、やはり別格だと思います。そのことを再確認できたというだけでも、30年後の“誰が望んでいるのか誰もわからない”再結成には、私は十分な価値があると思っています。